ポジショニング

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ポジショニング (positioning)


ポジショニング (positioning) は格闘技寝技の攻防における考え方・セオリーの一つ。もしくはその考え方に基づく技術。

目次

[編集] 概要

ポジショニングの考えでは、寝技におけるポジションを、「バックポジション」「マウントポジション」「サイドポジション」「ガードポジション」および、それぞれのポジションを取られた状態の計8つに分類している。取られている方は「インサイド○○ポジション」(例:インサイドガードポジション)という。それぞれのポジションの詳細については後述。

ポジションは、「バックポジション」「マウントポジション」「サイドポジション」「インサイドガードポジション」「ガードポジション」「インサイドサイドポジション」「インサイドマウントポジション」「インサイドバックポジション」の順で有利とされる。

また、インサイドガードポジションは4番目に有利なポジションとされているが、直接攻撃するにはむかず、より有利な、「バックポジション」「マウントポジション」「サイドポジション」などに移る(その後に攻撃する)べきとされている。


自らの置かれた状態を位置関係により8個に分類しているため、攻防の中で選手が置かれている状況を速やかに、かつ的確に把握することができ、状況を自覚的にコントロールすることが容易になる。

[編集] 歴史

寝技を含む格闘技、武術武道であれば、ポジショニングに通じる技術・考えを、多かれ少なかれ持っている。柔道では抑込技などにポジショニングの概念が一部導入されていたため、下記でポジショニングの重要な要素とされているスイープ、パスガード、パスガードされない技術がやや発達している。さらにそれを高度に洗練させ体系化したのが、柔道を元にしバーリトゥードを前提に発達してきたブラジリアン柔術であった。

1993年、ブラジリアン柔術の一流派であるグレイシー柔術の選手ホイス・グレイシーが、第1回UFCで参加選手中最軽量だったにも関わらず優勝し、一躍ブラジリアン柔術が脚光を浴びた。それ以来、多くの格闘家たちがブラジリアン柔術を研究するようになり、ポジショニングの概念が広まっていった。現在、さまざまな格闘技に取り入れられているポジショニングの概念は、ブラジリアン柔術から1993年以降に導入されたものがほとんどである。ポジショニング技術の習得が寝技の競技力向上に大きく寄与することは、現在広く認められている。

[編集] 有効性

ポジショニングとは、ブラジリアン柔術における寝技の考え方である。ブラジリアン柔術のルールでは、打撃は認められていないが、ポジショニングの概念に基づいた得点構造となっている。それはグラップリングも同様で和える。

原則ポジショニングは、寝技において、打撃・関節技・絞め技等を行う場合のものである。寝技で打撃、関節技、絞め技を行わずも打撃を考慮に入れた得点構造になっていない競技ではポジショニングの考え方・セオリーは当然通じず、別の考え方・セオリーがある。そのような競技の考え方とポジショニングの考え方の最も大きな違いの一つが、「うつ伏せの体勢」に対する考え方であるといえる。


上記のような競技の多くでは、立ち技で相手を仰向けに転ばせることを「投げる」と見なし、うつぶせで倒した場合よりも高得点となり、仰向けで下になっている状態は抑え込みとみなされで得点をとられ、攻防が膠着すれば「まて」「ブレイク」がかかり立ち技から仕切り直しとなるため、寝技での防御の態勢として、「うつ伏せ」さらにはそこから手足を引っ込めた「亀」が多用される。

しかし、攻撃手段として打撃があり、膠着でブレイクがかからない場合、うつぶせの体勢は基本的にいい防御法とは言い難い。相手に背面・後頭部をさらけ出し、打撃の防御はほぼ不可能であり、関節技に対する反撃のチャンスも少ない。そのため、ポジショニングにおいては、うつぶせの体勢は危険な体勢と見なされる。


ただし、ブラジリアン柔術やブラップリングもあくまで打撃ありのルールではなく、ポジショニングに基づいた得点構造のルールであるため、実際の打撃がある場合とはセオリーは少なからず異なる。打撃がないため、マウントポジション・バックマウントポジション・インサイドガードポジションの有効性については低くなり、ガードポジションについては有効性が上がっている。また、打撃ありでは有効とは言えないような体勢で攻防がなされることも多い。(ガードポジションに多い)

また、寝技で打撃や関節技を行う競技でも技術の発達によりポジショニングがそのまま適応できない場合も増えている。例えば、総合格闘技で上のポジションを取った場合、ポジショニングにおいて、より有利とされる位置関係に移り、そこから技を掛けようとするのではなく、その位置関係のまま打撃で攻撃するという場合も多い。そのような考え方に基づいた指導もされており、それなりに評価されている。

[編集] 主なポジション

マウントポジション(上)

[編集] マウントポジション

上の選手が、下の選手の胴体に馬乗りになっている状態を指す。選手同士は向かい合っている。上の選手の打撃(マウントパンチ)は下の選手の顔に届くが、逆はほぼ全く届かないという、上の選手が圧倒的に有利なポジションである。関節技や絞め技も上の選手の方が圧倒的に仕掛けやすい。しかし、マウントポジションは、サイドポジションの横四方固よりやや安定性に欠ける事が多い。そのため、打撃の無い競技でこのポジションをおろそかにしないようにということもあり、ブラジリアン柔術競技ではこのポジションに大きなポイントを与えている。

バックマウントポジション(上)

[編集] バックマウントポジション

上の選手が、下の選手の胴体に馬乗りになっており、下の選手はうつぶせになっている状態を指す。上の(背中についている)選手は一方的に殴ることができ、絞め技やたまに関節技もかけられる。下の選手は、上の選手を見ることすら出来ない。マウントポジションよりも上の者に有利なポジションである。後述のバックグラブポジションと重複する部分もあるため、バックグラブポジションと合わせて、バックポジション、バックマウントポジションと言われることもある。

バックグラブポジション(背後)からの裸絞め

[編集] バックグラブポジション

相手の背中にくっつき、両脚を相手の脚にからませた状態。背後の選手は、一方的に殴ることが出来る上、絞め技などをねらいやすい。背中を取られた選手は、相手選手を見ることすら出来ない。背後の選手が圧倒的に有利なポジションである。このポジションは上下は関係ない。むしろ、打撃のない寝技においては、両者が仰向けになっている(すなわち、背後の選手が下)ほうが、背中を取られた選手が亀になって防御することが難しいため、背後の選手は攻めやすい。バックマウントポジションと重複する部分もあるため、バックマウントポジションと合わせて、バックポジション、バックマウントポジションと言うこともある。

サイドポジションの一つ横四方固め(上)
サイドポジションの一つ崩れ袈裟固め(上)

[編集] サイドポジション

上の選手が、下の選手の胴体を横から抑え込んでいる状態を指す。柔道でいう横四方固袈裟固上四方固の体勢である。マウントポジションほどではないが、上の選手が有利なポジションであり、さまざまな技を掛けることができる。マウントポジション以上に攻撃のバリエーションに富むため、選手によっては敢えてマウントポジションを取らずにこの体勢から攻撃を仕掛ける。この中で特に横四方固めは選手によっては最も安定して抑え込むことができる。

クローズドガード(下)
スパイダーガード(下)
柔道の稽古でのバタフライガード(下)

[編集] ガードポジション

仰向けの下の選手と向かい合った上の選手との間を下の選手が脚で隔てていたり両脚で上の選手の胴や脚を絡めている状態の時、下の選手のポジションをガードポジション (guard position) と言う。ポジショニング技術における重要な要素である。後述のように脚の置き方で様々な種類がある。一見すると、上の選手が有利に見えるが、下の選手にも様々な関節技・絞め技を極めたり、スイープのチャンスがあるためそうとも限らない。

下の選手がこのポジションから相手をひっくり返し、上下を入れ替えることを「スイープ」または「リバーサル」、と呼ぶ。高専柔道では「返し」と呼んでいる。また、ハーフガードポジションを除くガードポジションを総称して「フルガードポジション」という。

  • クローズドガード
別名クロスガード。相手の胴体を、両脚で挟み、相手の背面で足首を組んでいる(クラッチという)状態。この足のクラッチを外した状態を(狭義の)オープンガードという。
この体勢から、自ら両脚を固定しているため、関節技・スイープをねらうことは難しい。相手にパスガード(後述・インサードガード参照)されそうになった、サイドをとられた体勢から持ち直したときなどの一時的な防御の体勢といえる。
  • スパイダーガード
同側の相手の袖をつかみ(右手で左袖を、といったつかみ方)、同じ側の足の裏を、相手の腕の肘~前腕にあてるのが基本的な形である。腕で引き、足で押すことで相手を固定、コントロールする。両脚とも行う場合、片足だけで行う場合がある。残った足は、すねや足の裏を相手の腰骨あたりに当てておくことが多い。
  • 巻き付けスパイダーガード
略称巻きスパイダー。同側の相手の袖をつかみ、同側の足を外側から、相手の腕に巻き付け、足の甲を上腕の内側に当てる。原則、片足で行う。残りの足は、通常のスパイダーガードと同じように置く。
  • デラヒーバガード
ヒカルド・デラヒーバが開発したガードポジションの一種。相手は立ち、こちらは相手の足に足を絡めている体勢。相手がこちらに背を向けて、こちらの片足をまたいでいる状態になる。たとえば、相手の右足はこちらの両脚の間、左足はこちらの左足の外側となる。
もちろん相手がいきなり背を向けてこちらの足をまたいだからこの体勢になったわけではなく、こちらが相手を半身にさせ、足を差し入れている。そのため、相手は、不利にならないよう、できるだけこちらに正対しようとし、こちらは背を向かせようとする(背を向けたならそのまま引き倒して、バックポジションが取れる)。先の例の場合、相手は右回りに力を加え、体勢を保持しようとする。
  • フックガード
ヒカルド・デラヒーバが開発したガードポジションの一種。足を折りたたみ、足の甲・足首あたりを、相手の内ももに当てる体勢。足で押すことになるため、両手でしっかり相手を引きつけることが必要となる。足が相手の下に入っているため、スイープは狙いやすいが、関節技は狙いにくい体勢。
  • ラバーガード
エディ・ブラボーが開発したガードポジションの一種。自分の右(または左)足首を相手の首に巻きつけた上、自分の左(または右)手で掴み、相手の動きを制限する。
  • バタフライガード
両脚をやや折りたたみ、足の裏を相手の腰骨に当てた状態。両脚がほぼ自由であり、いろいろな関節技・スイープが狙える。

その他、

  • スパイラルガード 
  • タートルガード
  • Xガード

などがある。

[編集] ハーフガードポジション

ガードポジションの一種で上になっている選手の片脚が、下になっている選手の脚の間にある状態を指す。不完全なガードポジションという意味でハーフガードポジションと呼ばれる。しかし中にはこのハーフガードポジションからのスイープを得意としている選手もいる。代表的な形態として両脚で相手の片脚を挟み込む「足がらみ」(高専柔道での俗称。関節技の足緘とは別物)。または「足挟み」(高専柔道での俗称)がある。このうち片脚の甲を挟んだ相手の脚の甲にあてる「二重がらみ」は特にこのポジションを維持しやすくする。

ニーオンザベリー(上)

[編集] ニーオンザベリー

仰向けの相手選手の爪先側の自らの片膝または片脛で相手選手の腹または胸を抑え、もう一方の膝を床から浮かせた状態。上の選手が有利な状態。両手で片襟片袖をとることが多い。柔道国際ルールにおける抑え込み技浮固の原形とも言われる。別名「ニーオンストマック」、「ニーオンベリー」、「ニーオンチェスト」、「ニーマウント」、「ニーライド」、「ニーインザベリー」。

[編集] インサイドマウントポジション

マウントポジションをとられている相手の下の選手の状態。

[編集] インサイドガードポジション

ガードポジションをとられている相手の上の選手の状態。相手の脚で有効な動きが出来ず、有効な関節技・絞め技は、脚への関節技といくつかの絞め技に限られている。原則、腕への関節技はかからない。

ガードポジションの種類にもよるが、インサイドガードポジションからパンチを当てることはサイドポジションやマウントポジションからと比較すると技術が必要であり難しい。

このポジションから下の選手の脚を乗り越え脱し、サイドポジションやマウントポジションに移ることを「パスガード」という。パスガードはポジショニング技術の重要な要素である。

先述の脚への関節技は、有利なポジションを保ったままかけることが難しく、かけて失敗すると有利なポジションを失う。ガードポジションの項にある「スイープ・リバーサル」をかけられたのと同様の結果になる。脚への関節技は、ポジショニングの概念とやや反するところにあるといえる。

[編集] ハーフマウントポジション

ハーフガードポジションをとられている相手の上の選手の状態。マウントポジションには含まれない。

[編集] テクニック

  • パスガード
    • 片脚担ぎ
    • かみつき
    • 片膝割入り
    • 両脚担ぎ
    • 両膝越し
    • すかし入り
    • 振り分け入り
  • スイープ
    • ヒップスロー
    • ヘリコプター
    • アナコンダ
    • 草刈り
    • 後ろ帯取り返し
      • 浅野返し
    • 膝乗せ返し
    • 横帯取り返し
    • 腕挫膝固返し
    • 十字絞返し
    • 肩固め返し
    • 高橋返し
    • 脚蹴り返し
    • 酒井返し
    • スコップ
    • わき取り返し


[編集] 参考文献

  • 高専柔道技術研究会 編『高専柔道の真髄』原書房
  • 松本勝『初心者の柔道教室』弘文出版
  • 山口香・向井幹博『ジュニアのための考える柔道』東京書店
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