ドッグトゥース
建築におけるドッグトゥース又は"ドッグトゥース模様"は、中東から十字軍によってヨーロッパへ導入されたと考えられてきた、12世紀初頭の中世建築作品の繰形に見られる装飾(芸術)である。最古の例は、サーサーン朝ペルシアによって614年モアブでのラバト・アンモーン(現在のヨルダンの首都アンマン)に建設されたホールに見られ、日除けアーケード (建築物)のアーチ造形とそれに沿った路地を装飾していた。模様は、正方形かダイヤ形を形作る4つの花弁で主に構成されていた。その花弁は尖った円錐形の犬歯、糸切り歯や尖頭歯の形状である。
ヴェネツィア近くのムラーノにある教会堂のアプスでも、同様に採用されている。12から13世紀に木彫り彫刻が精微化し、洗練されていない形状は廃れて、最も美しく装飾的な特徴が残った。エルジン大聖堂において飾り迫縁のドッグトゥース装飾は4枚の葉の形となり、そしてケント (イングランド)の石造教会ではもっと華やかに花の形となった。 その用語はdog tooth violet(ユリ目ユリ科カタクリ属の草類)に酷似しているため由来であると考えられるが、元々のアイディアは突き出た歯であるのは十分明らかである。
"ドッグトゥース"は、また織物での犬歯に似た柄でもある。
[編集] 航空
航空におけるドッグトゥースは、翼や水平尾翼の前縁部に顕著な 切り込み があるデザインである。
飛行機の主翼は機体水平軸に対してある角度(=迎角)をもって取り付けられており、前方から風を受けると翼の下面では気流は翼の抗力を受けながら流れる。 それに対し翼の上面を流れる気流はコアンダ効果によって翼に引き寄せられて沿って、下面の気流よりもスムーズに流れて、結果、下面の圧力が上面よりも高くなることで翼に揚力が発生する。 飛行中の機首上げなどで迎角が大きくなるほど揚力も大きくなるが、主翼上面の気流に速度のバラツキがみられるようになる。 そして迎角がある範囲を超えると、上面の気流は翼表面に沿って流れることができなくなり剥離することで、渦を形成して揚力の発生が消え失速してしまう。 特に後退翼では気流が翼端に向かって流れて(=アウトフロー)、境界層が厚くなり翼の端に揚力が発生しなくなる。 翼端失速が起きると一気に主翼全体に失速域が拡がり、これが片翼で発生すると機体はスピンし錐揉み状態となってコントロール不能に陥り、着陸に差しかかっていたら墜落、軍用機での空戦中なら被撃墜につながる。
翼端失速の対処としてスラットなどの高揚力装置、九六式艦上戦闘機や零式艦上戦闘機での主翼翼端の捻り下げなどあるが、F-86 (戦闘機)やMiG-15 (航空機)では翼上面に境界層板を設置することでアウトフロー気流を整えて境界層剥離を減じ、揚力が増加することにより翼端失速が発生する空気抵抗を改善した。 そして現在この目的で多くの高性能飛行機が採用しているのが、翼の前縁の一部を突出させることで翼上側に強い渦流を発生させてアウトフローを防止するドッグトゥース・デザインである。 ドッグトゥースを使っている最も有名な例の幾つかは、F-15の水平尾翼とF-4、F-8、F/A-18E/F、ミラージュF1、クフィルC2、サーブ 39 グリペンやアブロ・カナダ CF-105の主翼などであり、ライト兄弟のフライヤーIVに最初に実装された。
なお翼前縁の一部に 切り欠き を入れているソーカット・デザインも、ドッグトゥースと同様の効果が期待できる。