きしみ声

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きしみ音から転送)
きしみ声
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IPA 番号 406
IPA 表記 [̰]
IPA 画像
Unicode U+0330
文字参照 ̰
JIS X 0213 1-11-83
X-SAMPA _k
Kirshenbaum

きしみ声軋み声(きしみごえ、英語: creaky voice)は、発声のひとつで、声帯前部が振動するが、後部は披裂軟骨によって押さえられていて振動しないものをいう[1]

声門化英語: laryngealization)も同義であるが、よく似た名称の「喉頭化音」は放出音のことであって、きしみ声とは異なる。

特徴[編集]

きしみ声では、気流の量が通常の声よりもかなり少ない[2]

国際音声記号[編集]

国際音声記号では、[a̰] のように、下にティルデを置くことで、きしみ声を表す。

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デンマーク語stød英語版 は、超分節的なきしみ声の一種である。

朝鮮語濃音は、平音とはさまざまな違いがあるが、これらは喉頭の緊張に由来する。きしみ声よりも緊張が弱いため、ラディフォギッドらはこれを "stiff voice" と呼んで区別している[3]

ビルマ語声調は単なる音の高さだけではなく、発声や長さなど、さまざまな要素がからむ。3つある舒声のうち、降声と抑声はどちらも高いが、

  • 降声は長く、通常は降り気味に、すこし息もれ声が加わることがある
  • 抑声は中くらいの長さで、最後が少し下がることがあり、きしみ声になる

という違いがある[4]。たとえば降声の စား /sá/〈食べる〉に対し抑声の /s/〈始める/始まる〉というペアが存在する[5]。ビルマ語の抑声は英語文献においては "creaky tone" という呼び方をされている場合がある[5]

マサテコ語ハラパ方言では、通常の有声・きしみ声・息もれ声の3種類の発声が音韻的対立をなす[6]

脚注[編集]

  1. ^ プラム;ラデュサー (2003) p.271
  2. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) p.50
  3. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.55-57
  4. ^ Wheatley (1987) p.842
  5. ^ a b Jenny & San San Hnin Tun (2016:21).
  6. ^ Ladefoged & Maddieson (1996) pp.317-320

参考文献[編集]

日本語:

  • プラム, ジェフリー・K、ラデュサー, ウィリアム・A 著、土田滋; 福井玲; 中川裕 訳『世界音声記号辞典』三省堂、2003年。ISBN 4385107564 

英語:

関連項目[編集]