「保型形式のL-函数」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Enyokoyama (会話 | 投稿記録)
(相違点なし)

2014年5月21日 (水) 17:56時点における版

数学では、保型形式のL-函数(automorphic L-function)とは、大域体(global field)上の簡約群 G の保型表現 π や、G のランクランズ双対群英語版(Langlands dual group) LG の有限次複素表現に付随する変数 s の函数 L(s,π,r) である。保型形式のL-函数は、ディリクレ指標ディリクレ級数モジュラ形式のメリン変換を一般化したものであり、 Langlands (1967, 1970, 1971) により導入された。

Borel (1979)Arthur & Gelbart (1991) は保型形式のL-函数を研究した。

性質

保型形式のL-函数は次の性質を持たねばならない(この性質は証明されているものもあるが、未だ予想の段階であることもある)。

L-函数 L(s,π,r) は局所L-函数の F の座(place) v を渡る積である。

L(s,π,r) = Π L(s,πv,rv)

ここに、保型表現 π=⊗πv は局所群の表現 πv のテンソル積である。

L-函数は全複素数 s の有理型函数として解析接続され、次の函数等式を満たすことが予想されている。

L(s,π,r) = ε(s,π,r)L(1 – s,π,r)

ここに、ファクタ ε(s,π,r) は、ほとんど 1 となる「局所定数」の積

ε(s,π,r) = Π ε(s,πv,rv, ψv)

である。

一般線型群

Godement & Jacquet (1972) は、(いわゆる標準L-函数(standard L-function))標準表現 r についての一般線型群の保型L-函数を構成し、テイト論文(Tate's thesis)の方法を一般化することを使い、解析接続と函数等式を評価した。ラングランズプログラムがどこにも成り立つということは、GL(m) と GL(n) の表現のランキン・セルバーグ(Rankin-Selberg)積が成り立つことである。結果として現れるランキン・セルバーグのL-函数が、最初にラングランズ・シャヒーディの方法(Langlands-Shahidi method)を通して最初に証明された函数等式など多くの解析的性質を満たす。

一般に、ラングランズ函手性(Langlands functoriality)予想は、連結な簡約群(reductive group)の保型L-函数は、一般線型群の保型L-函数の積となるということを意味する。ラングランズ函手性の証明は、保型形式のL-函数の解析的性質の理解を通して導かれるとも考えられている。

参考文献