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{{Otheruses|[[馬の毛色]]|ヒトの髪の色|ヒトの髪の色#栗毛}}
'''栗毛'''(くりげ)とは栗の実の色をした毛のこと。人の髪の色と馬の毛色を指すことが多い。
[[ファイル:HessischesWarmblut.jpg|thumb|300px|栗毛の馬]]
'''栗毛'''(くりげ、[[英語|英]]:chestnut/sorrel、[[ラテン語|羅]]:badius/castaneus<ref>通常、栗毛のことはbadiusと呼ぶが、これは鹿毛も含む概念である。castaneusは「栗色の」の意。ただしスペイン語で同系統の単語castañoは「鹿毛」の意になっている。</ref>、[[中国語|中]]:棗)は、[[馬の毛色]]のひとつ。一般に黄褐色(栗色)の毛を持つ[[ウマ|馬]]のこと、またはその状態そのものを指す。


== 特徴 ==
*[[ヒトの髪の色#栗毛]]
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鹿毛と並び最も一般的な毛色の一つであり、広い品種にみられる毛色である。おおむね、[[サラブレッド]]の1/4、[[クォーターホース]]の1/2を占める。明るい長毛を持つ個体を雄花栗毛と呼ぶ。逆に黒い長毛を持つ個体もいる。
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== 発現機構 ==
栗毛の原因遺伝子は、MC1R(1型メラノコルチン受容体)のS83F変異型(これを栗毛遺伝子と呼ぶ)である。MC1Rは、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)のシグナルを受け取り、フェオメラニンの合成を抑制し、エウメラニンの合成を促進する機能を持つ。

栗毛遺伝子を[[ホモ接合型|ホモ]]で持つと、MC1Rの本来の機能が働かず、結果としてフェオメラニンが過剰に合成される。これが栗毛である。メラニン合成系の制御機構はMC1R遺伝子のコピーが1つのみでも正常に働くため、[[ヘテロ接合型|ヘテロ]]個体は栗毛にならない。

なお、栃栗毛や[[月毛]]も同様に栗毛遺伝子をホモで持つ。月毛は、栗毛遺伝子に加えてクリーム様希釈遺伝子が作用し、メラニン合成の総量が抑えられることで起こっている。一方、栗毛と栃栗毛の差がどのように生じているか、現時点では明らかでない。

== 参考文献 ==
* {{ cite journal | author = Rieder, S., Taourit, S., Mariat, D., Langlois, B., Guérin, G. | date = 2001 | title = Mutations in the agouti (ASIP), the extension (MC1R), and the brown (TYRP1) loci and their association to coat color phenotypes in horses (Equus caballus) | journal = Mammalian Genome | volume = 12 | issue = 6 | pages = 450-5 | doi = 10.1007/s003350020017 }}
* {{Cite web | author = 原秀昭 | publisher = JRA競走馬総合研究所 | date = | url = http://www.equinst.go.jp/JP/arakaruto/mame/mame-shikibetsu.html | title = 馬の個体識別 | language = | accessdate = 4月10日 | accessyear = 2009年 }}

== 脚注 ==
<references/>

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[[en:Chestnut (coat)]]
[[fr:Alezan]]
[[fi:Rautias]]
[[sv:Fux]]

2012年1月7日 (土) 08:29時点における版

栗毛の馬

栗毛(くりげ、:chestnut/sorrel、:badius/castaneus[1]:棗)は、馬の毛色のひとつ。一般に黄褐色(栗色)の毛を持つのこと、またはその状態そのものを指す。

特徴

多量のフェオメラニンと、少量のエウメラニンによる全身の黄褐色が特徴である。鹿毛と異なり、部位による色見の違いはあまりない。鹿毛との区別は、体色がより明るいこと、四肢が黒く着色していないことにより行う。他に間違いやすい毛色は栃栗毛月毛などがある。

鹿毛と並び最も一般的な毛色の一つであり、広い品種にみられる毛色である。おおむね、サラブレッドの1/4、クォーターホースの1/2を占める。明るい長毛を持つ個体を雄花栗毛と呼ぶ。逆に黒い長毛を持つ個体もいる。

発現機構

栗毛の原因遺伝子は、MC1R(1型メラノコルチン受容体)のS83F変異型(これを栗毛遺伝子と呼ぶ)である。MC1Rは、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)のシグナルを受け取り、フェオメラニンの合成を抑制し、エウメラニンの合成を促進する機能を持つ。

栗毛遺伝子をホモで持つと、MC1Rの本来の機能が働かず、結果としてフェオメラニンが過剰に合成される。これが栗毛である。メラニン合成系の制御機構はMC1R遺伝子のコピーが1つのみでも正常に働くため、ヘテロ個体は栗毛にならない。

なお、栃栗毛や月毛も同様に栗毛遺伝子をホモで持つ。月毛は、栗毛遺伝子に加えてクリーム様希釈遺伝子が作用し、メラニン合成の総量が抑えられることで起こっている。一方、栗毛と栃栗毛の差がどのように生じているか、現時点では明らかでない。

参考文献

  • Rieder, S., Taourit, S., Mariat, D., Langlois, B., Guérin, G. (2001). “Mutations in the agouti (ASIP), the extension (MC1R), and the brown (TYRP1) loci and their association to coat color phenotypes in horses (Equus caballus)”. Mammalian Genome 12 (6): 450-5. doi:10.1007/s003350020017. 
  • 原秀昭. “馬の個体識別”. JRA競走馬総合研究所. 4月10日閲覧。accessdateの記入に不備があります。

脚注

  1. ^ 通常、栗毛のことはbadiusと呼ぶが、これは鹿毛も含む概念である。castaneusは「栗色の」の意。ただしスペイン語で同系統の単語castañoは「鹿毛」の意になっている。