コンテンツにスキップ

黄金の壺

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。60.237.49.16 (会話) による 2012年5月30日 (水) 14:50個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

黄金の壺』(おうごんのつぼ、Der goldne Topf)は、E.T.A.ホフマンの中編小説。神学生アンセルムスと火の精霊の娘ゼルペンティーナとの恋を描く幻想譚である。1814年に執筆され作品集『カロ風幻想曲』に収められた。ホフマンの代表作の一つ。

あらすじ

主人公アンセルムスはある復活祭の日、エルベ川のほとりにあるニワトコの木の上に美しい蛇を見止め激しい恋心を抱く。憑かれたような様子の彼を心配した副校長パイルマンは彼に記録管理官リントホルストのもとで筆写係をする仕事を斡旋するが、実はそのリントホルストこそ、その蛇の娘ゼルペンティーナの父親であり、その正体は霊界の王フォスフォルスから追放された火の精霊サラマンダーであった。彼は霊界に戻るために自分の3人の娘に婿を見つけてやらねばならず、その試験としてアンセルムスに仕事をさせていたのである。

一方アンセルムスに恋心を抱いていたパイルマンの娘ヴェロニカは、アンセルムスを自分に引き付けるために占い師の老婆を訪ね、彼が精霊の娘に恋していることを知る。この老婆も実はサラマンダーに対して因縁をもつ人物であり、彼の末娘ゼルペンティーナの持つ黄金の壺を狙っているのだった。ヴェロニカは老婆の協力を得てアンセルムスを引き付けようとし、その結果ゼルペンティーナに対する恋心が揺らいだアンセルムスは、筆写の仕事に失敗してガラス瓶の中に閉じ込められてしまう。

ガラス瓶の中でアンセルムスが苦しんでいるうち、リントホルストの家に老婆が現れて黄金の壺を奪おうとリントホルストに魔術をしかけるが、攻防の末リントホルストとその使いのオウムに撃退される。この間にアンセルムスはゼルペンティーナへの愛を再認識し、ガラス瓶から開放されてゼルペンティーナと結ばれる。一方ヴェロニカはアンセルムスを思い切り、宮中顧問官に任ぜられた父の友人ヘルブラントと結婚する。

最後の章では結末を書きあぐねている作者が登場する。この作者のもとにリントホルストから手紙が届き、作者は招待をうけてリントホルスト邸を訪れ、そこでいまや楽園に足を踏み入れたアンセルムスを幻視する。アンセルムスの前には黄金の壺を抱いた美しい姿のゼルペンティーナが待ちうけ、その壺からは百合が咲き出て二人を祝福している。

主な日本語訳

外部リンク