ウィッチャーIII 炎の洗礼

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ウィッチャーIII 炎の洗礼
著者アンドレイ・サプコフスキ
翻訳者川野靖子
ポーランド
ジャンルファンタジー
出版日2018年5月17日
出版社早川書房
前作ウィッチャーII 屈辱の刻
次作ウィッチャーIV ツバメの塔

ウィッチャーIII 炎の洗礼』(原題:Chrzest ognia)は、ポーランドのファンタジー作家アンドレイ・サプコフスキによる「ウィッチャー」サーガの長編作品第三弾である。ポーランドで、1996年に初版が発行された。日本では、早川書房より2018年に刊行された。

あらすじ

“サネッド島の反乱”に端を発したニルフガード帝国の北方諸国への侵略戦争が苛烈さを増す中で、スコイア=テルにも大きな犠牲が出ていた。傷ついたエルフたちの敗走に協力する弓の名手マリア・バリングことミルヴァは、逃亡先であるブロキロンの森で療養中のウィッチャー・ゲラルトと邂逅する。ゲラルトの依頼で戦況についての情報提供を行っていたのは、他でもない彼女だったのだ。

一方、魔法使いたちもまた新たな計画に動き始めていた。レダニア国のフィリパ・エイルハートは、投影機を用いて世界各地の女魔法使いたちをモンテカルヴォに招集。魔法使いたちの中には、ニルフガードに仕えるアシーレ・ヴァル・アナヒッドの姿もあった。目下戦争中のニルフガードの人間が同席することに大きな反発も起こる中、フィリパが提案したのは、女性だけで編成された新たな結社の結成だった。

ニルフガードによる容赦ない攻撃で、あちこちに火の手が上がり、国中が蹂躙される中、戦火を避けつつ南を目指すゲラルトとダンディリオン。道中彼らは、棺に男を入れて運ぶハヴカーたちと遭遇する。さらに、そこに現れたニルフガード軍の強襲にあうも、駆けつけたミルヴァの援護射撃によって何とかこれを退けることに成功した。そして棺の中の男を救出するが、その正体はなんと羽根付き兜の黒騎士ことカヒル・マー・ディフリン・エプ・シラクだった。カヒルはニルフガードへの旅への同行を申し出るが、ゲラルトはこれを断固拒否。ミルヴァを一行に加え、旅は続く。

その後、一路東を目指す一行の前に、難民の女子供たちを引き連れたドワーフの一団が現れた。一団を率いていたドワーフの名は、ゾルタン・シヴェイ。ノームのパーシヴァル・シャタンバックらと共に、旅の最中にあった。陽気な性格が功を奏し、すっかり意気投合したダンディリオンとドワーフたち。彼らは、目指す方向の一致もあって、旅路を共にすることとなった。 怪物やニルフガード兵との遭遇など、様々なトラブルに見舞われながらも、ゆっくりと進んでいく一行。しかし、複雑な地形に惑わされて道に迷ってしまった挙句、いかにもグールがいそうな墓場に迷い込んでしまう。そこで彼らはエミール・レジスという理髪外科医と出会う。レジスは薬草の採取のため、墓場に小屋を建て、一人で暮らしているという。初めこそその素性を訝しんでいたゲラルトたちだったが、高級なマンドラゴラ酒を振る舞われ、気分が高揚。関係は一気に打ち解けた。かくして、レジスもまた一行の旅に加わることとなった。

順調に見えた旅は、とある野営地で一気にその様相を変えることとなった。吸血鬼狩りを目的とした村人の一団に出くわしたゲラルトたち。迷信に基づいて黒馬を受け渡すよう要求されたミルヴァは、挑発に激昂し、相手を大きく傷つけてしまう。その後、ミルヴァ断罪のため、ある司祭による魔女裁判を見届けることになった一行は、大勢の人々に紛れて裁判の不正を見破ろうと立ち回る。しかし、すんでのところでニルフガードの軍団が野営地を強襲。一行は人と馬の波に揉まれ、散り散りになってしまうのだった。

暴動の後、ゲラルトとダンディリオンは、レダニア軍に捕えられていた。野営地を襲ったニルフガードはレダニアにより撃退されていたが、二人にはニルフガードのスパイ容疑がかけられてしまっていたのだ。ダンディリオンによる弁解空しく、処刑執行のため、アルメリア要塞へと連行される二人。ゲラルトに恨みを持つシントラ国出身のヴィセゲルド元帥まで現れ、いよいよ処刑の回避は絶望的となる。

一方、暴動から逃れたミルヴァは、死んだと思われていたカヒルに窮地を救われ、行動を共にすることにした。やがてレジスも合流し、一行はゲラルトたち救出のためアルメリアを目指す。

処刑執行の前夜、巨大な野営地の中心に捕えられたゲラルトたちの前に突如現れたレジスは、二人を解放することに難なく成功。同時に現れたニルフガードの騎馬隊と戦闘を繰り広げつつも、命からがら逃げ延びたゲラルトとダンディリオンは、ミルヴァ、カヒルとの合流に成功した。しかし、喜ぶのも束の間、脱出の立役者となったレジスには、剣が突きつけられていた。一連の騒動の中で、ゲラルトは、レジスの正体が“上級吸血鬼”であることを見破っていたのだ。これを機に、ゲラルトは危険な旅路にこれ以上付き合わせるわけにはいかないという判断から、他の仲間たちにも別れを告げる。しかし、ダンディリオンを始め、誰もがその意見を切り捨て、一同は腹ごしらえのため共にスープを作ることに。そして、共に食事をしたことによって一行の緊張は氷解した。ゲラルトと仲間たちの旅は続く。

女魔法使いたちにも新たな動きがあった。エニッド・アン・グレアナことフランチェスカ・フィンダベアは、人目から隠していた翡翠の小像にかけられた魔法を解除。すると、翡翠の小像はイェネファーに姿を変えた。フランチェスカはガルスタング宮殿での戦闘の際、イェネファーに魔法をかけ、以降、彼女を匿っていたのだ。そして、モンテカルヴォでは、女魔法使いたちによる第二回目の会合が開催されようとしていた。イェネファーも同席する中で、議長フィリパは魔法に絶対的な権力を与えるべく、コヴィリ国にシリを嫁がせ、<北の女王>として君臨させる計画を発表。ララ・ドレンから受け継がれた<古き血>を宿すシリこそ、その立場に相応しいと断言した。しかし、イェネファーはそんな思惑を容認するわけにはいかない。計画に賛同することなく、イェネファーはフリンギラ・ヴィゴの助言を得て、モンテカルヴォから逃亡するのだった。

カヒルからの情報で、シリがニルフガードにいないことを知ったゲラルト一行は、カエド・ドゥにいるというドルイドたちに助言を求めるべく、ヤルーガ川近辺を進んでいた。そこでゾルタンたちドワーフの一団と奇跡的に再会を果たすも、ゾルタンらは故郷マハカムに戻ることとなった。別れ際、ゾルタンは自分たちの犯した強盗の罪を告白し、ゲラルトにシヒルを託すのだった。

そんな中、ミルヴァが一連の旅に立つよりも前に、彼女が助けたエルフの子を身ごもっていたことが判明する。そして、ヤルーガ川の周囲にはライリアの遊撃部隊が展開していた。渡し船で川を渡ろうとするゲラルトたちを巻き込んで、ニルフガードとの三つ巴の戦いが始まる。成り行きでライリア軍を指揮することになったゲラルトたちは、危機一髪のところでニルフガードを一掃。その功績が認められ、ゲラルトはメーヴ女王から正式に騎士に任命されるのだった。

登場人物

リヴィアのゲラルト
変異誘発剤の摂取により異能へと変異した怪物狩り、通称“ウィッチャー”。特徴的な白髪から、<白狼>の異名で知られる。シリを追い、ニルフガードを目指す。
シリ(シリラ)
シントラ女王キャランセの孫娘にして、“シントラの仔獅子”の名で知られる灰金色の髪の少女。<古き血脈>と呼ばれるエルフ族の血縁にあたり、強大な魔力の媒介たる<源流>である。ファルカを名乗り、「ネズミ」と行動を共にする。
ダンディリオン
ゲラルトの友人にして、吟遊詩人。かつてゲラルトと共に冒険の旅に出たこともある。吟遊詩人としての腕は本物で、大衆にも名が知れている。
ミルヴァ
本名マリア・バリング。弓の名手。ブロキロンの木の精の協力者。ゲラルトの旅に同行する。
カヒル・マー・ディフリン・エプ・シラク
黒い羽根付き兜の騎士。ニルフガード皇帝の執事長の息子。
エミール・レジス・ロヘレック・タージフ=ゴドフロイ
理髪外科医にして上級吸血鬼。過去のとある事件から、人間の血を吸うことはやめている。
ゾルタン・シヴェイ
ドワーフ。ニルフガード侵略により難民となったカーナウの女子供を連れて旅をしている。
マンロ・ブルイス
ゾルタンと共に旅をするドワーフ。
ヤーゾン・ヴァルダ
ゾルタンと共に旅をするドワーフ。
キャレブ・ストラットン
ゾルタンと共に旅をするドワーフ。
フィギス・マーラッゾ
ゾルタンと共に旅をするドワーフ。
パーシヴァル・シャタンバック
ゾルタンと共に旅をするノーム。
ウィンドバッグ陸軍元帥
ゾルタンの飼っているオウム。
イースネ
ブロキロンの森を統べる木の精。
アグレイ
ブロキロンの治療師長。
シギスムンド・ディクストラ
レダニア国の諜報部長。背丈は2m近く、体重は200kg近くある巨漢。
レネプ
ディクストラの部下。
オリ・リューベン
ディクストラの秘書。
エムヒル・ヴァル・エムレイス
ニルフガード皇帝。<白炎>の渾名で知られる。
ヴァティエル・ド・リドー
ニルフガード帝国の軍諜報部長。
ステファン・スケレン
ニルフガード帝国特任管財官。別名モリフクロウ。
ボンハート
ニルフガードの雇われ殺し屋。
ヴィセゲルド元帥
シントラ軍の司令官。
ダニエル・エチェヴェリ
ギャラモン伯爵。テメリア軍の連絡将校。

魔法使い

フィリパ・エイルハート
レダニアのヴィジミル王に仕える女魔法使い。女魔法使いたちを集め、モンテカルヴォにて新たな結社の結成を目論む。
ヴェンガーバーグのイェネファー
かつて強力な精霊ジンに囚われていたところをゲラルトに助けられたことをきっかけに、ゲラルトと恋仲になった女魔法使い。サネッド島の反乱以降、行方知らずとなっている。
トリス・メリゴールド
ゲラルト、イェネファー共通の友人である女魔法使い。
キーラ・メッツ
テメリアのフォルテスト王に仕えていた女魔法使い。
サブリナ・グレヴィシグ
ケイドウェンのヘンセルト王に仕える女魔法使い。
シーラ・ド・タンカーヴィレ
女魔法使い。
マルガリータ・ラウクス=アンティレ
女魔法使い。魔法学校の校長。
フランチェスカ・フィンダベア(エニッド・アン・グレアナ)
<谷間のヒナギク>の名を持つエルフの女魔法使い。<花の谷>の女王。
アイダ・エミアン
エルフの女魔法使い。
アシーレ・ヴァル・アナヒッド
ニルフガード帝国の女魔法使い。
フリンギラ・ヴィゴ
ニルフガード帝国の女魔法使い。
リエンス
シリを追う魔法使い。イェネファーにつけられた顔の火傷が特徴。
ヴィルゲフォルツ
シリを追う魔法使い。サネッド島の反乱以降、姿を見せていない。

「ネズミ」の関係者

ギゼルハー
「ネズミ」の構成員。
ケイレイ
「ネズミ」の構成員。
イスクラ=アエネウェディン
「ネズミ」の構成員。
ミスル
「ネズミ」の構成員。
リーフ
「ネズミ」の構成員。
アッセ
「ネズミ」の構成員。

<ウィッチャー>の世界

脚注

関連項目