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{{Otheruses|極小針の技術、経皮吸収|ダーマローラーを使った経皮コラーゲン誘導療法|マイクロニードリング}}
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[[ファイル:Microneedle array comparison with Hypodermic needle.jpg|サムネイル|1mm以下の針がマイクロニードル。]]
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'''マイクロニードル'''(Microneedle)は、1mm未満の直径や長さの極小の針{{sfn|青柳誠司|2016}}。
'''マイクロニードル'''(Microneedle)は、1mm未満の直径や長さの極小の針{{sfn|青柳誠司|2016}}。当初、針には金属が使われたが、生分解性バイオポリマーが使われるようになった。物質を通さない角質層を通過し、痛点の多い真皮より浅く薬剤を透過できる。インスリン{{sfn|青柳誠司|2016}}、ワクチンや化粧品、そのほか医薬品の透過のために開発されてきた


==加工==
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この点でマイクロニードルでは、痛点をあまり刺激せずに分子量が大きい物質を、浅い表皮に到達させることができる{{sfn|青柳誠司|2016}}。
この点でマイクロニードルでは、痛点をあまり刺激せずに分子量が大きい物質を、浅い表皮に到達させることができる{{sfn|青柳誠司|2016}}。


[[脂漏性角化症]]では、6%濃度の[[レチノイン酸]]を外用するなどレチノイドが使われるが、有望なオールトランス-レチノイン酸では皮膚の透過率は数パーセントで浸透する量を増やすために外用薬の量を増やすと炎症や前進的な副作用の可能性が高まる<ref name="naid40021688591">{{Cite journal |和書|author1=廣部祥子 |author2=岡田直貴 |date=2018-09 |title=マイクロニードルを用いた皮膚疾患治療 |journal=Drug delivery system |volume=33 |issue=4 |pages=293-302 |naid=40021688591}}</ref>。こうした薬剤成分の溶解型マイクロニードルへの適用が開発されている<ref name="naid40021688591"/>。
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ワクチン<ref name="naid130005611928">{{Cite journal |和書|author1=伊藤沙耶美 |author2=中川晋作 |author3=岡田直貴 |date=2017 |title=マイクロニードル技術を活用した経皮ワクチン製剤の開発 |journal=Drug delivery system |volume=32 |issue=1 |pages=39-45 |naid=130005611928 |doi=10.2745/dds.32.39 |url=https://doi.org/10.2745/dds.32.39}}</ref>、


==出典==
==出典==

2018年12月15日 (土) 04:44時点における版

1mm以下の針がマイクロニードル。

マイクロニードル(Microneedle)は、1mm未満の直径や長さの極小の針[1]。当初、針には金属が使われたが、生分解性バイオポリマーが使われるようになった。物質を通さない角質層を通過し、痛点の多い真皮より浅く薬剤を透過できる。インスリン[1]、ワクチンや化粧品、そのほか医薬品の透過のために開発されてきた。

加工

1976年にGerstelとPlaceが提唱したが、製造が困難で費用対効果もよくないことから、1990年代以降まで開発は進まなかった[2]。従来からある研削のような機械加工では製造しにくく、半導体の加工技術を基に3D造形、ナノインプリントといった新しい技術が必要となる[1]

  • 第一世代マイクロニードル
チタン、ステンレス、シリコンを素材とし、アレルギー反応が起こったり、針が折れて残る危険性があった[2]
  • 第二世代マイクロニードル
生分解性バイオポリマーを使い、そうしたリスクを改良した[2]

医療

  角質層: 10-15um[1]
  表皮: 数百um[1]
  真皮: 1-3mm、痛点が多い[1]
マイクロニードル(右の針群)が表皮まで浸透する様子。注射針(左)は、より深く刺さっている。一番表層の角質層が物質の侵入を防ぐバリアとなり分子量500以上また水溶性の物質は侵入しにくい[2]

経口投与では消化管や胃など、薬品の血中濃度が変動する要因があるが、経皮吸収では血中濃度を安定させやすく、またワクチンでは表皮に対象となるランゲルハンス細胞が多ということもある[1]。しかし単に皮膚に塗るだけでは分子量が500程度の物質しか角質層を透過することはできず、麻酔、インスリン、DNA、ワクチン、ヒアルロン酸は透過しにくい[1]。これは角質層がバリアとなっているため[2]。一方、従来からある注射針を使えば、より深くへ注入できるが真皮に到達し痛い[1]

この点でマイクロニードルでは、痛点をあまり刺激せずに分子量が大きい物質を、浅い表皮に到達させることができる[1]

ワクチン[3][4]、ヒアルロン酸など化粧品[5]での研究開発が行われてきた。脂漏性角化症では、6%濃度のレチノイン酸を外用するなどレチノイドが使われるが、有望なオールトランス-レチノイン酸では皮膚の透過率は数パーセントで浸透する量を増やすために外用薬の量を増やすと炎症や前進的な副作用の可能性が高まる[2]。こうした薬剤成分の溶解型マイクロニードルへの適用が開発されている[2]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 青柳誠司 2016.
  2. ^ a b c d e f g 廣部祥子、岡田直貴「マイクロニードルを用いた皮膚疾患治療」『Drug delivery system』第33巻第4号、2018年9月、293-302頁、NAID 40021688591 
  3. ^ 伊藤沙耶美、中川晋作、岡田直貴「マイクロニードル技術を活用した経皮ワクチン製剤の開発」『Drug delivery system』第32巻第1号、2017年、39-45頁、doi:10.2745/dds.32.39NAID 130005611928 
  4. ^ 岡田直貴「マイクロニードル技術を活用した「貼るワクチン」の開発」『精密工学会誌』第82巻第12号、2016年、1023-1026頁、doi:10.2493/jjspe.82.1023NAID 130005179292 
  5. ^ 松永由紀子「自己溶解型マイクロニードル技術の化粧品領域への応用」『Drug delivery system』第30巻第4号、2015年、371-376頁、doi:10.2745/dds.30.371NAID 130005116539 

参考文献