Sec61

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
SecE/Sec61γ
識別子
略号 SecE
Pfam PF00584
InterPro IPR001901
PROSITE PS01067
SCOP 1rhz
SUPERFAMILY 1rhz
TCDB 3.A.5
OPM protein 1rhz
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
テンプレートを表示
SecG/Sec61β, archaeo-eukaryotic
識別子
略号 Sec61_beta
Pfam PF03911
InterPro IPR016482
SCOP 1rhz
SUPERFAMILY 1rhz
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
テンプレートを表示
SecG, bacterial
識別子
略号 SecG
Pfam PF03840
InterPro IPR004692
OPM protein 5aww
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
テンプレートを表示

Sec61原核生物ではSecYEG)は、全てのドメインの生物に存在する膜タンパク質複合体である。トランスロコンの核となる構成要素として、真核生物の場合には小胞体へ、原核生物の場合には細胞外へタンパク質を輸送する。3つの異なるサブユニットSecY(Sec61α)、SecE(Sec61γ)、SecG(Sec61β)から構成され、膜を貫通するドーナツ型のポアを形成する。小胞体内外への輸送を遮断するプラグ(plug)と呼ばれる領域も存在する。新生ポリペプチド鎖の疎水的領域がシーム(seam)と呼ばれるSec61の別の領域と相互作用するとこのプラグは取り外され、ポリペプチドが小胞体内腔へ移行(トランスロケーション)できる状態となる[1]

構造[編集]

古細菌SecYEβの構造(PDB: 1RHZ​)
上面(プラグが差し込まれたチャネル)
側面(膜貫通領域)
サブユニット: SecY(赤)、SecE(緑)、Secβ(青)

SecY/Sec61αのポアの構造に関する知見の多くは、古細菌型のもののX線結晶構造から得られたものである[2]。大きなSecYサブユニットは、膜貫通領域1–5と6–10の2つの領域から構成される。両者は膜貫通領域5と6の間のループによって細胞外側で連結されている。SecYはラテラルゲート(lateral gate)によって横方向に開くことができる。SecEはほとんどの種で1回膜貫通タンパク質であり、SecYの2つの領域の周囲に巻き付くように位置している。SecG(Secβ)は必要不可欠ではなく、SecYの横に位置してわずかに接触を行っているのみである。横から見るとチャネルは砂時計型の構造をしており、細胞質側の開口部は空であるのに対し、細胞外側の開口部はプラグと呼ばれる小さなヘリックスで閉じられている。膜領域の中心付近には、疎水性側鎖がポアに向かって突出することで形成された狭窄部が存在する。タンパク質のトランスロケーション時にはプラグはポリペプチド鎖の通路から移動し、ポリペプチド鎖は細胞質側から狭窄部を通って細胞外側へ移行する。膜タンパク質の疎水性領域はラテラルゲートから横方向に脂質層へ移動し、膜貫通領域となる[2]

ドメインによる差異[編集]

細菌のSecYEGチャネルは分泌タンパク質のシグナル配列や、トランスロケーションを駆動するATPアーゼであるSecA英語版と相互作用する。SecYは419–492残基からなる細胞膜貫通タンパク質であり、一般的には10個の膜貫通領域、6つの細胞質領域、5つのペリプラズム領域から構成される[3]

真核生物のトランスロコンは、SecAの代わりに小胞体内腔に位置するシャペロンタンパク質であるBiPを利用してトランスロケーションを駆動する[4]

古細菌のトランスロコンの理解は進んでいない。細菌のようにSecDF英語版-YajCやYidCを利用している可能性があり、ホモログは見つかっている。ATPアーゼはまだ同定されていない[5]

種による差異[編集]

ヒトでは、Sec61αはSEC61A1英語版SEC61A2遺伝子、Sec61βはSEC61B英語版遺伝子、Sec61γはSEC61G英語版遺伝子にそれぞれコードされている。

出芽酵母には2種類の相同な複合体が存在し、必要不可欠なものがSec61、必須ではない方はSsh1と呼ばれている。Sec61と同様、Ssh1もリボソームに結合する[6]

出典[編集]

  1. ^ “Protein translocation by the Sec61/SecY channel”. Annual Review of Cell and Developmental Biology 21: 529–50. (2005). doi:10.1146/annurev.cellbio.21.012704.133214. PMID 16212506. 
  2. ^ a b “X-ray structure of a protein-conducting channel”. Nature 427 (6969): 36–44. (January 2004). Bibcode2004Natur.427...36B. doi:10.1038/nature02218. PMID 14661030. 
  3. ^ “SecY and integral membrane components of the Escherichia coli protein translocation system”. Molecular Microbiology 6 (17): 2423–8. (September 1992). doi:10.1111/j.1365-2958.1992.tb01417.x. PMID 1406280. 
  4. ^ Osborne, Andrew R.; Rapoport, Tom A.; van den Berg, Bert (2005). “Protein translocation by the Sec61/SecY channel”. Annual Review of Cell and Developmental Biology 21: 529–550. doi:10.1146/annurev.cellbio.21.012704.133214. ISSN 1081-0706. PMID 16212506. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16212506. 
  5. ^ Calo, D; Eichler, J (March 2011). “Crossing the membrane in Archaea, the third domain of life.”. Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes 1808 (3): 885–91. doi:10.1016/j.bbamem.2010.03.020. PMID 20347718. 
  6. ^ “Analysis of Sec61p and Ssh1p interactions in the ER membrane using the split-ubiquitin system”. BMC Cell Biology 14: 14. (March 2013). doi:10.1186/1471-2121-14-14. PMC 3618304. PMID 23497013. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3618304/. 
  • Alberts, Bruce et al. Molecular Biology of the Cell. Garland, 2002. ISBN 0-8153-3218-1

関連項目[編集]

外部リンク[編集]