1,3-デヒドロアダマンタン

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1,3-デヒドロアダマンタン(1,3-Dehydroadamantane)は、化学式C10H14で表される炭化水素である。IUPAC名は、テトラシクロ[3.3.1.13,7.01,3]デカンである。アダマンタンの2つの水素原子を除去し、分子内結合を形成することで得られる。多環炭化水素であり、2つの大きな環の間にメタンジイル基を持つ[3.3.1]プロペランの誘導体と見なすこともできる。

他の小環プロペランと同様に、この化合物もかなり歪みが大きく、不安定である。

合成[編集]

1,3-デヒドロアダマンタンは、1969年にリチャード•ピンコックとエドワード•トルプカによって[1]、下記のように1,3-ジハロアダマンタンを還元することによって得られた。

Scheme 1. 1,3-dehydroadamantane synthesis


反応[編集]

酸化[編集]

空気中の酸素と、半減期6時間で反応し、過酸化物を生成する。 過酸化物は、水素化アルミニウムリチウムと反応することで、二水酸化物となる。

重合[編集]

[1.1.1]プロペランと同様に、1,3-デヒドロアダマンタンは、アキシアル結合を切断し、できたラジカルで直鎖を形成することにより、重合することができる。

Scheme 2. Polymerization of 1,3-dehydroadamantane.

同様にして、1,3-デヒドロアダマンタンは、テトラヒドロフラン中で金属リチウムを開始剤として、アクリロニトリルラジカル付加重合する。生成した共重合体は、217℃にガラス転移点を持つ[2]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Richard E. Pincock and Edward J. Torupka (1969), Tetracyclo[3.3.1.13,7.01,3]decane. Highly reactive 1,3-dehydro derivative of adamantane J. Am. Chem. Soc., volume 91 issue 16, pp. 4593–4593; doi:10.1021/ja01044a072
  2. ^ Shin-ichi Matsuoka, Naoto Ogiwara, and Takashi Ishizone (2006), Formation of Alternating Copolymers via Spontaneous Copolymerization of 1,3-Dehydroadamantane with Electron-Deficient Vinyl Monomers. Communication, J. Am. Chem. Soc., volume 128 issue 27, pp. 8708–8709;doi:10.1021/ja062157i