魔術王と聖剣姫の規格外英雄譚

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魔術王と聖剣姫の規格外英雄譚
ジャンル ファンタジー
小説
著者 三門鉄狼
イラスト かわいまりあ
出版社 ソフトバンククリエイティブ
レーベル GA文庫
刊行期間 2017年7月 - 2017年11月
巻数 全2巻
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル
ポータル 文学

魔術王と聖剣姫の規格外英雄譚』(まじゅつおうとせいけんきのきかくがいえいゆうたん)は三門鉄狼によるライトノベル。イラストはかわいまりあ

あらすじ[編集]

※1巻
フレイヤは魔物(ヴァイス)に姉クレアを殺された過去があった。その想いから魔物と戦う傭兵の育成機関「七芒学園(セヴンズ・アカデミア)」の女子生徒となった。しかし、特異体質のため自身の氣力を引き出せず、学園では落ちこぼれとして見られていた。それでも剣の鍛錬だけは欠かさず行い、魔術王アレクとの出会いと修行を得て大きく成長を果たす。
そんな中、その特異体質を先輩であるエドガーに見込まれ勧誘を受ける。実は彼の正体は、世界征服を目論む秘密組織「大陸の覇者(ネフシュタン)」の先兵であった。かの組織は魔物と手を組み、共同戦線を張ることで野望を成し遂げようとしていた。エドガーは学園を拠点にするべく多数の魔物を率いて反乱を起こす。更にフレイヤが意のままにならないと見ると腕を斬り落として再起不能にしようとする。
しかし、駆けつけたアレクのデタラメな力によって大敗を喫する。エドガーに加担した貴族ロイド・グローリーも御用となり、学園の平穏は取り戻された。
※2巻
その後、フレイヤは故郷にて姉クレアの死の真相を知る。クレアは魔物に殺され埋葬されたということになっていたが、死体は見つからず回収されていなかった。
実はロイドの手引きによって遺体は組織に回収され、魔物の体組織を移植されたことで「人造魔物」の入れ物にされていた。既に「クレア・メリヴェール」は死亡しており、現在の人格は生前の記憶と「世界を自由に渡り歩く」という想いを持った魔物となっていた。
そのために人間を抹殺し、自分が妹と一緒に過ごせる世界を創ろうと考えていた。証拠不十分のため釈放となったロイドと共にエルフィリア王城を襲撃し、居合わせたアレクと交戦。彼を圧倒的な力で追い詰め、更に駆けつけたフレイヤもクレアを魔物と割り切れず戦意喪失となる。だがしかし、アレクの声援に応えたことでフレイヤは復活。
クレアは自分の願いが否定されたことで恐慌状態に陥り、醜い魔物の姿となって暴走。最期は妹の一撃によって肉体を破壊された。クレアは倒れ、ロイドも捕縛されたことでエルフィリアを拠点にするという組織の野望は防がれた。

登場人物[編集]

主要キャラクター[編集]

アレク・ウェインライト
主人公。異名は「魔術王」。元々はエルフィリアの研究所に勤める研究員だが、フレイヤの存在を知り七芒学園に生徒として入学した。ものぐさな怠け者で、体力もなく小食。
剣士として名を馳せるウェインライト家に生まれながら、剣の才能に恵まれなかったため父親に疎まれながら育った過去がある。
フレイヤ・メリヴェール
ヒロイン。15歳。エルフ。長く赤い髪で巨乳の剣士。異名は「無才剣姫」。エルフィリア出身の名門貴族で父ニールドは騎士団長を務める。特異体質のため自身の氣力を引き出せなかったが、魔術王アレクとの出会いと修行を得て大きく成長を果たす。
姉クレアを魔物に殺された過去を持ち、その想いから七芒学園に入学した。
リーネ・ヴァンダイン
フレイヤの親友。獣人族でありキツネのような耳と尻尾が特徴。フレイヤに並ぶ巨乳の持ち主で身長もやや高い。普段は大人しいが戦闘になると人格が一変し好戦的になる。
マリーグレイス・グローリー
フレイヤのライバル的存在。エルフ。高飛車な性格で負けず嫌いな令嬢。エルフィリア出身の名門貴族。フレイヤを圧倒する力の持ち主だったが、後に成長したフレイヤに敗北し、互いに認め合う仲となる。
ファム・ファーティマ
アレクたちの先輩。種族はドワーフ。一人称は「ボク」。「七王裔雄」の一人であり異名は「創世鬼」。しかし戦闘向けの能力ではなく、機動魔装の調整などを行うメカニック的な立場にある。小柄な見た目に反して力は強く、大男をひょいと持ち上げてしまう膂力を持つ。

サブキャラクター[編集]

ミリル・ナイトウォーカー
学園長。妙齢の美女で異名は「漆黒の冥王」。一流の魔装使いで上級の魔物を一人で倒したことがあると言われている。
アレクの研究につき合った関係で顔見知り。
クレア・メリヴェール
故人。フレイヤの姉。「世界を自由に渡り歩くこと」を夢見ていたが、中級魔物の襲撃により命を落とす。遺体の損傷が激しかったため、父の計らいにより妹には見せずに埋葬されたということになっている。

大陸の覇者(ネフシュタン)[編集]

本作における敵対勢力。人でありながら魔物と手を組み、世界の覇権を狙うべく暗躍する違法組織。

エドガー・フリージア
1巻に登場。異名は「千剣帝」。アレクと同じく名門貴族「フリージア」の出身であり、七芒学園でもトップクラスの実力者「七王裔雄」の一人として知れ渡っていた。物静かで落ち着いた雰囲気を醸し出す美形の青年なので女性人気も高い。
しかしその正体は、七芒学園に組織が送り込んだ先兵。徹底して「力」に固執した思考の持ち主で、力を持たぬものは存在する価値すらないという極端な考え方をしている。その思考はグローリー卿をして「狂人」と言わしめるほど。登場当初は善人を装いフレイヤと接触するが、1巻終盤にて学園を支配するべく人造の魔物を率いクーデターを起こす。当初はフレイヤの力に目をつけ仲間に引き入れようとしたが、意のままにならないと知ると彼女の腕を切り落とし、戦力を奪ってから自分の物にしようとする。直後に現れたアレクと一騎討ちを繰り広げ、当初は優位に戦局を進めるが、本気を出したアレクのデタラメな力に驚愕し、「圧倒的な力」の前に敗北する。その後、魔装軍に捕縛された。
ロイド・グローリー
1巻から登場。マリーグレイスの叔父。七芒学園の運営に口を出せる幹部的な存在だが、その正体は組織の一員でありエドガーに協力する形で反乱に加担する。姪のマリーを疎ましく思っていたらしく反乱に乗じて抹殺を指示した。エドガーの敗北後、悪事が露見し魔装軍に捕縛されている。表向きは尊大に振る舞っているが、内心ではエドガーの狂気に圧倒されている小者に過ぎない。
2巻では証拠がもみ消されたことで無罪放免となり釈放され、再び組織の手先としてエルフィリアに現れる。邸宅に残された報告書によって今度こそ悪事が露見し、またクレアの人造魔獣化にも関わったことが判明する。クレアを連れて王都を襲撃するが、真の狙いは王城を占拠し自らが王となって、組織の新たな拠点にすることだった。王座まで迫ったがアレクとフレイヤに阻まれ、観念した後は自らを「娘(クレア)の仇」とニールドを挑発するが、「お前みたいな小者は娘の仇ですらない」と突き返されて最後の矜持も砕かれ、フレイヤの手で捕縛された。
クレア・メリヴェール(人造魔物)
2巻に登場。ロイドが連れてきた大人びた妖艶な美女で、炎のような赤みを見せる黒髪を持つ。目的は「世界を自由に渡り歩くこと」。百体以上の下級魔物を王都に向かわせ、その騒ぎに乗じてエルフィリアに潜入した。
その正体は、かつて中級魔物に殺害されたフレイヤの姉「クレア・メリヴェール」の遺体を利用して生まれた人造魔物。表向きは「死体は損傷が激しくフレイヤには見せられない」とされ埋葬されていたが、実は死体は見つかっておらずニールドはそのことを隠していた。ロイドの手引きによって秘密裏に組織に遺体を回収され、人造魔獣となって復活し、フレイヤたちの前に立ちはだかる。
生前のクレアの記憶がこもった氣力を所持しており、このことからクレアの記憶を持ち、妹に対する執着心も抱いている。言い換えればそれは「姉クレアの記憶を持っただけの別人」の証明でしかない。
ロイドの手引きによりエルフェリア王城を襲撃。待ち構えていたアレクたちと交戦し、黒子芝居を用いてアレクに重傷を与える。駆けつけたフレイヤも姉と戦うことができず戦意喪失に陥るが、アレクの声援により奮起。姉妹対決が繰り広げられることとなった。クレア自身は人造魔獣として世界から人間を駆逐した後、妹と共に世界を自由に渡り歩くことを夢見ている。しかし、フレイヤとの戦いではその想いを拒絶され、今度はクレア自身が恐慌状態に陥る。醜い魔物のとして姿を現し襲い掛かるが、最期はフレイアの全力の一撃により肉体を破壊され戦闘不能となった。意識が消えるその時まで「姉として妹と一緒に世界を渡り歩くこと」に想いを馳せ続けていた。
黒子芝居(グルームパペット)
他者の氣力に干渉する異能。一度に複数の氣力に干渉が可能であり、相手は身動きが取れないため無防備な状態となる。アレクやフレイアのように異なる氣力なら簡単に干渉はされないが、「頑張れば」一瞬だけ干渉して動きを止めることができる。

地名[編集]

七芒学園(セヴンズ・アカデミア)
七王国が協力して設立した、対魔物戦闘のスペシャリスト「魔装使い」を養成する機関。
七王国(セヴンズ)
七つの国家の総称。以下の国家が存在する。
ヒュマニア
人間族の国。
エルフィリア
エルフ族の国。王都はエルフィリア。2巻の舞台。
機動魔装の扱いに長けた種族のため、機動魔装の研究が最も盛ん。他の研究所はすべて七芒学園に統合されたが、この国だけ研究所は残っており一般的には七芒学園よりも研究が進んでいると認識されている。研究所にはかつてアレクが所属していた。
ベスティリア
獣人族の国。
スミタリア
ドワーフ族の国。
オラクレア
神託者の国。
ネクロノミア
霊魔族の国。
邪悪の森(エヴィルフォレスト)
魔物の本拠地。大陸の大半を占める森で人類の生存不可領域となっている。逆に魔物も邪悪の森の外では生きられないので滅多に出てくることはない。

用語集[編集]

魔装使い(ウィザード)
この世界における軍人のような存在。魔物と戦う力を持つ。
氣力(スピリット)
魔物や人が持つ生命エネルギー。機動魔装を扱うために必要な力。
皇血(ブルード)
特殊な氣力。七王霊装を起動するために必要となる。
機動魔装(マギデバイス)
内部に組み込まれた詠唱構文(ルーンプログラム)を用いて氣力を具現化する武装。魔物に対する対抗手段。具現化した力での攻撃は魔法攻撃とも言われる。
七王霊装(セイクリッド)
かつて大陸に七つの王国を築いた「始祖の七王」が使っていた特殊な機動魔装。皇血と呼ばれる特殊な氣力を持たなければ起動できない。
以下の七王霊装が確認されている。
妖聖杖エレシュキガル
杖の形をした機動魔装。所持者はアレク・ウェインライト。
聖王剣カルトヴルッフ
剣聖王アーサーが用いた剣。所持者はフレイヤ・メリヴェール。
古代詠唱術(エンシェントアリア)
この世界を構成する七つの精霊に呼びかける言語。一般的に使われているものとは異なる。
原初の七文字(レターオリジン)
機動魔装で使われている詠唱構文の元になった言語。古代詠唱術とはこれを用いることを指す。
完全詠唱(アブソリュート)
省略をせず正確な発声法を行うことで氣力を限界まで引き出す攻撃法。
多重詠唱
完全詠唱の詠唱文を重ね合わせることで氣力を増幅させる。
七王裔雄(ディセンダント)
七芒学園において最強と呼ばれる七人を指す。
魔物(ヴァイス)
世界にはびこる怪物たち。邪悪の森を生息地とし、体組織の多くを氣力によって構成させている。そのため森の外では生きられず、氣力で構成された肉体であるため氣力による攻撃以外は受け付けない。
体格や強さに応じて以下にランク分けされている。
下級(キャプト)
犬や鳥などを模した小型の魔物。漆黒の皮膚が溶けてドロドロした姿をしている。
中級(カーネル)
グリフォンなどを模した大型の魔物。
上級(ジェネラル)
本作未登場。
人造魔獣 / レムナント(残り物)
大陸の覇者の手によって人工的に生み出された魔物。一般的には通常の魔物と見分けがつかない。また個我を持たないらしく組織の操り人形となっている。下級と中級レベルが確認されている。
実は生物の肉体に魔物の体組織(氣力)を移植することで人為的に生み出された存在。移植された生物の氣力(魂)が持っていた感情や思い出が人造魔獣にも反映されることから「レムナント(残り物)」と呼称されている。

脚注[編集]