メトキシピラジン

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イソプロピルメトキシピラジンの化学構造

メトキシピラジン(Methoxypyrazines)は、ピラジン環にメトキシ基が結合した、香りを持つ物質の分類である。その香りは、ある種のワインに含まれる[1]ものやナミテントウが発する2-イソプロピル-3-メトキシピラジンのように、好ましくないものであることも多い。また、たばこの添加物としても同定されている。検出閾値は非常に低く、2ppt近く(1 ng/L)である[1]

ブドウに含まれるメトキシピラジン[編集]

カベルネ・ソーヴィニヨンは、メトキシピラジンを高濃度で含む[2][3]2-イソブチル-3-メトキシピラジン2-イソプロピル-3-メトキシピラジンの2つは、ソーヴィニヨン・ブランのワインが持つ緑の香りに寄与していると考えられている[4]

コーヒーに含まれるメトキシピラジン[編集]

コーヒーにおいては、アルキルピラジン類は好ましい焙煎香をもたらすが、メトキシピラジンは「ポテト臭」と呼ばれる異臭の原因となる。ルワンダをはじめとするアフリカ中部産のコーヒー豆の中には、しばしばポテト臭を持つ欠点豆が混入する。汚染された豆は外観では区別が困難で、数粒混入しただけでコーヒー全体に異臭が広がることから問題となっている。この地方に多く発生するカメムシの一種のアンテスティア英語版コーヒーノキの果実の汁を吸う際に、唾液を通じて侵入する細菌が果実内で異常発酵を起こし、メトキシピラジンを生成することが原因であると考えられる[5]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b Trace flavour components of grapes
  2. ^ winepros.com.au Oxford Companion to Wine methoxypyrazines Archived 2012年2月29日, at the Wayback Machine.
  3. ^ Oz Clarke Encyclopedia of Grapes pg 223 Harcourt Books 2001 ISBN 0-15-100714-4
  4. ^ Marais, J., Hunter, J.J., & Haasbroek, P.D. (1999). Effect of microclimate, season and region on Sauvignon blanc grape composition and wine quality. South African Journal of Enology and Viticulture, 20, 19-30.
  5. ^ 旦部幸博『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(4版)講談社ブルーバックス、2016年4月5日、144-145頁。ISBN 978-4-06-257956-8