ペトラック鉱

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ペトラック鉱
分類 硫化鉱物
シュツルンツ分類 10th: 2.KA.05
08th: 2/C.06-140
Dana Classification 2.9.18.1
化学式 (Cu,Fe,Zn)3(Sn,In)S4
結晶系 斜方晶系
対称 H-M記号: mm2
空間群: P mn21
単位格子 a = 7.66Å
b = 6.43Å
c = 6.26Å
V = 308.33Å3
Z = n.d.
モル質量 379.82 g/mol
晶癖 粒状
顕微鏡的微小結晶
双晶 n.d.
へき開 {110} 明瞭
{100} 明瞭
{010} 明瞭
モース硬度 4.5
光沢 金属光沢
灰色・褐色
条痕 黒色
透明度 不透明
密度 4.61
光学性 n.d.
光軸角 2V meas. = n.d.
calc. = 異方性
不純物 Ag, Mn, Cd
文献 [1][2][3][4]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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ペトラック鉱 (Petrukite) とは、硫化鉱物に属する鉱物の1つ。(Cu,Fe,Zn)3(Sn,In)S4 という化学組成斜方晶系の結晶系を持つ[1][2][3]。組成にインジウムを含んでおり、インジウムの資源となるインジウム鉱石の中に含まれる鉱物の1つである。

概要[編集]

ペトラック鉱は、1985年に Stephen A. Kissin と De Alton R. Owens によって、カナダの Herb Claim と日本生野鉱山で発見された鉱物である[4]1989年新鉱物として承認され、名称はカナダ人鉱物学者のウィリアム・ペトラック (William Petruk) にちなんで名づけられた[1][2]。日本の領土内において、日本人を含まない研究チームが新鉱物を発見したこと[4]、日本に因まない名称が付けられた事例は初めてであり、2013年現在もペトラック鉱が唯一の事例である。

性質・特徴[編集]

ペトラック鉱の組成は (Cu,Fe,Zn)3(Sn,In)S4 である。理想的にはスズ硫化物であり、Cu:Sn:S 比は 3:1:4 である。しかし、実際には銅のサイトには亜鉛、スズのサイトにはインジウムが顕著に含まれている[1][2]。特にインジウムは重量にして約6%も含まれている[2]。また、銅のサイトに多少のと、極めてわずかながらマンガンカドミウムが検出されている[4]浜根大輔は現在の組成式に疑義を呈しており、ペトラック鉱独自の構造を安定させるため亜鉛とインジウムが必須だとして(Cu,Zn)2Fe(Sn,In)S4という組成式を主張している[5]。この組成式は黄錫鉱に非常に近いが、結晶構造が異なる(黄錫鉱は直方晶系、ペトラック鉱が正方晶系だが詳細は未解明)。

インジウムは地殻にわずかしか含まれていない金属元素であり、いわゆるレアメタルの1つである。ペトラック鉱そのものは極めて微小な粒から結晶であるため、ペトラック鉱そのものを資源の対象として資源採掘を行うことは無い[2]。しかし、インジウムを多く含む閃亜鉛鉱 (Sphalerite) は、その結晶内部の固溶体の1つとしてペトラック鉱が含まれている場合があり、ペトラック鉱はインジウム資源の1つである[6][7]

ペトラック鉱は多くは灰色や褐色の金属光沢を持つ粒状であり、肉眼的な結晶は無い。3方向に明瞭な劈開が見られる。条痕は黒色である。モース硬度は4.5とやや硬い[2]

産出地[編集]

出典[編集]

関連項目[編集]