バタリアン

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バタリアンBattalion、原題:The Return of the Living Dead)は、1985年から2006年までアメリカで製作されたホラー映画で、コメディ要素も持ち合わせているシリーズ作品である。

シリーズ[編集]

概要[編集]

本作は、ゾンビ映画の記念碑的作品である『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のパロディとなっている。「ホラー映画」というジャンルに分類されてはいるが、コメディ要素が盛り込まれている。邦題の「バタリアン(Battalion)」は、日本の配給会社の東宝東和による日本独自のもので、英語で「大隊」や「大群」の意。この映画タイトルを元に、「オバタリアン」という流行語も生まれた[1]

本作においては“『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』で描かれている出来事は事実だった”と設定されている。本シリーズのゾンビは、トライオキシン245という物質により死体が蘇生しゾンビ化するというもので、頭を破壊したり、燃やすことで撃退できるという従来の方法論は通用しない(ただし、作品によって微妙に設定が異なる)上に会話が可能であり、無線機を使用して人を誘き出すなどある程度の知能が残されているのが特徴である。

登場するゾンビにはコールタール漬けにされていた「タールマン」など強い個性や名前がある。さらに、半身だけの老女ゾンビ「オバンバ」など日本公開では東宝東和が原文にはない台詞やキャラクター名など意訳している。そのためキャラクター性が強く描かれている。なお、本シリーズは作品毎に製作会社が違うが、これは本シリーズに限らず、シリーズ物のホラー映画においては比較的多く見られる特徴でもある。

バタリアン[編集]

バタリアン
The Return of the Living Dead
監督 ダン・オバノン
脚本 ダン・オバノン
製作 トム・フォックス
製作総指揮 ジョン・デイリー、デレク・ギブソン
出演者 クルー・ギャラガー
音楽 マット・クリフォード
撮影 ジュールス・ブレンナー
配給 アメリカ合衆国の旗 オライオン・ピクチャーズ
日本の旗 東宝東和
公開 アメリカ合衆国の旗 1985年8月16日
日本の旗 1986年2月8日
上映時間 91分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
次作 バタリアン2英語版
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バタリアンBattalion、原題:The Return of the Living Dead)は、1985年アメリカ合衆国で製作されたホラー映画で、コメディ要素も持ち合わせている。

オライオン・ピクチャーズ製作、1985年(日本では1986年)公開。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』へのオマージュが随所に見られ、ゾンビ映画好きにとって笑えるパロディが盛り込まれている。ラジオCMは「あたしオバンバ、あなたの脳味噌食べさせて〜」というものだった。「バイオSFX方式上映」で公開されると宣伝広告されていた。

日本公開時、地方では「コマンドー」(20世紀フォックス)と同時上映された。

ストーリー[編集]

アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルにあるユニーダ医療会社で働くこととなったフレディは、先輩社員のフランクから、軍の移送ミスによって会社の倉庫にゾンビが保管されている事を知らされる。2人がそのゾンビの入った容器を叩いてみたところ、そこから突然ガスが噴き出した。

ガスは“死体を蘇らせてゾンビ化させる”という物質「トライオキシン245」だったため、倉庫に保管されていた死体(学校や研究機関で使われる練習用の物)がゾンビとなり、フレディとフランクは社長のバートを呼んで、3人がかりでどうにかゾンビを取り押さえる。

バートはゾンビを秘密裏に処理しようと、近所で葬儀屋を営む友人のアーニーの元へゾンビを持ち込み、焼却することにした。しかし、煙突から立ち昇った煙は雨雲を呼び、近くの墓地に染み込んだ雨水は死体を次々とゾンビにしていく。そして、ガスを浴びたフレディとフランクも……。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
バート クルー・ギャラガー 小林修
フランク ジェームズ・カレン 藤本譲
アーニー ドン・カルファ英語版 富田耕生
フレディ トム・マシューズ英語版 樋浦勉
ティーナ ビバリー・ランドルフ 吉田美保
チャック ジョン・フィルビン英語版 塩沢兼人
ケーシー ジュエル・シェパード英語版 小山茉美
スパイダー ミゲル・A・ヌネス・ジュニア 二又一成
スクーズ ブライアン・ペック 堀内賢雄
トラッシュ リネア・クイグリー 勝生真沙子
スーサイド マーク・ヴェンチュリニ英語版 屋良有作
グローバー大佐 ジョナサン・テリー英語版 納谷悟朗
大佐の妻 キャスリーン・コーデル英語版 沼波輝枝
タールマン アラン・トラウトマン英語版
ロバート・ベネット
島香裕
オバンバの声 チェリー・デイヴィス 片岡富枝
役不明又はその他 納谷六朗
村山明
伊井篤史
川口明美
大塚芳忠
谷口節
  • 日本語吹替:初回放送、日本テレビ1987年6月5日『金曜ロードショー/最新ショック&ホラー超ヒット作TV初登場「バタリアン」今夜あの有名人?オバンバ登場 もう限界ですー』※HDリマスター版DVD、Blu-ray収録
翻訳:たかしまちせこ 日本語版制作:ニュージャパンフィルム

その他[編集]

  • 核砲弾 - 劇中で登場する核兵器。

バタリアン2[編集]

バタリアン2
Return of the Living Dead Part II
監督 ケン・ウィーダーホーン英語版
脚本 ケン・ウィーダーホーン
製作 トム・フォックス
ウィリアム・S・ギルモア
出演者 ジェームズ・カレン
トム・マシューズ英語版
マーシャ・ディートレイン英語版
音楽 J・ピーター・ロビンソン英語版
ウラジミール・ホルンツィ
撮影 ロバート・エルスウィット
配給 アメリカ合衆国の旗 ロリマー・モーション・ピクチャーズ英語版
日本の旗 東宝東和
公開 アメリカ合衆国の旗 1988年1月15日
日本の旗 1987年12月19日
上映時間 89分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 バタリアン
次作 バタリアン・リターンズ英語版
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原題はReturn of the Living Dead Part IIロリマー・プロダクション製作、1987年公開。人気を博した第一作に続いて、2作目である『バタリアン2』が作られた。主人公を小学生の少年に設定し、キャラクター性の強く愛嬌のあるゾンビが多く登場させるなど、子供向けホラーコメディに仕上がっている。ストーリーはほぼ1作目と同じであるが、破滅的な結末だった1作目と違い、ハッピーエンドとなっている。

ストーリー[編集]

1台の軍用トラックが走行中、段差を乗り越えた弾みで積荷の複数のドラム缶を落とし走り去っていった。その中身は、死体をゾンビ化させるというトライオキシンであった。それを見つけたジェシーら3人の少年。うちいじめっ子のビリーたち2人がドラム缶の管理ボタンをいじり、噴出したガスを浴びてしまう。ガスを浴びた少年はゾンビ化していき、ガスは墓場へ。地中へ染み出したガスにより、死者たちが次々とゾンビとして蘇っていく。

墓場荒らしをしていたエドジョーイはジェシーの家へ逃げ込むが、ガスを浴びていたため次第に体調が悪くなっていく。ジェシーは姉のルーシー、ジェシーの家を訪れていた電気工事士のトムと共に、エドとジョーイをマンデル医師の元へ連れて行こうとするが、街中にはゾンビが溢れ出しはじめていた。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
ジェシー マイケル・ケンワーシー英語版 井上瑤
ルーシー マーシャ・ディートレイン英語版 水谷優子
トム ダナ・アシュブルック 山寺宏一
ジョーイ トム・マシューズ英語版 樋浦勉
エド ジェームズ・カレン 藤本譲
マンデル医師 フィリップ・ブランズ英語版 滝口順平
ブレンダ スザンヌ・スナイダー英語版 さとうあい
オバンバの声 片岡富枝
  • 日本語吹替:初回放送、日本テレビ1989年6月2日『金曜ロードショー』
翻訳:高橋京子 日本語版制作:ニュージャパンフィルム

バタリアン リターンズ[編集]

バタリアン・リターンズ
Return of the Living Dead 3
監督 ブライアン・ユズナ
脚本 ジョン・ペニー英語版
製作 ゲイリー・シュモーラー
ブライアン・ユズナ
製作総指揮 ローレンス・スティーブン・マイヤーズ
ブライアン・ユズナ
ゲイリー・シュモーラー
ジョン・ペニー
出演者 J・トレヴァー・エドモンド英語版
ミンディ・クラーク
ケント・マッコード英語版
音楽 バリー・ゴールドバーグ英語版
撮影 ジェリー・リヴリー英語版
配給 アメリカ合衆国の旗 トライマーク・ピクチャーズ英語版
公開 アメリカ合衆国の旗 1993年10月29日
上映時間 93分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 バタリアン2英語版
次作 バタリアン4英語版
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原題はReturn of the Living Dead 3トライマーク・ピクチャーズ製作、1993年公開。日本では劇場未公開のシリーズ第3作。『バタリアン3』ではなく、『バタリアン リターンズ』のタイトルでビデオ発売された。コメディ要素が抑えられ、恋愛要素を盛り込んだシリアス路線となるなど、以前の作品とは一線を画したものとなっている。

ストーリー[編集]

カートは恋人であるジュリーをバイク事故で亡くしてしまう。カートの父は軍の研究施設で働いており、そこでは死体をゾンビ化させる物質・トライオキシンを兵器として転用する研究を行っていた。その事を知るカートは施設に忍び込み、トライオキシンを使ってジュリーを蘇生させるが、蘇ったジュリーは人を襲い出してしまう……。

スタッフ[編集]

  • 監督 - ブライアン・ユズナ
  • 製作 - ゲイリー・シュモーラー、 ブライアン・ユズナ
  • 脚本 - ジョン・ペニー
  • 撮影 - ジェリー・リヴリー
  • 音楽 - バリー・ゴールドバーグ

キャスト[編集]

役名 俳優
カート・レイノルズ J・トレヴァー・エドモンド英語版
ジュリー・ウォーカー ミンディ・クラーク
ジョン・レイノルズ ケント・マッコード英語版
シンクレア サラ・ダグラス
ペック ジェームズ・T・キャラハン英語版
ミンディ アビゲイル・レンツ
フィリップ サル・ロペス

バタリアン4[編集]

バタリアン4
Return of the Living Dead: Necropolis
監督 エロリー・エルカイェム英語版
脚本 ウィリアム・バトラー英語版
アーロン・ストロンゴーニ
製作 アナトリー・フラディス英語版
スティーブ・スカルダジオ
製作総指揮 ウラジミール・ドスタル
トム・フォックス
ニコライ・マカロフ
出演者 ピーター・コヨーテ
ジョン・キーフ英語版
コリー・ハードリクト英語版
音楽 ロバート・ダンカン
撮影 ガブリエル・コサス
編集 ジェームズ・コブレンツ英語版
配給 アメリカ合衆国の旗 SFチャンネル英語版
日本の旗 アートポートギャガ・コミュニケーションズ
公開 アメリカ合衆国の旗 2005年10月15日
日本の旗 2006年7月8日
上映時間 89分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 バタリアン・リターンズ英語版
次作 バタリアン5英語版
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原題はReturn of the Living Dead: Necropolisルーマニアウクライナで製作、2005年(日本では2006年)公開。前作の『バタリアン リターンズ』から、12年ぶりに製作された。本作は、バタリアンの基本的な設定を引き継ぎ、ティーンエイジャー映画としての要素を盛り込んでいる。また、本作は映画としては世界で初めて実際にチェルノブイリでのロケ撮影が行われている。

アメリカでは2005年10月15日にケーブルテレビのSFチャンネルで初放送され、2006年4月18日にR指定版のDVDが発売された。

ストーリー[編集]

軍が極秘に開発した化学兵器トライオキシン5は、幾度もゾンビの発生事故を起こしたために全て廃棄処分となる。しかし、その一部が巨大複合企業ハイブラテック社の手に渡り、兵器としての研究が続けられることになった。

叔父であり、ハイブラテック社に勤める科学者のチャールズと同居する高校生のジュリアンは、モトクロスで転倒事故を起こした友人のジークが死亡したと聞かされる。しかし、友人のケイティからハイブラテック社に運び込まれるジークの姿を見たと伝えられ、ゾンビ化実験の事実を知ることになる。ジュリアンは仲間とハイブラテック社の研究施設へジークの救出に向かうのだが……

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
チャールズ ピーター・コヨーテ 小田桐一
ジュリアン・ギャリソン ジョン・キーフ英語版 内田夕夜
ケイティ・ウィリアムズ ジャナ・クレイマー 岡寛恵
ベッキー エイミー=リン・チャドウィック 加納千秋
コーディ コリー・ハードリクト英語版 樫井笙人
ジーク・ボーデン エルヴィン・ダンデル 西凜太朗
ジェイク・ギャリソン アレクサンドル・ジョアナ 庄司由季
カルロス トマ・ダニラ 佐藤せつじ
ミミ・ロメロ ダイアナ・マンテーニュ ちふゆ
ヘクター セルバン・ジョルゲヴィッチ 一馬芳和
ボリス ゲル・ニトゥ 中村浩太郎
クラスティ ボリス・ペトロフ 赤城進
ダレン ラズヴァン・オプレア 中國卓郎
レイバーン先生 ナタリー・エスター 橘凜

バタリアン5[編集]

バタリアン5
Return of the Living Dead: Rave to the Grave
監督 エロリー・エルカイェム
製作 アナトリー・フラディス
スティーブ・スカルドゥッツィオ
製作総指揮 ウラジミール・ドスタル
トム・フォックス
ニコライ・マカロフ
出演者 ジョン・キーフ
ジェニー・モーレン英語版
クローデュ・ブリュオント英語版
音楽 ロバート・ダンカン
ラルフ・リッカーマン
撮影 トーマス・キャラウェイ
編集 ジェームズ・コブレンツ
配給 アメリカ合衆国の旗 SFチャンネル
日本の旗 アートポート、ギャガ・コミュニケーションズ
公開 アメリカ合衆国の旗 2005年10月15日
日本の旗 2006年10月28日
上映時間 94分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 バタリアン4英語版
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原題はReturn of the Living Dead: Rave to the Grave。前作同様、ルーマニアとウクライナで製作、2006年日本公開。前作で生き残った高校生たちが大学生となっており、『バタリアン4』の直接的な続編にあたる。前作でヒロインを演じていたジャナ・クレイマーが急病で降板したため、新たなヒロインとしてジェニー・モーレンが起用された。また本作において、かつて人気を博したゾンビ「タールマン」が復活している。

アメリカでは2005年10月15日、前作『バタリアン4』と共にケーブルテレビのSFチャンネルで初放送。2007年3月20日にR指定版のDVDが発売された。

ストーリー[編集]

ハイブラテック社の工場でのゾンビとの戦いで生き残ったジュリアンは大学生になっていた。

ある日、ジュリアンは叔父のチャールズが地下室に隠していたドラム缶に入ったトライオキシン5を見つける。化学に詳しい友人のコーディに調べてもらったところ、トライオキシン5はドラッグに転用できる事が判明。コーディはトライオキシン5を使ってZ(ズィー)というドラッグを作り出し、学生に売りさばいていく。Zは学生の間に広まっていき、次々とゾンビを生み出していく……

スタッフ[編集]

  • 監督 - エロリー・エルカイェム
  • 製作総指揮 - ウラジミール・ドスタル、トム・フォックス、ニコライ・マカロフ
  • 製作 - アナトリー・フラディス、スティーブ・スカルドゥッツィオ
  • 脚本 - ウィリアム・バトラー、アーロン・ストロンゴーニ
  • 撮影 - トーマス・キャラウェイ
  • 音楽 - ロバート・ダンカン 、ラルフ・リッカーマン

キャスト[編集]

役名 俳優 備考
ジュリアン・ギャリソン ジョン・キーフ
ジェニー ジェニー・モーレン英語版
ベッキー エイミー=リン・チャドウィック
コーディ コリー・ハードリクト
チャールズ ピーター・コヨーテ
アルド・セラ クローデュ・ブリュオント英語版
ジーノ ソリン・コシス
ジェレミー ケイン・マノリ ケイン・ミネア・マノリュ名義で出演
タールマン アラン・トラウトマン

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ ビデオ化されたDVDのパッケージの表紙より。

外部リンク[編集]

第1作[編集]

第2作[編集]

第3作[編集]

第4作[編集]

第5作[編集]