テキシルボラン

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テキシルボラン

テキシルボランの二量体
識別情報
CAS登録番号 3688-24-2, 37099-64-2
PubChem 単量体: 10877414
ChemSpider 単量体: 4483657
特性
化学式 C12H30B2
モル質量 195.99 g mol−1
外観 colorless liquid
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

テキシルボランは、化学式[Me2CHCMe2BH2]2(Me =メチル基) で表わされる無色の液体で、広義のボランの一つ。化学式はしばしばThxBH2と略記される。名称は「t-ヘキシルボラン」(ただしテキシルボランのアルキル基は標準的なtert-ヘキシル基とは異なる)に由来する。モノアルキルボランとしては例外的に入手が容易で、テトラメチルエチレン英語版ヒドロホウ素化により生成される[1]

B2H6+Me2C=CMe2[Me2CHCMe2BH2]2

反応[編集]

テキシルボランはin situ合成される。溶液中では、数日ほどで異性化を起こし、2,3-ジメチル-1-ブチル誘導体を生じる。単量体としてはこの反応は以下のように書ける。

Me2CHCMe2BH2→Me2CHCH(Me)CH2BH2

テキシルボランを存在下で2分子のアルケンカップリングさせ、カルボニル基となる一酸化炭素を作用させることにより、ケトンを合成することができる[1]

Me2CHCMe2BH2+ 2 RCH=CH2 → Me2CHCH(Me)CH2B(CH2CH2R)2 Me2CHCH(Me)CH2B(CH2CH2R)2+ CO + H2O → O=C(CH2CH2R)2 + ...

この試薬の重要な特徴として、テキシル基がホウ素原子から隣接原子へのアニオノトロピー1,2転移英語版をほぼ起こさないことが挙げられる[2]

出典[編集]

  1. ^ a b Negishi, Ei-Ichi; Brown, Herbert C. (1974). “Thexylborane-A Highly Versatile Reagent for Organic Synthesis via Hydroboration”. Synthesis 1974 (2): 77–89. doi:10.1055/s-1974-23248. 
  2. ^ Aggarwal, Varinder K.; Fang, Guang Yu; Ginesta, Xavier; Howells, Dean M.; Zaja, Mirko (2006-01-01). “Toward an understanding of the factors responsible for the 1,2-migration of alkyl groups in borate complexes” (英語). Pure and Applied Chemistry 78 (2): 215–229. doi:10.1351/pac200678020215. ISSN 1365-3075. https://www.degruyter.com/document/doi/10.1351/pac200678020215/html.