サーベル登録拒否事件

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最高裁判所判例
事件名  刀剣登録拒否処分取消
事件番号 昭和63(行ツ)163
1990年(平成2年)2月1日
判例集 民集第44巻2号369頁
裁判要旨
銃砲刀剣類登録規則四条二項が、銃砲刀剣類所持等取締法一四条一項の登録の対象となる刀剣類の鑑定基準として、美術品として文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定めていることは、同条五項の委任の趣旨を逸脱するものではない。
第一小法廷
裁判長 大内恒夫
陪席裁判官 角田礼次郎四ツ谷巖大堀誠一佐藤哲郎
意見
多数意見 大内恒夫、四ツ谷巖、佐藤哲郎
反対意見 角田礼次郎、大堀誠一
参照法条
銃砲刀剣類所持等取締法14条,銃砲刀剣類登録規則4条2項
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サーベル登録拒否事件(サーベルとうろくきょひじけん)とは、美術品としてのサーベルについて銃刀法に基づく所持登録を拒否されたことに関する、日本の訴訟[1]

経緯[編集]

日本の弁護士1981年1月ごろに旅行先のスペイングラナダの骨董品店でスペイン戦争の将校が使ったとみられるサーベル2本を購入し、日本へ帰国する際に新東京空港警察署(現:成田国際空港警察署)に仮領置した上で1982年10月に刀剣類として登録申請したが、同年11月に「銃砲刀剣類登録規則にいう刀剣類とは日本刀だけ」という理由で東京都教育委員会に申請を拒否された[2]。銃刀法では刀剣類の所持は原則的に禁止されているが、「美術品として価値のある刀剣類」と鑑定されたものについては、登録した上で所持することができるものの、銃砲刀剣類登録規則は「刀剣類」について日本刀であることを登録の要件としている[2]

この処分について弁護士は「銃刀法の登録の対象とする刀剣は『美術品として価値のある』ものであればよく、日本刀と外国刀剣を区別する理由はない」「日本国憲法第29条に規定された財産権日本国憲法第13条に規定された幸福追求権により、外国刀剣についてもできる限り所有権は尊重されるべきで、外国刀剣の所有者と日本刀の所有者との間に差別を生じさせるのは、日本国憲法第14条に規定された平等権に反する」と主張し、処分の取り消しを求めて訴訟を起こした[2]

1987年4月20日東京地方裁判所は原告の訴えを棄却した。原告は控訴したが、1988年8月17日東京高等裁判所は控訴を棄却。原告は上告した。

1990年2月1日最高裁判所第一小法廷は「文化財的価値のある刀剣類を日本刀に限るのは妥当。サーベルは含まれない。」との判断を示して上告を棄却し、原告の敗訴が確定した[3]。5人中3人の多数意見によるもので、角田礼次郎裁判官と大堀誠一裁判官は「外国刀剣を登録の対象から排除する合理的な理由はない」と反対意見を付けた[3]

脚注[編集]

  1. ^ 芝池義一 (2001), p. 36.
  2. ^ a b c 「サーベル、美術品扱いできぬ 東京地裁、所持認めず」『朝日新聞朝日新聞社、1987年4月21日。
  3. ^ a b 「「美術品」日本刀だけ サーベル持ち込み認めず 最高裁判決」『朝日新聞』朝日新聞社、1990年2月1日。

参考文献[編集]

  • 芝池義一 編『判例行政法入門』(第3版)有斐閣、2001年5月1日。ASIN 4641128995ISBN 4-641-12899-5NCID BA52025904OCLC 675313430全国書誌番号:20182358