ウェイヴァリー (ベルリオーズ)

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ベルリオーズ

序曲ウェイヴァリー』(フランス語: Grande Ouverture de Waverley)作品1b(H.26)は、フランスの作曲家エクトル・ベルリオーズ1826年から1828年にかけて作曲した管弦楽曲である。『ウェーヴァリー』とも表記される。なお、本作はオペラの序曲ではなく、演奏会用の序曲である。オペラ自体は存在しない[注釈 1]。母方の叔父であるフェリックス・マルミオン大佐に献呈された[2]

概要[編集]

ベルリオーズがウォルター・スコット歴史小説ウェイヴァリー英語版』(1814年)に想を得て作曲したもので、スコットの小説の主人公は17世紀イングランドと戦ったスコットランドの反逆者である。この曲は西洋音楽で初めての〈演奏会用序曲〉のひとつであり、また、初めてピストン付きトランペットを使った曲のひとつである[3]。初演は1828年5月26日パリ音楽院ホールにおいてブロックの指揮によって『宗教裁判官』など他の自作と共に行なわれた[2]

曲の構成[編集]

ラルゲットによる緩やかな導入部とソナタ的な3部形式によるアレグロによる2部構成である。ウェイヴァリー大尉の冒険物語の主題は総譜の冒頭に引用された2行の詩句「愛の夢と貴婦人の魅力は」と「名誉と武器にその席をゆずる」によって提示されている。前半の(愛の夢)がラルゲット、後半の(名誉と武器)がアレグロ・ヴィヴァーチェの部分を指す[4]。内容は未熟さを免れない点もあるが、力強さと、特にオーケストレーションに独創性がみなぎっているのが注目され、ラルゲットの導入部のチェロの旋律とアレグロ・ヴィヴァーチェの力強いリズム劇的な対比を示している[5]

編成[編集]

演奏時間[編集]

約11分。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ オペラの部分は恐らく1829年頃に破棄されたものと思われる[1]

出典[編集]

  1. ^ 『ベルリオーズ』(大音楽家人と作品〈16〉)P158
  2. ^ a b 『作曲家別名曲解説ライブラリー19ベルリオーズ』P55
  3. ^ 『ラルース世界音楽事典』P47
  4. ^ 『作曲家別名曲解説ライブラリー19ベルリオーズ』P56
  5. ^ 『ベルリオーズ』(大音楽家人と作品〈16〉)P159

参考文献[編集]

  • 『ラルース世界音楽事典』福武書店
  • 『作曲家別名曲解説ライブラリー19ベルリオーズ』音楽之友社(ISBN4276010594)
  • 『回想録』〈1〉及び〈2〉ベルリオーズ(著)、丹治恒次郎(訳)、白水社(ASIN:B000J7VJH2)及び(ASIN:B000J7TBOU)
  • 『ベルリオーズ』(大音楽家人と作品〈169〉、久納慶一(著)、音楽之友社(ASIN:B000JA6DPW)

外部リンク[編集]