アウトロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アウトロン: outron)は、mRNAの成熟過程において、特殊な形態のRNAスプライシングトランススプライシング)によって遺伝子一次転写産物の5'末端から除去されるヌクレオチド配列である[1]イントロン配列は遺伝子内に位置するのに対し、アウトロン配列は遺伝子外に位置する[2]

特徴[編集]

アウトロンは、GC含量など類似した特性を有するイントロン様配列であり[3]、トランススプライシングのためのシグナルとなるスプライス受容部位である[4][5]。こうしたトランススプライス部位は、本質的には上流のスプライス供与部位(5'部位)を持たないスプライス部位(3'部位)として定義される。

こうしたスプライス受容部位は、スプライスリーダー(SL)RNAと呼ばれる異なるRNA分子上に存在する供与部位と連結される。ユーグレノゾア渦鞭毛藻海綿動物線形動物刺胞動物有櫛動物扁形動物甲殻類毛顎動物輪形動物尾索動物などの真核生物では、SL RNA全体の長さは46–141ヌクレオチド、SLエクソンの長さは16–51ヌクレオチドである[3]

プロセシング[編集]

標準的なスプライシング(シススプライシング)では、同じpre-mRNA分子内に上流のスプライス供与部位と下流のスプライス受容部位が必要である。対照的にSLトランススプライシングではpre-mRNAのアウトロンに3'受容部位が存在し、そしてSL RNA上に5'供与部位(GUジヌクレオチド)が存在する[3]。pre-mRNA側のアウトロンには分岐点となるアデノシン、そしてそれに続いてポリピリミジントラクト英語版が存在し、この部分がSL RNAのイントロン様部分と相互作用して、シススプライシングの際に形成されるラリアット構造と類似したY字型構造が形成される。その後SL RNAがpre-mRNAの3'スプライス受容部位(AGジヌクレオチド)へ作用して成熟mRNAとY字型副産物が形成される[2]

SLエクソンはポリシストロン型pre-mRNA上の各オープンリーディングフレームへとトランスプライシングされ、それぞれ異なる成熟型転写産物が形成される[6][7][8]

出典[編集]

  1. ^ Conrad, Richard; Fen Liou, Ruey; Blumenthal, Thomas (1993-02-25). “Functional analysis of a C. elegans trans-splice acceptor” (英語). Nucleic Acids Research 21 (4): 913–919. doi:10.1093/nar/21.4.913. ISSN 0305-1048. PMC 309224. PMID 8451190. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC309224/. 
  2. ^ a b Stover, Nicholas A.; Kaye, Michelle S.; Cavalcanti, Andre R. O. (2006-01-10). “Spliced leader trans-splicing” (English). Current Biology 16 (1): R8–R9. doi:10.1016/j.cub.2005.12.019. ISSN 0960-9822. PMID 16401417. 
  3. ^ a b c Lasda, Erika L.; Blumenthal, Thomas (2011-05-01). “Trans-splicing” (英語). Wiley Interdisciplinary Reviews: RNA 2 (3): 417–434. doi:10.1002/wrna.71. PMID 21957027. 
  4. ^ Oxford reference — Outron”. 2019年9月26日閲覧。
  5. ^ The MISO Sequence Ontology Browser — Outron (SO:0001475)”. 2019年9月26日閲覧。
  6. ^ Clayton, Christine E. (2002-04-15). “Life without transcriptional control? From fly to man and back again” (英語). The EMBO Journal 21 (8): 1881–1888. doi:10.1093/emboj/21.8.1881. ISSN 1460-2075. PMC 125970. PMID 11953307. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC125970/. 
  7. ^ Blumenthal, Thomas; Gleason, Kathy Seggerson (February 2003). “Caenorhabditis elegans operons: form and function” (英語). Nature Reviews Genetics 4 (2): 110–118. doi:10.1038/nrg995. ISSN 1471-0056. PMID 12560808. 
  8. ^ “Evolutionary Insights into RNA trans-Splicing in Vertebrates”. Genome Biology and Evolution 8 (3): 562–77. (March 2016). doi:10.1093/gbe/evw025. PMC 4824033. PMID 26966239. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4824033/. 

関連項目[編集]