エストニアeIDカード
エストニアeIDカード(英語: Estonian ID card、エストニア語: Eesti ID-kaart)は、エストニアの国民ID(国民識別番号)カード。
1997年にeIDカードプロジェクトがスタートする[1]:9。2000年3月にはエストニア政府によってeIDカードの発行が決定され、2002年1月よりeIDカードの発行が開始された[1]:9。2007年時点ではエストニアの人口約135万人に対し、約100万枚のeIDカードが発行されている[1]:9。
発行対象者は、エストニア国民およびエストニアへの移住者である[1]:10。カードの発行はTrüb AG(スイスアーラウ)が行っている[1]:10。
データ交換基盤として、X-Roadが整備されている[1]:15。
eIDカードの内部スペック詳細は、開発者向けにWebサイトを通じて公開されており、eIDカードで利用する標準ソフトやドライバーソフト向けに、オープンな開発環境を提供されている[2]。
eIDカードの情報がハッキングされたり、電子署名が偽造された事例は、2016年時点では発生していない[3]。
eIDカードの情報
[編集]eIDカードの表側、裏側には以下の項目が印刷、印字されているほか、ICチップに電子データが格納されている[1]:11-13。
- カード表側の印刷、印字項目
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- カード所有者の顔写真
- カード所有者の自筆署名
- カード所有者の氏名
- カード所有者の国民ID番号
- カード所有者の生年月日
- カード所有者の性別
- カード所有者の市民権
- カード番号
- カードの有効期限
- カード裏側の印刷、印字項目
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- カード所有者の出生地
- カードの発効日
- その他、居住許可に関する項目など
- 表裏の印刷データを機械に読み取り可能なフォーマットに変換した文字列
- ICチップ格納の電子データ
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- 認証用の電子証明書
- 公的メールアドレスを含む
- 署名用の電子証明書
- カード所有者の氏名とカード所有者の国民ID番号を含む
- 認証用の電子証明書
- 項目の説明[1]:14
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- 国民ID番号
- 出生時に割り振られる一意の国民識別番号。
- 性別(1桁)+生年月日(6桁)+数値(4桁)の11桁。
- 公的電子メールアドレス
- 任意に登録したメールアドレス(最大5箇所)へ転送される。
- 名前.苗字_XXXX@eetsi.ee の形式であり、XXXXはランダムな数値。
- 電子証明書
- 主に政府関係で利用されるが、銀行などでも利用されている。
- 年間20ユーロの費用負担があり、その内の10ユーロは政府負担で、個人負担が年間10ユーロ。
eIDカードの利用事例
[編集]eIDカードを所持し提示する(券面の表記情報の確認、またはICチップの格納データの確認)によって、以下のような証明書類の代わりに利用できる。
- EU内パスポート[1]:17
- 公的身分証明書[1]:17
- 運転免許証[1]:17
- 公共交通機関における購入済の電子チケット[1]:17
- 健康保険証[1]:17
- 電子投票における投票券[1]:17[2]
- 会社の登記[2] - eIDカードまたはeレジデンシーカード(後述)の所持者が平均的な企業を設立するのに、最短で9分25秒。一般的な起業に必要な時間は18分と言われる[5]。
eレジデンシーカード
[編集]eレジデンシーカードは、非居住者向けに、オンライン上でeIDカード相当の電子認証が可能になるように、エストニア政府が所有者にID番号を提供するためのカード[4]。2014年12月より発行を開始した[4]。
所有者の国籍や居住する場所とは関係なく、所有者の写真もカードには掲示されない[4]。居住許可証ではなく、身分証明証としても使用できない[4]。
2015年末には、119か国から7000人以上にeレジデンシーカードが発行された[4]。2019年8月末時点で59000人のeレジデンシーが登録されており、7000社ほどの会社がeレジデンシーを通してエストニアに登記されている。
出典
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k l m n 次世代電子商取引推進協議会 (1 February 2007). エストニアIDカードの利用状況 (PDF). 公的個人認証サービスの利活用のあり方に関する検討会 第3回. 総務省. p. 28. 2018年3月23日閲覧。
- ^ a b c 大豆生田崇志, 清嶋直樹 (2017年2月17日). “マイナンバーを有効活用したいなら、仕様のオープン化を急げ”. 日経BP. 2018年3月23日閲覧。
- ^ “世界はITによる第3次産業革命のまっただ中!(前)”. データ・マックス (2016年10月31日). 2018年3月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 前田陽二 (2016年3月2日). “エストニアの電子政府と日本の未来への提言”. SYNODOS. 2018年3月23日閲覧。
- ^ ラウル・アリキヴィ, 前田陽二「コラム:ラウル氏の体験〜会社設立〜」『未来型国家エストニアの挑戦: 電子政府がひらく世界』インプレス、2016年。ISBN 978-4844397502。