電子悲劇/〜ENOLA

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電子悲劇/~ENOLA
P-MODELスタジオ・アルバム
リリース
録音 MASTER RECORDING STUDIO
INTERNAL STUDIO
STUDIO PARKSIDE
ジャンル テクノポップ
ワールド・ミュージック
レーベル 日本コロムビア/TESLAKITE
プロデュース P-MODEL
P-MODEL アルバム 年表

1995年
電子悲劇/~ENOLA
1997年
VIRTUAL LIVE1 Live at Roppongi S-KEN Studio 1979
1999年
平沢進関連のアルバム 年表
SIREN
(1996年)
電子悲劇/〜ENOLA
(1997年)
救済の技法
1998年
『電子悲劇/~ENOLA』収録のシングル
  1. Rocket Shoot
    リリース: 1996年10月19日
  2. ASHURA CLOCK
    リリース: 1997年8月1日
  3. LAYER-GREEN
    リリース: 1997年8月30日
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電子悲劇/~ENOLA(でんしひげき/エノラ)は、日本の音楽グループであるP-MODELの11枚目のスタジオ・アルバム

1997年11月29日日本コロムビアより発売された。アメリカ最大の音楽レビューサイト、「Rate Your Music」の『史上最高の日本の音楽アルバム』にて16位[1]

2009年10月11日オンデマンドCDとして再発売し、2011年9月21日にはデジタルリマスタリングされた上、シングル「ASHURA CLOCK」「LAYER-GREEN」収録の計6曲が追加されて「電子悲劇/~ENOLA (+6)」として再発売されている。

概要[編集]

ドラムスの上領亘脱退後、三人体制となったP-MODELの初アルバム。P-MODELの作品としては珍しく、平沢進・小西健司が各4曲、福間創が3曲と、メンバー全員がバランスよく作曲している[2]

ハードディスクレコーダー(ローランド・VS-880)を導入し、タイでのレコーディングも行った[3]

オリジナル版はCD-EXTRA仕様となっており、1997年に行われたライブ『非局所性LIVE』のダイジェスト映像と後述する物語が閲覧できる。

物語について[編集]

マキシシングル『ASHURA CLOCK』、『LAYER-GREEN』より、「インターネット・オリエンテーション」と題し、リスナー参加型企画『レイヤー・グリーンの危機 -議定書(プロトコル)を探せ-』がスタート[4]する。

この企画はP-MODELのメンバーとリスナーが主人公となったSF物語であり、本作はこの物語のサウンド・トラックのような内容になっている[5]。楽曲のタイトルや歌詞も物語のキーワードや登場する人物や物体となっている。

シングル二作と本作はCDのデータ部に物語が書かれたHTMLファイルが収録されており、リスナーはストーリーに沿って、QuickTimeまたはShockWaveを用いた映像や謎解きゲームを楽しめる内容となっている。

物語に至るまでの経緯[編集]

前作『舟』、ライブツアー『電子舟訪日行脚』から引き続き「情報電子帆船P-MODEL号がサイバー・スペースへ旅に出る」というストーリーが続いている。

1996年10月、日比谷野外音楽堂にて行われたライブイベント『Branch-O』にて、P-MODEL号は"不定形巡航体制"に移行する事を発表。この公演をスタート地点として、各メンバーがそれぞれ分かれてソロ活動を行う『Unfix』プロジェクトが開始。このプロジェクトはマキシ・シングル「Unfix#1 Rocket Shoot」から始まり「Unfix #8」にてメンバーが集結し終了する予定であった[3]

同年11月に新宿・LIQUIDROOMにて開催されたオールナイト・イベント「Unfix #3 コミュノ・ハイブリディア」にてメンバーが一時集結し、各々ソロでのパフォーマンスが行われる予定だったが、当日になり急遽平沢が欠席。不完全な状態で公演は行われたが、その後に予定していたイベント「Unfix #5 ススムとケンジ」も公演中止となる。

翌年の1997年にはメンバーの上領が航路を変更(脱退)した事を発表し[6]、三人体制となった事で「Unfix」プロジェクトは計画を変更となる。「Unfix #8」がマキシ・シングル『ASHURA CLOCK』、「Unfix #9」が追加され、マキシ・シングル『LAYER-GREEN』となった。

物語のあらすじ[編集]

『Unfix#1 Rocket Shoot』・『Unfix #3 コミュノ・ハイブリディア』[編集]

コミュノ・ハイブリディア島の電子部族との交流をしたP-MODEL号船員達。部族から電子の海洋に支流があることを聞く。船員達は各自で支流の調査を実施し、やがて「緑の領域」の存在について知る。

『Unfix #8 ASHURA CLOCK』[編集]

「緑の領域」の調査を進めた船員達は、「緑の領域」がサイバー・スペースの楽園である「レイヤー・グリーン」であることが判明する。しかし、そこへ入るには「非線型方程式」を解かなければならなかった。これらを解析したP-MODEL号はレイヤー・グリーンへ突入するが、その際にトラブルが発生してしまう。トラブルによって「モノクロの丘」へと不時着した船員達は「5DEM」の導きによりレイヤー・グリーンを目指すのだった。

一方で振動性の病原体である「ENOLA」が突入時のトラブルによって誕生し、瞬く間にレイヤー・グリーンに蔓延してしまう。

『Unfix #9 LAYER-GREEN』[編集]

5DEMの導きにより様々な困難を乗り越えた船員達はレイヤー・グリーンに無事に到着。ここでは奇妙な部族が平和に暮らしていた。船員達は電子僧侶の使いの猿である「4DEM」と出会い、4DEMと共にレイヤー・グリーンを救う旅が始まった。「非局所性農民を訪ねよ」という5DEMの思念を取ったP-MODELと4DEMは農民の住む地域へタクシーで向かった。

しかし、タクシーは事故を起こしてしまい、タクシードライバーは死亡。このタクシードライバーは5DEM自身だったのである。

『万国点検隊 非局所性緑色免疫団』[編集]

ENOLAの調査を進めていた船員達は、巨大な商用ネットワークを管理している「マクロソフト社」がENOLAを利用した人体実験の陰謀を知る。

マクロソフト社はENOLAを利用して全世界のコンピューターを自社製のホストパソコンへ従属させる計画を立てていた。マクロソフト社はP-MODELのデータベースに侵入し、社名を偽り旅行の案内状を送付。案内状を受け取った者達は「P-MODELにワクチンを届けよう」との触れ込みで「非局所性緑色免疫団」を結成し、インドネシアバリ島を舞台に様々なイベントに参加することとなった。

様々な試練を乗り越えた免役団はENOLA予防薬を作製する事に成功。免役団全員が予防薬を服用して帰国していったが、数日後、免疫団全員がENOLAに感染していた事が判明する。

『電子悲劇/~ENOLA』[編集]

死んでしまった5DEMの断片「Pragma」を集めた船員達はそこに書いてある文字を唱えれば5DEMは復活するとして、非局所性農民の住む村でキーワードを唱えた。

しかし、農民たちにもENOLAの症状が現れる。一刻も早く「COOSHINプロトコルの書」を探し出さなければいけない状況に陥ったP-MODELは、ある老人から「BLACK IN WHITE」に乗って「COLOR-ZERO」に行けばプロトコルの書が見つかると聞く。P-MODELはBlack in White船団とCOLOR-ZEROへ航海の旅へと出た。

補足[編集]

この物語は、シングル・アルバム・ライブの他、万国点検隊[7]やインターネット上のやりとりでストーリーが繋がるという試みが行われた。

インターネット上の参加者は「オンライン・ヴォイジャー」と名付けられ、P-MODEL号も彼らを含む船団「Black in White船団」として物語が進んでいった。

ライブツアー『LIVE 電子悲劇』では、病原体ENOLAに侵されたレイヤーグリーンを救うプロトコルを探すため、P-MODEL号がCOLOR-7からCOLOR-0に向かうとの触れ込みでツアーが開始。ストーリーの結末はツアー最終日『LIVE電子悲劇 COLOR-0』でのみ説明されたため、ストーリーの全貌は不明であったが、2010年にP-MODEL30周年・ソロ20周年特設サイト「凝縮する過去 還弦主義8760時間」で閲覧できた(2020年9月現在、サイトは休止中となっている)。

収録曲[編集]

  1. ENOLA
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
    タイトルはALONE(孤独)の倒語。これとは別に「病」をテーマとしており、「レイヤーグリーンの危機」や「LIVE電子悲劇」でも病原菌の名として登場する。
  2. HIDDEN PROTOCOL(release 2)
    • 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
    シングルバージョンにあったイントロのドラムが無くなっている他、間奏のドラムソロがステレオ再生される。
  3. BOGY
    • 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
    サビ以外は福間が歌唱を担当している。
  4. Rocket Shoot Ⅱ
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
    • シングルバージョン「Rocket Shoot」とはボーカルパートが大きく異なる。
  5. ENN
    • 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
    メインボーカルは小西。平沢はサビの一部分で小西とは違う歌詞を同時に歌っている。
  6. 衛星ALONE - Satellite ALONE
    • 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
    オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダーククラフトワークのオマージュとなっており、福間が作り上げたデモを初めて聞いた際の小西の印象は「おぉOMD」だった[8]。後にデモ音源は福間によってSoundCloudで公開されている[9]
  7. LAYER-GREEN(ver.1.05 Gold)
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
    シングルバージョンの間奏ではキーボードがメインであったが、こちらではギターがメインで演奏されている。
  8. Spiritus
    • 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
  9. ASHURA CLOCK(Discommunicator)
    • 作詞:平沢進/作曲:平沢進・福間創/編曲:P-MODEL
    シングルバージョンよりも若干短くなっている。
    歌詞の一部に人身売買を連想させるフレーズがあり、レコード制作基準倫理委員会に指摘されたため当て字となっている。
    福間の連絡ミスからギターソロ部分に歌詞を入れてしまったため、制作段階では幻の4番が存在した[10]
    2010年に平沢ソロ作品としてリメイクされ、「突弦変異」に収録された。こちらは平沢の作曲とされている。
  10. Black in White
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
    ガムランをサンプリングしている。平沢は1996年末に体調を崩した後、休養でバリ島に行った際に影響を受けたと語る[3]
  11. A Strange Fruit
    • 作曲:小西健司/編曲:P-MODEL

電子悲劇/~ENOLA (+6)[編集]

  1. ASHURA CLOCK
    • 作詞:平沢進/作曲:平沢進・福間創/編曲:P-MODEL
  2. COLORS
    • 作詞:福間創・平沢進/作曲:福間創/編曲:P-MODEL
    オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークのオマージュ。
    平沢が福間に「OMDとか好き?」と訊いていた事がきっかけで、エレポップのようなものを作曲したと語る[3]
  3. HIDDEN PROTOCOL
    • 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL
  4. LAYER-GREEN
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
  5. BA-DA-DHA
    • 作詞・作曲:平沢進/編曲:P-MODEL
  6. AFFIRMATION
    • 作詞・作曲:小西健司/編曲:P-MODEL

参加ミュージシャン[編集]

脚注・注脚[編集]

  1. ^ Electropop - Music genre - RYM/Sonemic” (英語). Rate Your Music. 2021年11月5日閲覧。
  2. ^ P-MODELディスコグラフィー・電子悲劇/~ENOLA|平沢進 Susumu Hirasawa (P-MODEL) Official site”. susumuhirasawa.com. 2020年6月19日閲覧。
  3. ^ a b c d 改訂復刻版音楽産業廃棄物. ブッキング. (2005) 
  4. ^ P-model レイヤーグリーンの危機”. 1997年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月8日閲覧。
  5. ^ 電子悲劇/~ENOLA (+6) | ディスコグラフィ | P-MODEL | 日本コロムビアオフィシャルサイト”. 日本コロムビア公式サイト. 2020年9月8日閲覧。
  6. ^ (なし)” (1997年5月25日). 1997年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月19日閲覧。
  7. ^ 当時行われていたファンクラブ旅行。毎回とあるストーリーが存在し、要所で発生するイベントに参加する企画。要所でメンバーが登場し、ファンとの交流を図った。前年までは平沢ソロだったが、1997年度は「レイヤー・グリーンの危機」の一環としてP-MODELがメインだった。
  8. ^ https://twitter.com/4_d_mode_1/status/936137816261529600”. Twitter. 2020年9月8日閲覧。
  9. ^ EiseiAlone Demo1996”. SoundCloud. 2023年1月20日閲覧。
  10. ^ 2010/4/7 福間創「アシュラクロック」裏話”. Togetter. 2020年6月19日閲覧。

関連リンク[編集]