阿部健治郎

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 阿部 健治郎 七段
名前 阿部 健治郎
生年月日 (1989-02-25) 1989年2月25日(35歳)
プロ入り年月日 2009年10月1日(20歳)
棋士番号 277
出身地 山形県酒田市
所属 日本将棋連盟(関東)
師匠 西村一義九段
段位 七段
棋士DB 阿部 健治郎
戦績
一般棋戦優勝回数 1回
2022年3月4日現在
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阿部 健治郎(あべ けんじろう、1989年2月25日 - )は、将棋棋士西村一義九段門下。棋士番号は277。山形県酒田市出身。血液型はB型。

棋歴[編集]

5歳の頃、父親と兄が将棋を指しているところを見て、自然と覚える[1]。小学1年の時から土岐田勝弘アマ八段(棋道師範)[2]が地元で主宰する土岐田将棋道場に通う[2]

2001年、酒田市立第三中学1年生のときに第22回全国中学生選抜将棋選手権大会[注釈 1]で準優勝[3][4]。翌2002年に奨励会入会試験で合格し入会。三段昇段までは3年で駆け抜けたが、三段リーグでややもたつき四段昇段には8期(4年間)を要した。なお、酒田南高等学校を卒業後上京している[2]

2009年10月にプロ入り後は一転して快進撃を見せ、初参加の第23期(2010年度)竜王戦(竜王ランキング戦6組)では準優勝し、1期で5組昇級(プロ入りから最短タイ)を決める。第41期新人王戦でも決勝進出し、決勝三番勝負では史上初めてアマチュアで決勝進出した加來博洋を2勝1敗で下し、棋戦初優勝を果たした。また、第19期銀河戦では予選を突破すると、本戦のEブロックで7連勝を決め決勝トーナメントに進出した(1回戦で羽生善治に敗れる)。

2011年度は、第24期竜王戦5組ランキング戦でベスト4進出、昇級者決定戦でも勝利して4組に昇級し、竜王戦連続昇級で五段に昇段した。第70期順位戦C級2組では10戦全勝でC級1組への昇級を決める。

2015年には第41期棋王戦にて予選から勝ち上がり挑戦者決定トーナメントに進出。トーナメントでも名人含む4冠の羽生善治やA級棋士である久保利明広瀬章人らを破りベスト4入り。この羽生を破った一局が将棋大賞の名局賞特別賞に選ばれた。

また、同年の第28期竜王戦においては、3組昇級者決定戦にて3位に入り2組昇級が決定。自身の段位も六段に昇段。さらに翌2016年第29期竜王戦・2組ランキング戦準決勝にて松尾歩に勝利し、竜王戦1組昇級が決定(ランキング戦決勝では郷田真隆に敗れ準優勝。本戦では3組優勝者の永瀬拓矢に勝利するが、準々決勝で1組3位の久保利明に敗北)。六段昇段から僅か半年足らずで七段にスピード昇段を果たした。竜王戦では2021年現在まで1組に所属・活躍していて、31期~33期と35期では5位決定戦の1回戦で高橋道雄丸山忠久・広瀬章人・佐々木勇気にそれぞれ勝利しており、錚々たる面子[注釈 2]を2組へ降級させている。

2017年5月から活動の拠点を東京から故里の酒田に移した[5]

2020年、第61期王位戦では予選を勝ち抜き、初の王位リーグ入り。しかし、5戦全敗での陥落となった。

棋風[編集]

居飛車党で、どちらかといえば攻め将棋である。

人物・エピソード[編集]

  • 山形県出身の将棋のプロ棋士は、1983年の飯田弘之以来26年振りで、奨励会員時代は実家から東京の将棋会館に通っていた。
  • プロ入りの時、尊敬する棋士について問われた際、藤井猛三浦弘行中座真を挙げている[1][注釈 3]。このうち藤井と三浦の2名は同じ西村門下の兄弟子であり、タイトル獲得経験者でもある。
  • 兄弟子同様、序盤の研究家として知られ、阿部の考えた新手がトップ棋士に採用されることも多い。代表的な例は、第21期竜王戦第7局において、渡辺明竜王が採用した阿久津流急戦矢倉渡辺新手3三銀などがある。阿部自身も「新手を発信する立場でいたい」と発言している[6]
  • 2010年1月5日夜、ネット将棋サイト「将棋倶楽部24」で新年特別企画として里見香奈との対局が行われた。戦型は、里見の振り飛車に対して阿部の居飛車穴熊。結果は阿部の勝ち。
  • 兄も将棋が強く、中学校時代に山形県大会で3連覇を果たしている。その後も、東北でコンスタントに上位の成績を残している。
  • 2021年4月より仙台市に開設される日本将棋連盟「東北研修会」の幹事を東北出身棋士等(中川大輔佐藤秀司熊坂学加藤結李愛=指導担当)と務める[7]
  • 連盟が対局者のマスク着用を義務化、マスクなしは反則負けにするとした事に「マスクを対局中にしても効果があるかは疑問である」と反対意見を述べている[8]。なお山形県や鶴岡市・酒田市などでは「マスクをつけられない方へのご理解をお願いします」と広報で謳っている[9]

昇段履歴[編集]

昇段規定は、将棋の段級 を参照。

  • 2002年09月00日 : 6級 = 奨励会入会
  • 2005年09月00日 : 三段(第38回奨励会三段リーグ<2005年度後期>から三段リーグ参加)
  • 2009年10月01日 : 四段(第45回奨励会三段リーグ<2009年度前期>成績2位) = プロ入り
  • 2011年11月01日 : 五段(竜王ランキング戦連続2回昇級、通算53勝21敗)
  • 2015年11月05日 : 六段(竜王戦2組昇級、通算150勝79敗)
  • 2016年04月22日 : 七段(竜王戦1組昇級、通算160勝86敗)

主な成績[編集]

棋戦優勝[編集]

優勝合計 1回

在籍クラス[編集]

順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始
年度
(出典)順位戦 (出典)竜王戦
名人 A級 B級 C級 0 竜王 1組 2組 3組 4組 5組 6組 決勝
T
1組 2組 1組 2組
2009 68 昇段前 23 6組 --
2010 69 C240 24 5組 --
2011 70 C205 25 4組 --
2012 71 C128 26 4組 --
2013 72 C107 27 3組 --
2014 73 C120 28 3組 --
2015 74 C107 29 2組 --
2016 75 C110 30 1組 --
2017 76 C107 31 1組 --
2018 77 C108 32 1組 --
2019 78 C105 33 1組 --
2020 79 C106 34 1組 --
2021 80 C117 35 1組 --
2022 81 C123 36 1組 --
2023 82 C108 3-7 37 2組 --
2024 83 C127 38
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。
順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 )
順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。
竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。

将棋大賞[編集]

  • 第43回(2015年度) 名局賞特別賞(第41期棋王戦挑戦者決定トーナメント準々決勝・対羽生善治名人)

著書[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「全国中学生選抜将棋選手権大会」は、阿部の地元である山形(但し天童市)で行われるが、全国からの代表選手が集まる([1](全国中学生選抜将棋選手権大会 - 日本将棋連盟)。優勝者だけに限らずプロ棋士を多数輩出している([2]本大会出場のプロ棋士)
  2. ^ 高橋は第1期竜王戦での1組所属者としては、唯一の1組在籍者だった。丸山は1組のランキング戦優勝回数が歴代最多の5回であり、1組に21期連続で在籍していた。広瀬は前期(32期)の竜王保持者だった(前々期(31期)で1組ランキング戦を優勝、そのまま挑戦者となり羽生善治竜王(当時)からタイトルを奪取)。
  3. ^ 3名とも升田幸三賞受賞者である。

出典[編集]

  1. ^ a b 新四段誕生のお知らせ(日本将棋連盟)
  2. ^ a b c “阿部さん(酒田出身)プロ棋士に 県内から26年ぶり、地元で祝賀会”. 荘内日報. (2009年10月12日). http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2009:10:12:3012 2017年9月21日閲覧。 
  3. ^ 第22回全国中学生選抜将棋選手権大会男子決勝トーナメント(日本将棋連盟)
  4. ^ 第37回全国中学生選抜将棋選手権大会で優勝 渡邉 東英くん - 山形のフリーペーパー やまがたコミュニティ新聞 ONLINE”. www.yamacomi.com. 2022年8月8日閲覧。
  5. ^ “酒田から高みへ一手 将棋・阿部健治郎七段、故郷に拠点”. 山形新聞. (2017年7月21日). http://yamagata-np.jp/news/201707/21/kj_2017072100466.php 2017年9月21日閲覧。 
  6. ^ 将棋世界2012年5月号p.139
  7. ^ 日本将棋連盟東北研修会 開設のお知らせ - 日本将棋連盟(2020年11月17日)
  8. ^ 週刊文春』令和4年2月24日号「『マスクをはずすと負け』将棋新ルールに反対棋士の言い分」
  9. ^ 山形県庁・広報web・ 障がい者福祉「マスクをつけたくてもつけられない方がいます」(2021年9月21日)など

関連項目[編集]

外部リンク[編集]