菜の花の沖

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菜の花の沖』(なのはなのおき)は司馬遼太郎長編小説で、1979年4月1日から1982年1月31日まで1014回に亘って、『産経新聞』に連載された[1]

概要[編集]

江戸時代廻船商人である高田屋嘉兵衛を主人公とした歴史小説で、司馬作品としては珍しく民間人が主人公になっている[1]。この作品は、歴史小説の体裁をとりつつも、作者独自の歴史観による解説を折り込んだ構成を特徴としており、後期作品である本作は、近世社会の社会経済や和船の設計・航海術をはじめ随所で思弁的に史論を述べつつ、後半で主人公が当事者となるゴローニン事件へ至る背景事情(日露関係史への知見)と共に、物語が進行する構成である。クルーゼンシュテルン の航海回想録を少年時代から愛読した司馬は、本書を書くにあたって、そのロシア皇帝が皇帝使節としてレザノフ(その乗船の船長がクルーゼンシュテルン)を長崎に派遣した航海の「経緯を徹底して調べた」[2]

2月12日の命日「菜の花忌」は、タンポポや菜の花などの黄色い花が好きで、この作品の由来になっている[3]

1999年4月から2001年3月までジェームス三木脚本でわらび座にて舞台化され全国公演で行われた[4]1985年度の大河ドラマの候補となったこともある。

刊行書誌[編集]

  • 『菜の花の沖』 文藝春秋(全6巻)、1982年5月 - 11月
  • 『菜の花の沖』 文春文庫(全6巻)、1987年3月‐5月、新装版2000年9月
  • 『司馬遼太郎全集 42・43・44 菜の花の沖』 文藝春秋、1984年

テレビドラマ[編集]

NHK放送75周年を記念で連続テレビドラマ化、2000年12月BSハイビジョンで放送された。2001年にはNHK総合テレビでも放送された。2006年には時代劇専門チャンネルで放送された。2023年6月~7月にNHKBSプレミアムで放送された。

ストーリー[編集]

キャスト[編集]

ほか

スタッフ[編集]

サブタイトル[編集]

括弧内はNHKでの放送日。

  1. 果てしなき夢(NHK BS:2000年12月4日、NHK総合:2001年1月4日)
  2. 大海原へ(NHK BS:2000年12月5日、NHK総合:2001年1月13日)
  3. 海の王者(NHK BS:2000年12月6日、NHK総合:2001年1月20日)
  4. はるかなるカムチャツカ(NHK BS:2000年12月7日、NHK総合:2001年1月27日)
  5. さらば、異国の友よ(NHK BS:2000年12月8日、NHK総合:2001年2月3日)

作品論[編集]

  • 塩見英治『司馬遼太郎『菜の花の沖』と北前船』風詠社、増補版2022年。ISBN 4434305980

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 松坂健 (2018). 司馬遼太郎全小説徹底ガイド. メディアックス. p. 84. ISBN 978-4-86674-022-5 
  2. ^ 関川夏央『「解説」する文学』岩波書店 2011年 (ISBN 978-4-00-025824-1) 218-219頁。
  3. ^ 司馬遼太郎記念館(菜の花忌シンポジウム)
  4. ^ 高田屋顕彰館・歴史文化資料館(高田屋嘉兵衛の検証活動)
  5. ^ 鶴田真由 - NHK人物録

外部リンク[編集]