花山温泉

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花山温泉
温泉情報
所在地 和歌山県和歌山市鳴神574
交通 和歌山駅よりバスで約15分で最寄バス停へ。そこから徒歩約10分。
泉質 塩化物泉
泉温(摂氏 25.2 
湧出量 毎分118 L(掘削自噴だが、間欠的な自噴であり、一定速度ではない。)
pH 6.3
液性の分類 中性[注釈 1]
浸透圧の分類 高張性
宿泊施設数 1
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花山温泉入り口

花山温泉(はなやまおんせん)は、和歌山県和歌山市鳴神574の地下を掘削した結果、得られた温泉である。

泉質[編集]

花山温泉の泉質は、主要な陰イオンとして塩化物イオンを含有した、塩化物泉に分類される温泉である。ただ、二酸化炭素が2.631 (mg/kg)遊離してくる程に、二酸化炭素を多く含有しているため、この二酸化炭素が地下で溜まって、圧力が上昇する事により、地下から間欠的に自噴している [1] 。 さらに、主要な陽イオンとして、カルシウムやマグネシウムなども含有しているため、泉質表示では「含二酸化炭素・鉄 - カルシウム・マグネシウム - 塩化物泉」などと表示されている。その温泉水中の溶存物質の総量は、19.75 (g/kg)に達する [1] [注釈 2] 。 このような泉質であるため、地上に噴出後には二酸化炭素が大気中へと散逸するため、石灰華が風呂などに析出する [1] [注釈 3] 。 ただし、鉄イオンも含まれているため、それが大気中の酸素によって酸化されて、酸化鉄に変化するため、この石灰華は赤褐色を呈する。これに対して、地下の貧酸素の状態では、酸化鉄が生成し難いため、地下から噴出した直後の湯色は、薄い黄色と、色が異なる。

なお、飲泉も可能だが、マグネシウムの苦味が強く [注釈 4] 、鉄も含有されているために鉄の味もするため、その不味さは国見温泉と並んで有名である。

温泉地[編集]

花山温泉は、海岸まで続いている紀ノ川の河口部の沖積平野と、その東側の丘陵地とが接する付近に位置している [1] 。 また、阪和自動車道沿いの西側に有り、阪和自動車道を挟んで東側には、花山と呼ばれる標高77 mの山も有る。この花山の南麓は、花山団地として宅地整備された。花山温泉には、一軒宿の「花山温泉」が存在し、鳴神貝塚と隣接している [2] [注釈 5]

風呂[編集]

宿泊利用以外に、日帰り入浴も受け付けている。温泉水には溶存物質が多く、湯口や風呂には湯の華が析出し、付着している。なお、源泉温度そのままの低温浴槽と、加熱した浴槽とが設けられており、これらを交互に入浴する事も可能である。

アクセス[編集]

鉄道では、日前宮駅が最寄り駅であり、そこから東北東に約1.2 km程度の距離である。なお、和歌山駅から見ると、ほぼ和歌山県道145号鳴神木広線を東へ進む経路で、約3 kmの距離が有る [注釈 6] 。 和歌山駅から路線バスに乗る方法も有るものの、花山温泉へ直行する路線バスは運行されておらず、最寄りのバス停からでも500 m程度の距離が有る [注釈 7] 。 いずれの駅からでも、もし阪和自動車道の橋脚の下を通り過ぎた場合には、東へ行き過ぎである。

歴史[編集]

この場所で1965年に温泉の試掘が行われ、地下501 mから温泉を得た [1] 。 なお、一軒宿は1968年に開業した。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ pH7が中性だが、2014年時点の日本では、温泉水の湧出時のpHが6.0以上、7.5未満であれば「中性」と分類される。
  2. ^ 参考までに、2014年時点の日本においては、温泉水中の気体以外の溶存物質が8 (g/kg)未満の場合を「低張性」と分類する。逆に、温泉水中の気体以外の溶存物質が10 (g/kg)以上の場合を「高張性」と分類する。なお、この間を「等張性」と分類する。したがって、花山温泉の場合は「高張性」と分類される。なお、これは必ずしも溶質を規定していないため、たとえ「等張性」であっても、ヒトの身体の浸透圧と等張になるとは限らない。浸透圧は、あくまで、溶存している溶質の粒子数で決まるためである。その溶質が、たまたま食塩であった場合には、9 (g/kg)の濃度で水に溶解させると、ヒトの身体の浸透圧とほぼ同じ、いわゆる生理食塩水ができるというだけの話に過ぎない。
  3. ^ いわゆる石灰水に二酸化炭素を吹き込むと、それが白濁し、放置すると白色の炭酸カルシウムが析出する。ただ、この白濁した溶液に、さらに二酸化炭素を吹き込むと、炭酸イオンが、炭酸水素イオンに変化するために、水への溶解度が上昇し、白濁が消える。この白濁が消えた状態で、カルシウムイオンが溶存している。ここで二酸化炭素の濃度が低下すると、炭酸水素イオンは炭酸イオンに戻り、再び白濁し、それは沈殿するのだが、この反応が起きているため、石灰華が析出する。仕組みとしては、鍾乳石の成長と似ている。
  4. ^ にがりの主成分として、塩化マグネシウムが挙げられる。
  5. ^ この場所に貝塚が存在する事実は、この場所が、縄文海進の頃は海岸に近かった、すなわち、沖積平野と丘陵地が接している付近である事を、間接的に示している。
  6. ^ 和歌山県道145号鳴神木広線は、途中で分岐しているものの、拡幅整備された方で、向陽高校や日前神宮の裏手を東へと直進する方に向かえば良い。
  7. ^ なお「花山停留所」は「花山」と言う山の南麓の「花山団地」の最寄りの停留所であり、花山温泉の最寄りの停留所ではない。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 日本温泉科学会(監修)『図説 日本の温泉 ―170温泉のサイエンス―』 p.132 朝倉書店 2020年3月1日発行 ISBN 978-4-254-16075-8
  2. ^ 『県別マップル30 和歌山県道路地図(2012年第2版)』 昭文社 ISBN 978-4-398-62430-7 (この地図は一般的な書籍と異なり、ページごとにページ数が振られていないので、ページ数は表記できない。なお「6」や「26」と番号が付けられたページを参照した。)

外部リンク[編集]