第五列

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第五列(だいごれつ、スペイン語: quinta columna )とは、本来味方であるはずの集団の中で敵方に味方する人々、つまり「スパイ」などの存在を指す[1]。1936年スペイン内戦時、共和国政府側が防衛するマドリードを四つの部隊が包囲攻撃時に市内に反共和国軍に呼応する勢力「第五列」が潜んでいると宣伝した。効果があり、共和国側で「第五列」摘発のキャンペーンがソ連共産党スペイン共産党などによって行われた[2]

概要[編集]

この表現は、スペイン内戦反政府軍側の将軍エミリオ・モラ・ビダルスペイン語版英語版が、1936年にラジオで「我々は4個軍団マドリードに向け進軍させている。人民戦線政府が支配するマドリード市内にも我々に共鳴する5番目の軍団(第五列)が戦いを始めるだろう」と放送したことに起源がある。実際に共和国の主導権を握っていたソ連共産党はスペイン共産党を使って内部の粛清をしだした[2]

太平洋戦争中、1942年からアメリカ政府はドイツ系やイタリア系には何もせず、日系人のみを強制的に内陸部の収容所に隔離した。これは日系人が日本軍の「第五列」として内応し通敵活動する可能性があるとしてアメリカ国内で正当化された。第二次世界大戦中、ソビエト連邦ではナチス・ドイツの侵攻を受けて、国内約80万人のドイツ人がシベリアカザフスタンに強制移住させられ、1941年にヴォルガ・ドイツ人自治共和国も廃止された[3]

イギリスにおけるアイルランドカトリック教徒はいわゆる北アイルランド問題を理由として連合支持者から「第五列」とされることがある。

脚注[編集]

  1. ^ 松村劭 『ゲリラの戦争学』 文芸春秋文春新書〉2002年6月20日第1刷発行、ISBN 4-16-660254-3、102頁
  2. ^ a b 小項目事典,デジタル大辞泉,百科事典マイペディア, 精選版 日本国語大辞典,日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典. “第五列とは”. コトバンク. 2022年9月11日閲覧。
  3. ^ 松戸清裕 『ソ連史』 筑摩書房ちくま新書〉2011年12月10日第1刷発行、ISBN 978-4-480-06638-1、71頁

関連項目[編集]