田中西二郎

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田中 西二郎(たなか せいじろう、1907年11月28日 - 1979年1月15日)は、日本翻訳家

人物・来歴[編集]

東京生まれ。東京商科大学卒。1930年中央公論社入社。文芸家協会、華北綜合調査研究所、一橋大学経済研究所などに勤務[1]文芸評論を志し「知識階級の文学論」、「鴎外と露伴」(『群像』1954年5月号)、「露伴に帰れ」(『群像』1954年8月号)などを発表[1]

また、英米文学の翻訳家としてハーマン・メルヴィル白鯨』、グレアム・グリーン情事の終り』など多くの翻訳を残した。初期の筆名は佐木狷介。白木茂中村能三らと大久保康雄の元で下訳を担当し翻訳工場と呼ばれた[2]

『情事の終り』は映画化の際の邦題だが、田中はあえて『愛の終り』と訳し、そのまま文庫化されたが、その後改題した。

1961年、東京創元社の「世界名作推理小説大系」のために訳した『郵便配達は二度ベルを鳴らす』について、東京創元社がその年に倒産したため、田中はこの翻訳を新潮社に持ち込み1963年同書は新潮文庫の一冊として刊行。そのため、その後のしばらくの間、再建された東京創元社の翻訳の仕事は田中に依頼されなくなった[3]

翻訳[編集]

グレアム・グリーン[編集]

  • 『愛の終り』(グレアム・グリーン新潮社) 1952、のち新潮文庫、その後『情事の終り』に改題 
  • 『内部の男』(グレアム・グリーン、新潮社、現代イギリス文学叢書)1954
  • 『地図のない旅』(グレアム・グリイン、新潮社) 1954
  • 『おとなしいアメリカ人』(グレアム・グリーン、早川書房) 1956、のちハヤカワepi文庫グレアム・グリーン・セレクション
  • ハバナの男』(グレアム・グリーン、早川書房、グレアム・グリーン選集13) 1959
  • 『燃えつきた人間』(グレアム・グリーン、早川書房) 1961
  • 『コンゴ・ヴェトナム日記』(グレアム・グリーン、早川書房、グレアム・グリーン選集15)1965
  • 『喜劇役者』(グレアム・グリーン、早川書房)1967
  • 『旦那さまを拝借 性生活喜劇十二篇』(グレアム・グリーン、山口午良共訳、早川書房) 1971
  • 『グレアム・グリーン自伝』(グレアム・グリーン、早川書房) 1974

E・S・ガードナー / A・A・フェア[編集]

  • 『門番の飼猫』(E・S・ガードナー早川書房、世界探偵小説全集) 1955、のち文庫
  • 『どもりの主教』(E・S・ガードナー早川書房、世界探偵小説全集) 1956
  • 『駈け出した死体』(E・S・ガードナー、早川書房、世界探偵小説全集) 1957、のちハヤカワ・ミステリ文庫
  • ビロードの爪』(ガードナー、中央公論社、世界推理名作全集10)1960、のち嶋中文庫
  • 『おめかけはやめられない』(A・A・フェア、早川書房、世界ミステリシリーズ) 1962

サマセット・モーム[編集]

  • 『ラムベスのライザ』(サマセット・モーム、新潮社、サマセット・モーム全集01) 1955
  • 手紙 / 園遊会まで 短篇集 第2』(サマセット・モーム、新潮社、サマセット・モーム全集16) 1955
  • 『魔術師』(サマセット・モーム、新潮社、サマセット・モーム全集29) 1958、のち国書刊行会世界幻想文学大系、のちちくま文庫
  • 『ジゴロとジゴレット 短篇集 第7』(サマセット・モーム、新潮社、サマセット・モーム全集30) 1958
  • 『作家の立場から』(サマセット・モーム、新潮社、サマセット・モーム随想集) 1962
  • 『モーム短篇集 第13』(サマセット・モーム、新潮文庫) 1963
  • 『モーム短篇集 第14』(サマセット・モーム、新潮文庫) 1963

脚注[編集]

  1. ^ a b 日外アソシエーツ人物情報
  2. ^ 市川ゆかりの著作家・大久保康雄
  3. ^ 戸川安宣『ぼくのミステリ・クロニクル』