ブルトン語

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ブルトン語
ブルターニュ語
ブレイス語
Brezhoneg
カンペールの道路標識。ブルトン語とフランス語の二言語表記である
発音 IPA: [bʀe.ˈzõː.nɛk]
話される国 フランスの旗 フランス
地域 ブルターニュ地域圏の旗 ブルターニュ
ペイ・ド・ラ・ロワール
イル=ド=フランス
話者数 20万人
言語系統
表記体系 ラテン文字
公的地位
統制機関 Ofis Publik ar Brezhoneg
言語コード
ISO 639-1 br
ISO 639-2 bre
ISO 639-3 各種:
bre — 現代ブルトン語
xbm — 中期ブルトン語
obt — 古ブルトン語
Linguist List xbm 中期ブルトン語
  obt 古ブルトン語
Linguasphere

50-ABB-b (varieties:

50-ABB-ba to -be)
2004年調査当時のブルトン語話者の割合
消滅危険度評価
Severely endangered (Moseley 2010)
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ブルトン語(ブルトンご、ブルトン語: Brezhonegフランス語: Breton)は、ブリトン語系ケルト諸言語の一つである。ブレイス語ブルターニュ語とも言われる。

ブルトン語は、「著しい危機に瀕している」とUNESCOの危機に瀕した言語のレッドブックen)によって定義されている。ブルトン語とフランス語のバイリンガル教育を行うクラスに在籍した児童の数は2006年から2012年までは33%上がり、14709人にのぼっている[1][2]が、2008年にブルトン語の教育を受けた児童はブルターニュ全体児童の1.38%である[3]

自治主義者からや、学校やメディア・公的生活でのブルトン語使用の公認を求める人々からの嘆願にもかかわらず、ブルトン語はフランスの公用語になっていない[4]

歴史とその地位[編集]

ブルトン語はバス=ブルターニュ、大雑把にいうとプルアからラ・ロシュ=ベルナールまで伸びる線(Google マップ)の西側で話されている。ブルトン語は、かつてブリテン島からアルモリカ、そしてガリシアにまで足がかりを残したブリトン諸語からきている。古ブルトン語は9世紀からその存在が証明されている。ブルターニュ西部で庶民の言葉となってからも12世紀まで上流階級の言葉であったが、一方で貴族やブルジョワ階級はフランス語を用いるようになった。書き言葉としてブルターニュ公国ラテン語を用い、15世紀からフランス語に切り替えた。ブルトン語文学には限られた伝統のみがある。いくつかの古いブルトン語の語彙が現在も残っており、現代ブルトン語の哲学や科学用語に残る。

フランスの代々の君主は、政府の事業にフランス語を必要としたにもかかわらず、下層階級が話す少数言語に注意を払ってこなかった。フランス革命時代は、地域間を超えた言語としてフランス語を優遇する政策がとられた。反動主義者や王党派勢力は無知な農民たちを自分たちの側におこうとして地域言語を好むと、革命家たちが想定したのである。第三共和政第四共和政第五共和政において、ブルトン語やブルトン語文化を根絶させることを目的とする屈辱的な慣行が1960年代後半まで公立学校内で行われていた[5]

現在、フランスの政治的中央集権化とマスメディアの大きな影響を受け、1950年代には100万人以上いたブルトン語話者は、現在約20万人に減少し、その大半が60歳以上となっている[6]。20世紀初頭、低ブルターニュの人口の半分はブルトン語しか知らず、残りの半分はフランス語とのバイリンガルであった。1950年、ブルトン語しか話せない単一言語話者(モノリンガル)は10万人だけであった。以降急速に数は減少し、モノリンガルは今日残っていない。

ブルトン語は、公用語または地域言語として認定されていない唯一の「生きた」ケルト語である。フランス政府は、1994年に付加された共和国憲法第2条(「共和国の言語はフランス語である」と明記している)の変更を拒否している。これは、長い間話者が最大の数を占めていたケルト語であったにもかかわらず、言語が今や危機にさらされていることを示している[7]

20世紀初頭には約200万人いた話者は、現在では25万人ほどまで減少しており[8]、フランスの政府承認言語ではないものの、復権が試みられている。カンペールなどブルターニュの主要都市では町の案内板にフランス語とブルトン語を併記するほか、銀行のATMの表示などにも積極的に使われている。またブルトン語の小切手を発行している銀行もある。1977年より、イマージョン・プログラムでブルトン語を教えるディワン(fr、ブルトン語で授業を行う中規模学校の連合)が始まった。ディワンでは小学校から高校までの数千人の生徒が学んでいる。

地理的分布と方言[編集]

ブルトン語は主としてブルターニュ西部で話されており、ブルターニュ東部では話者が分散傾向にある(ブルトン語、フランス語と併用してガロ語が話されている)。ブルトン人移民の暮らす国外でも話されている。

エスノローグで識別されているように、ブルトン語には4つの方言が現存している。レオン方言トレゴール方言コルヌアイユ方言ヴァンヌ方言である。ゲランド方言は20世紀まで話されていたが、現在は絶えている。1つの村から次へとわずかに変化して方言連続体をつくるため、これらの方言の間に明確な境界線はない。

脚注[編集]

  1. ^ fr:Fañch Broudic, 2009. Parler breton au XXIe siècle – Le nouveau sondage de TMO-Régions.ゅincluding data from 2007: 172,000 speakers in Lower Brittany; slightly under 200,000 in whole Brittany; 206,000 including students in bilingual educationょ
  2. ^ (フランス語)Données clés sur breton, Ofis ar Brezhoneg
  3. ^ Pourcentage d'enfants scolarisés dans les filières bilingues sur la population scolaire globale(Année scolaire 2008-2009)Bretagne : 1.38 %[1]
  4. ^ Simon Hooper. “France a 'rogue state' on regional languages”. Al Jazeera. 2012年3月30日閲覧。
  5. ^ ICBL information about Breton at breizh.net
  6. ^ Fañch Broudic, 2009. Parler breton au XXIe siècle – Le nouveau sondage de TMO-Régions.(including data from 2007: 172,000 speakers in Lower Brittany; slightly under 200,000 in whole Brittany; 206,000 including students in bilingual education)
  7. ^ Simon Hooper. "France a 'rogue state' on regional languages". Al Jazeera. [2] Retrieved 30 March 2012.
  8. ^ 絶滅危機のブルトン語、フランスは多様性と向き合えるか”. CNN (2011年1月2日). 2011年4月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]