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== あらすじ ==
== あらすじ ==
男がひとり、[[吉原遊廓|吉原]]のとある妓楼の前で何か考え込んでいる。近くの店の妓夫(ぎゆう=男性従業員)が気になって声をかけると男は叔母さんが金貸しをしているんだが叔母さんのわりに、ここの店に[[掛取引|掛け取り]](=借金の回収)に来たけどね、『明日まで待ってくれ』って言われたんだ。うちは遠方にあり、今から帰って出直すのはバカバカしい。それよりは、近くでひと晩を過ごし、翌朝掛け取りに来たほうが合理的だと思ったのだがあいにく金を持ってきていない。それで、相談があるんだよ。ひと晩あたしをあんたの店で遊ばせてくれないかな? 明日掛け取りした金で支払いをするから」と答える。
[[吉原遊廓|吉原]]のとある妓楼の前で男が何か考え込んでいる。近くの店の妓夫(ぎゆう=男性従業員)が気になって声をかけると男は叔母が金貸しをしてい自分は理としてここの店に[[掛取引|掛け取り]](=借金の回収)に来た明日まで待ってくれ言われた、家が遠方なので今から帰って明日出直すのはばかばかしい、近くでひと晩を過ごしたのだがあいにく金を持っていない、と事情を説明した上で、ひと晩あたしをあんたの店で遊ばせてくれないかな? 明日掛け取りした金で支払いをするから」と持ちかける。帳場が諒承したため男は登楼し、その夜はどんちゃん騒ぎを繰り広げる。


妓夫を通じ、その店の[[帳場]]が了解したため、男は登楼し、どんちゃん騒ぎを繰り広げる。翌朝、男が顔を洗っていると、昨夜の妓夫が料金を取りにやって来る。男は「じゃあ、これから取りに行くから、ついて来てくれ」と答え、妓夫を連れて店を出る。男は昨日店ではなく[[銭湯]]へ妓夫連れて行きさらに定食屋で酒を飲みながらの朝食をすすめる。そのたびに、妓夫が代金を立て替え男はとで倍にて返すから心配する」とだめる
翌朝、妓夫が料金を取りにやって来る。男は妓夫を連れて店を出ると、ことば巧みに妓夫を吉原外へ連れ出し、[[銭湯]]で朝風呂浴び飯屋で湯豆腐で酒を飲みながらの朝食をる。妓夫はそのたびに代金を立て替えさせられる。店を出た後も男はあれこれゃべりながら男を連れ回。ななか金を払ってもい妓夫はいらいらを隠せ


しかし、いつの間にか吉原大を出、遊廓の外にいたことに気づいた妓夫は「いつになったら払っていただけるのか」と怒り出す男は「ここの近所にいるあたしの伯父さんに金を借りて支払いを済ませよう提起して[[西浅草|田原町]]まで妓夫を連れ、1軒の早桶屋(=[[棺|早桶]]の注文販売を手がける葬祭業者)にひとりで入っていく。
とうとう雷まで来しまっろで妓夫怒り出すと、男は近所にいるおじさんに金を借りて支払いを済ませようと言って[[西浅草|田原町]]まで妓夫を連れてゆきちょっと待っていてくれるよう頼んで一軒の早桶屋(=[[棺|早桶]]の注文販売を手がける葬祭業者)に入っていく。


男は店主に向かい、通りの向こうに立っている男の兄貴が死んだので早桶をこしらえてくれと小声で頼み、店主が引き受けると「このおじさんがこしらえてくれるとよ」と妓夫を店に呼び入れた上、「ちょっと用事があるから」と姿を消してしまう。
男は店主を呼び出し、小声と大声を使い分けて次のように話す。「(小声で)通りの向こうに男がいるでしょう。あいつの兄貴が、ゆうべ(=昨夜)亡くなりましてね、急に早桶が必要になったのですが、……(大声で)何とかこしらえていただけませんでしょうか?……(小声で)腫(は)れの病で死んだんでね、『図抜け大一番小判型』なんていう、ものすごい奴が必要になりましてね。……(大声で)何とかひとつお願い……え、大丈夫ですか!?(大声のまま、妓夫の方を向き) おーい、なんとかしてくれると言ってるぞ! ……(小声で)あいつ(=妓夫)は兄貴が死んで混乱しているから、変なことを言いかねないが、ひとつよろしく」男は妓夫と店主を引き合わせると、「用事があるから」と言って姿を消す。


男の声「何とかこらえていただけませんでしょうか」「大丈夫ですか」しか聞かなかった妓夫男が金の算段まとめたと勘違し、高圧的な態度「出してただきましょう」と、金を待つ。主は男注文通りの巨大な早桶を出してくる。妓夫は仰天すると同時、男が遊郭でただで遊びたためについていた嘘に今までだまされてたと気づく。妓夫の話を聞いた店主は妓夫に対し「見抜けねえてめえも間抜けだ」と激怒し、「こんな早桶は、よそには回せねえ。手間賃はともかく、早桶の材料費置いていけと妓夫に迫る。妓夫が「あり金は全部、さっきの男に使われた」と告げると、店主は早桶の職人を呼び、
店主が金してくれると思んでいる妓夫早桶注文されたと込んでいる店主の会話はなかなかかみ合わずやがて店の職人たちが作った早桶を運んでくる。仰天した妓夫はだまされてただで飲み食いされてしまっ気づく。妓夫の話を聞いた店主は「見抜けねえてめえも間抜けだ」と激怒し、早桶の材料費置いていけと妓夫に迫る。金はないと妓夫が答えると、店主職人たちに向かって


「おい、廓内(なか)まで付き馬に行け」
「おい、廓内(なか)まで付き馬に行け」

2022年2月28日 (月) 05:33時点における版

付き馬(つきうま)は、古典落語の演目のひとつ。付け馬(つけうま)、早桶屋(はやおけや)とも。主に東京で広く演じられる。

概要

原話は1692年元禄5年)に出版された笑話本『噺かのこ』第四巻「薬屋にて人参を騙りし事」。これは男が弁舌たくみに薬屋で朝鮮人参をだまし取る、という内容だが、落語では吉原遊廓を舞台にした「廓噺」のひとつとして成立した。

「付き馬(付け馬)」とは、遊廓における、料金の不足を徴収するために客の帰宅に同行する店員を指す俗称である。当初は送迎のための馬を引く馬子が、この際の料金回収を担って客の自宅へ行っていたが、横領が後を絶たなかったため、やがて妓楼の従業員が直接担当するようになり、呼称だけが残ったものであるという。

主な演者に8代目三笑亭可楽5代目古今亭志ん生5代目春風亭柳朝7代目立川談志などが知られる。

あらすじ

吉原のとある妓楼の前で男が何か考え込んでいる。近くの店の妓夫(ぎゆう=男性従業員)が気になって声をかけると男は、叔母が金貸しをしていて、自分は代理としてここの店に掛け取り(=借金の回収)に来たのだが明日まで待ってくれと言われた、家が遠方なので今から帰って明日出直すのはばかばかしい、近くでひと晩を過ごしたいのだがあいにく金を持っていない、と事情を説明した上で、「ひと晩あたしをあんたの店で遊ばせてくれないかな? 明日掛け取りした金で支払いをするから」と持ちかける。帳場が諒承したため男は登楼し、その夜はどんちゃん騒ぎを繰り広げる。

翌朝、妓夫が料金を取りにやって来る。男は妓夫を連れて店を出ると、ことば巧みに妓夫を吉原の外へ連れ出し、銭湯で朝風呂を浴び、飯屋では湯豆腐で酒を飲みながらの朝食を取る。妓夫はそのたびに代金を立て替えさせられる。店を出た後も男はあれこれしゃべりながら男を連れ回す。なかなか金を払ってもらえない妓夫はいらいらを隠せない。

とうとう雷門まで来てしまったところで妓夫が怒り出すと、男は近所にいるおじさんに金を借りて支払いを済ませようと言って田原町まで妓夫を連れてゆき、ちょっと待っていてくれるよう頼んで一軒の早桶屋(=早桶の注文販売を手がける葬祭業者)に入っていく。

男は店主に向かい、通りの向こうに立っている男の兄貴が死んだので早桶をこしらえてくれと小声で頼み、店主が引き受けると「このおじさんがこしらえてくれるとよ」と妓夫を店に呼び入れた上、「ちょっと用事があるから」と姿を消してしまう。

店主が金を出してくれると思い込んでいる妓夫と、早桶を注文されたと思い込んでいる店主との会話はなかなかかみ合わず、やがて店の職人たちが作った早桶を運んでくる。仰天した妓夫は男にだまされてただで飲み食いされてしまったことに気づく。妓夫の話を聞いた店主は「見抜けねえてめえも間抜けだ」と激怒し、早桶の材料費を置いていけと妓夫に迫る。金はないと妓夫が答えると、店主が職人たちに向かって

「おい、廓内(なか)まで付き馬に行け」

関連項目