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厚岸町での群落再生の試みを加筆 |
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[[File:Saroma-lake_Salicornia-europaea.jpg|thumb|北海道[[サロマ湖]]のアッケシソウ群生]] |
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'''アッケシソウ'''(厚岸草、学名''[[w:Salicornia europaea|Salicornia europaea]]'')は[[ヒユ科]]に属する一年性草本で、世界的には[[ヨーロッパ]]、[[アジア]]、[[北アメリカ]]などの寒帯地域に広範囲に分布する。[[潮汐]]の[[干満]]に規定される、平均冠水位から満潮水位の間の海に接する陸地や内陸に発達する[[塩湿地]]に生育する[[塩生植物]]である。 |
'''アッケシソウ'''(厚岸草、学名:''[[w:Salicornia europaea|Salicornia europaea]]'')は[[ヒユ科]]に属する一年性[[草本]]で、世界的には[[ヨーロッパ]]、[[アジア]]、[[北アメリカ]]などの[[寒帯]]地域に広範囲に分布する。[[潮汐]]の[[干満]]に規定される、平均冠水位から満潮水位の間の海に接する陸地や内陸に発達する[[塩沼|塩性湿地]]に生育する[[塩生植物]]である。 |
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== 特徴 == |
== 特徴 == |
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[[File:1Salicornia europaea.jpg|thumb|アッケシソウ(厚岸草)]] |
[[File:1Salicornia europaea.jpg|thumb|アッケシソウ(厚岸草)]] |
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アッケシソウの茎は濃緑色で高さ10-35cm、円柱形で節を形成し、節から枝が対生する。また、退化した燐片状の葉が節部に対生する。8-9月には、茎および枝の先端部が円柱状の[[穂状花序]]をなし、[[葉腋]]のくぼみに3個の花が対となり、1つの節に6個の花器を形成する。3個の花のうち、中央に位置するものを[[中央花]]、その両側に位置するものを[[両側花]]と呼ばれ、中央花からは[[大粒種子]]、両側花からは[[小粒種子]]と呼ばれる大小2種の種子を形成する。このことからアッケシソウは花器と種子に[[二形性]]が認められている。[[大粒種子]]は環境ストレスに強く、 |
アッケシソウの[[茎]]は濃緑色で、高さ10-35cm、円柱形で節を形成し、節から[[枝]]が対生する。また、退化した燐片状の葉が節部に対生する。8-9月には、茎および枝の先端部が円柱状の[[穂状花序]]をなし、[[葉腋]]のくぼみに3個の花が対となり、1つの節に6個の花器を形成する。3個の花のうち、中央に位置するものを[[中央花]]、その両側に位置するものを[[両側花]]と呼ばれ、中央花からは[[大粒種子]]、両側花からは[[小粒種子]]と呼ばれる大小2種の種子を形成する。このことからアッケシソウは花器と種子に[[二形性]]が認められている。[[大粒種子]]は環境ストレスに強く、[小粒種子は休眠期間が長いことから群落の維持に関与する事が推測される。この植物の花器の特徴として、花被が[[退化]]し、[[雌蕊]](雌ずい)や[[雄蕊]](雄ずい)を包み込むようにがく片が非常に発達している。 |
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秋になるとアッケシソウの茎および枝の濃緑色が紅紫色へ紅葉する姿から'''サンゴソウ'''・'''ヤチサンゴ'''とも呼ばれる。その色素は同じヒユ科に属する[[テンサイ]]の根で合成される色素と同種の[[ベタシアニン]]である。 |
秋になるとアッケシソウの茎および枝の濃緑色が紅紫色へ紅葉する姿から'''サンゴソウ'''・'''ヤチサンゴ'''とも呼ばれる。その[[色素]]は、同じヒユ科に属する[[テンサイ]]の[[根]]で合成される色素と同種の[[ベタシアニン]]である。 |
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== 耐塩性 == |
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アッケシソウは塩生植物の中でも |
アッケシソウは塩生植物の中でも特に強い耐塩性を示し、塩の存在に依存的な植物である。生育過程が進むにつれて、塩を蓄積することにより耐塩性を獲得する強塩生植物である。この生理的耐塩性機構は、過剰な塩類の液胞内への蓄積と連動して、[[浸透圧]]を調整する細胞適合物質である[[グリシンベタイン]]を合成、蓄積することにより、細胞質の機能を保護、強化している。 |
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==分布== |
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[[日本]]では[[1891年]]に初めて椙山清利によって[[北海道]]東部の[[厚岸町]][[厚岸湖]]のカキ島で発見され、その地名にちなみ[[北海道大学]]の[[宮部金吾]]に |
[[日本]]では[[1891年]]に初めて椙山清利によって[[北海道]]東部の[[厚岸町]][[厚岸湖]]の牡蠣(カキ)島で発見され、その地名にちなみ[[北海道大学]]の[[宮部金吾]]が1891年([[明治]]24年)に'''アッケシソウ'''(厚岸草)と命名した<ref name="道新20211025">【地域から 179の窓】釧路・根室面10月14日付朝刊の記事「赤い群落 3度目の挑戦」『[[北海道新聞]]』朝刊2021年10月25日3面</ref>。続いて[[1912年]]に[[牧野富太郎]]によって[[愛媛県]]でも発見され、日本第二の産地として発表された。その後、北海道では近隣の[[野付半島]]、[[温根沼]]および[[風蓮湖]]や[[オホーツク海]]沿岸のコムケ湖、[[サロマ湖]]、[[能取湖]]および[[涛沸湖]]などにも分布している事がわかっている。 |
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== 瀬戸内海沿岸のアッケシソウのルーツ == |
== 瀬戸内海沿岸のアッケシソウのルーツ == |
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瀬戸内海沿岸のアッケシソウのルーツとして、江戸時代に北前船で塩などの物資を北海道に運ぶ過程で、瀬戸内海に戻る際にバラストなどに付いた個体や種子が瀬戸内海沿岸に持ち込まれたとする「北前船説」が考えられていた。しかし、東京農業大学のグループが2003年に発表した論文では、RAPD法による分析を行い、北海道に自生するアッケシソウと岡山県に自生するアッケシソウの遺伝的な組成が異なることが示された<ref>Identification of Salicornia Populations : Comparison between Morphological Characterization and RAPD Fingerprinting. http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1626/pps.6.287</ref>。その後、岡山理科大学 |
[[瀬戸内海]]沿岸のアッケシソウのルーツとして、[[江戸時代]]に[[北前船]]で塩などの物資を現在の北海道に運ぶ過程で、瀬戸内海に戻る際にバラストなどに付いた個体や種子が瀬戸内海沿岸に持ち込まれたとする「北前船説」が考えられていた。しかし、[[東京農業大学]]のグループが2003年に発表した論文では、RAPD法による分析を行い、北海道に自生するアッケシソウと[[岡山県]]に自生するアッケシソウの遺伝的な組成が異なることが示された<ref>Identification of Salicornia Populations : Comparison between Morphological Characterization and RAPD Fingerprinting. http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1626/pps.6.287</ref>。その後、[[岡山理科大学]]などのグループが2010年に発表した論文では、北海道、岡山県、愛媛県、[[香川県]]、[[韓国]]で採取したアッケシソウの[[葉緑体]]の[[デオキシリボ核酸|DNA]]の一部を分析した<ref>「http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_085_180_185.pdf 瀬戸内地方に隔離分布する絶滅危惧種アッケシソウの起源」]</ref>。その結果、北海道のアッケシソウと瀬戸内海沿岸のアッケシソウの分析した葉緑体DNAの塩基配列が異なっており、瀬戸内海沿岸のアッケシソウと韓国のアッケシソウの分析した葉緑体DNAの塩基配列が同じであった。これらのDNA分析の結果からは「北前船説」は支持されなかった。 |
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== 保護の現状 == |
== 保護の現状 == |
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北海道以南では宮城県、愛媛県および香川県の[[塩田]]跡地で生育が確認されていたが、これら塩田跡地が開発によって住宅地や工業団地などに転用された事に伴い、アッケシソウ群落はほとんど絶滅に近いとされている。2003年末に、 |
北海道以南では[[宮城県]]、愛媛県および香川県の[[塩田]]跡地で生育が確認されていたが、これら塩田跡地が開発によって住宅地や工業団地などに転用された事に伴い、アッケシソウ群落はほとんど絶滅に近いとされている。2003年末に、岡山県[[浅口市]]の寄島干拓地で自生していることが確認され、2004年に住民らが「守る会」を発足。自生地の保護や生態調査を行っている。また、岡山県には瀬戸内市の[[牛窓町]]、[[邑久町|邑久]]両町にまたがる[[錦海湾|錦海塩田]]跡地にアッケシソウが自生している。しかし、この跡地に存在するアッケシソウは植物愛好家が香川県の塩田跡地より持ち帰ったアッケシソウの種子を蒔いたと文献に残っている事から、保護に成功した珍しいケースの場所と言える。愛媛県[[新居浜市]]が自生の南限と言われている。 |
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[[レッドデータブック (環境省)|環境省のレッドデータブック]]では近い将来に絶滅の危険が高い種 (EN) に指定され、さらに近年では地盤沈下や湖岸の侵食により、年々減少しているとの報告がある。最初に自生が確認された厚岸湖では最奥部に僅かに見られるだけになっている。 |
[[レッドデータブック (環境省)|環境省のレッドデータブック]]では近い将来に絶滅の危険が高い種 (EN) に指定され、さらに近年では地盤沈下や湖岸の侵食により、年々減少しているとの報告がある。最初に自生が確認された厚岸湖では最奥部に僅かに見られるだけになっている。 |
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能取湖南岸の網走市[[卯原内]]地区では塩湿地をトラクターを用いて耕起し、他の塩生植物を抑制させる事によって国内最大級のアッケシソウ群落を維持し、毎年秋には20万人が訪れる観光名所になっていた。しかし、環境改善を目的にした杜撰な土砂の搬入がかえって悪影響を与え[[2011年]]には大幅に縮小<ref name="hokkaido-np-2014-11-06">{{Cite news | url = http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki3/572840.html | title = 来秋の色づき楽しみ 能取湖のアッケシソウ群落再生を願い種まき | newspaper = |
能取湖南岸の網走市[[卯原内]]地区では塩湿地をトラクターを用いて耕起し、他の塩生植物を抑制させる事によって国内最大級のアッケシソウ群落を維持し、毎年秋には20万人が訪れる観光名所になっていた。しかし、環境改善を目的にした杜撰な土砂の搬入がかえって悪影響を与え[[2011年]]には大幅に縮小<ref name="hokkaido-np-2014-11-06">{{Cite news | url = http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki3/572840.html | title = 来秋の色づき楽しみ 能取湖のアッケシソウ群落再生を願い種まき | newspaper = 北海道新聞 | publisher = 北海道新聞社 | date = 2014-11-06 }}</ref>。[[2012年]]から網走市や東京農業大学などで再生協議会を組織して土壌改良等が行われ、[[2015年]]8月秋までに8割程度まで回復させた。雑草や[[ヨシ]]の侵入に弱いが、能取湖岸での事例を参考に、名前の由来となった厚岸町でも群落の再生が試みられている<ref name="道新20211025"/>。 |
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== 野菜としての利用 == |
== 野菜としての利用 == |
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[[File:Image of fresh samphire for sale at Swansea Market.jpg|thumb| 野菜としての利用されているアッケシソウ(厚岸草)]] |
[[File:Image of fresh samphire for sale at Swansea Market.jpg|thumb| 野菜としての利用されているアッケシソウ(厚岸草)]] |
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アッケシソウは葉と茎が食用となり、[[イギリス]]をはじめとするヨーロッパで[[野菜]]として利用される。塩味があり、そのままゆでて食べるのが一般的であり<ref> |
アッケシソウは葉と茎が食用となり、[[イギリス]]をはじめとするヨーロッパで[[野菜]]として利用される。塩味があり、そのままゆでて食べるのが一般的であり<ref>バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳『世界の食用植物文化図鑑』(柊風舎、2010年1月20日第1刷)p.185</ref>、近年では日本でも流通することがある。海外ではサムファイアー Samphire([[英語]])、パスピエール Passe Pierre([[フランス語]])、ゼークラル Zeekraal([[オランダ語]])などと呼ばれるが、[[アスパラガス]]と形がやや似ていて利用法が同じため、'''シーアスパラガス'''の名もある。'''シービーンズ'''(Sea beans)や'''シーピクルス'''(Sea pickles)と呼ばれる事もある。 |
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==脚注== |
==脚注== |
2022年1月5日 (水) 00:42時点における版
アッケシソウ | |||||||||||||||||||||
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アッケシソウ(2000年9月)
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Salicornia europaea | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
アッケシソウ(厚岸草) サンゴソウ(珊瑚草) | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Common Glasswort Sea beans Samphire Samphire greens Sea asparagus Sea pickle |
アッケシソウ(厚岸草、学名:Salicornia europaea)はヒユ科に属する一年性草本で、世界的にはヨーロッパ、アジア、北アメリカなどの寒帯地域に広範囲に分布する。潮汐の干満に規定される、平均冠水位から満潮水位の間の海に接する陸地や内陸に発達する塩性湿地に生育する塩生植物である。
特徴
アッケシソウの茎は濃緑色で、高さ10-35cm、円柱形で節を形成し、節から枝が対生する。また、退化した燐片状の葉が節部に対生する。8-9月には、茎および枝の先端部が円柱状の穂状花序をなし、葉腋のくぼみに3個の花が対となり、1つの節に6個の花器を形成する。3個の花のうち、中央に位置するものを中央花、その両側に位置するものを両側花と呼ばれ、中央花からは大粒種子、両側花からは小粒種子と呼ばれる大小2種の種子を形成する。このことからアッケシソウは花器と種子に二形性が認められている。大粒種子は環境ストレスに強く、[小粒種子は休眠期間が長いことから群落の維持に関与する事が推測される。この植物の花器の特徴として、花被が退化し、雌蕊(雌ずい)や雄蕊(雄ずい)を包み込むようにがく片が非常に発達している。
秋になるとアッケシソウの茎および枝の濃緑色が紅紫色へ紅葉する姿からサンゴソウ・ヤチサンゴとも呼ばれる。その色素は、同じヒユ科に属するテンサイの根で合成される色素と同種のベタシアニンである。
耐塩性
アッケシソウは塩生植物の中でも特に強い耐塩性を示し、塩の存在に依存的な植物である。生育過程が進むにつれて、塩を蓄積することにより耐塩性を獲得する強塩生植物である。この生理的耐塩性機構は、過剰な塩類の液胞内への蓄積と連動して、浸透圧を調整する細胞適合物質であるグリシンベタインを合成、蓄積することにより、細胞質の機能を保護、強化している。
分布
日本では1891年に初めて椙山清利によって北海道東部の厚岸町厚岸湖の牡蠣(カキ)島で発見され、その地名にちなみ北海道大学の宮部金吾が1891年(明治24年)にアッケシソウ(厚岸草)と命名した[1]。続いて1912年に牧野富太郎によって愛媛県でも発見され、日本第二の産地として発表された。その後、北海道では近隣の野付半島、温根沼および風蓮湖やオホーツク海沿岸のコムケ湖、サロマ湖、能取湖および涛沸湖などにも分布している事がわかっている。
瀬戸内海沿岸のアッケシソウのルーツ
瀬戸内海沿岸のアッケシソウのルーツとして、江戸時代に北前船で塩などの物資を現在の北海道に運ぶ過程で、瀬戸内海に戻る際にバラストなどに付いた個体や種子が瀬戸内海沿岸に持ち込まれたとする「北前船説」が考えられていた。しかし、東京農業大学のグループが2003年に発表した論文では、RAPD法による分析を行い、北海道に自生するアッケシソウと岡山県に自生するアッケシソウの遺伝的な組成が異なることが示された[2]。その後、岡山理科大学などのグループが2010年に発表した論文では、北海道、岡山県、愛媛県、香川県、韓国で採取したアッケシソウの葉緑体のDNAの一部を分析した[3]。その結果、北海道のアッケシソウと瀬戸内海沿岸のアッケシソウの分析した葉緑体DNAの塩基配列が異なっており、瀬戸内海沿岸のアッケシソウと韓国のアッケシソウの分析した葉緑体DNAの塩基配列が同じであった。これらのDNA分析の結果からは「北前船説」は支持されなかった。
保護の現状
北海道以南では宮城県、愛媛県および香川県の塩田跡地で生育が確認されていたが、これら塩田跡地が開発によって住宅地や工業団地などに転用された事に伴い、アッケシソウ群落はほとんど絶滅に近いとされている。2003年末に、岡山県浅口市の寄島干拓地で自生していることが確認され、2004年に住民らが「守る会」を発足。自生地の保護や生態調査を行っている。また、岡山県には瀬戸内市の牛窓町、邑久両町にまたがる錦海塩田跡地にアッケシソウが自生している。しかし、この跡地に存在するアッケシソウは植物愛好家が香川県の塩田跡地より持ち帰ったアッケシソウの種子を蒔いたと文献に残っている事から、保護に成功した珍しいケースの場所と言える。愛媛県新居浜市が自生の南限と言われている。
環境省のレッドデータブックでは近い将来に絶滅の危険が高い種 (EN) に指定され、さらに近年では地盤沈下や湖岸の侵食により、年々減少しているとの報告がある。最初に自生が確認された厚岸湖では最奥部に僅かに見られるだけになっている。
能取湖南岸の網走市卯原内地区では塩湿地をトラクターを用いて耕起し、他の塩生植物を抑制させる事によって国内最大級のアッケシソウ群落を維持し、毎年秋には20万人が訪れる観光名所になっていた。しかし、環境改善を目的にした杜撰な土砂の搬入がかえって悪影響を与え2011年には大幅に縮小[4]。2012年から網走市や東京農業大学などで再生協議会を組織して土壌改良等が行われ、2015年8月秋までに8割程度まで回復させた。雑草やヨシの侵入に弱いが、能取湖岸での事例を参考に、名前の由来となった厚岸町でも群落の再生が試みられている[1]。
野菜としての利用
アッケシソウは葉と茎が食用となり、イギリスをはじめとするヨーロッパで野菜として利用される。塩味があり、そのままゆでて食べるのが一般的であり[5]、近年では日本でも流通することがある。海外ではサムファイアー Samphire(英語)、パスピエール Passe Pierre(フランス語)、ゼークラル Zeekraal(オランダ語)などと呼ばれるが、アスパラガスと形がやや似ていて利用法が同じため、シーアスパラガスの名もある。シービーンズ(Sea beans)やシーピクルス(Sea pickles)と呼ばれる事もある。
脚注
- ^ a b 【地域から 179の窓】釧路・根室面10月14日付朝刊の記事「赤い群落 3度目の挑戦」『北海道新聞』朝刊2021年10月25日3面
- ^ Identification of Salicornia Populations : Comparison between Morphological Characterization and RAPD Fingerprinting. http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1626/pps.6.287
- ^ 「http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_085_180_185.pdf 瀬戸内地方に隔離分布する絶滅危惧種アッケシソウの起源」]
- ^ “来秋の色づき楽しみ 能取湖のアッケシソウ群落再生を願い種まき”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年11月6日)
- ^ バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳『世界の食用植物文化図鑑』(柊風舎、2010年1月20日第1刷)p.185