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'''リュウキュウカラスザメ''' {{Snamei|Etmopterus bigelowi}} は[[カラスザメ科]]に属する[[サメ]]の一種。全世界の深度110-1000mの[[海底]]か[[中深層]]に生息する。[[カラスザメ]]と[[種群]]を形成し、細長い体、大きな頭部、乱雑に並んだ[[皮歯]]という共通点がある。67cmに達し、[[発光器]]を持つ。[[卵胎生]]で餌は小さな[[イカ]]・[[魚]]・[[魚卵]]。[[IUCN]]は[[保全状況]]を[[軽度懸念]]としている。
'''リュウキュウカラスザメ''' {{Snamei|Etmopterus bigelowi}} は[[カラスザメ科]]に属する[[サメ]]の一種。全世界の深度110-1000mの[[海底]]か[[中深層]]に生息する。[[カラスザメ]]と[[種群]]を形成し、細長い体、大きな頭部、乱雑に並んだ[[皮歯]]という共通点がある。67cmに達し、[[発光器]]を持つ。[[卵胎生]]で餌は小さな[[イカ]]・[[魚]]・[[魚卵]]。[[IUCN]]は[[保全状況]]を[[軽度懸念]]としている。


==分類==
==分類==
1993年、日本の[[魚類学者]][[白井 滋|白井滋]]と立川浩之により、[[科学誌]]''Copeia''に、[[カラスザメ]][[種群]]の[[分類学]]的再検討の一環として記載された。 彼らは、カラスザメ ''E. pusillus'' にはこれまで認識されていなかった第二の種、''E. bigelowi''が含まれることを明らかにした。[[種小名]]はHenry B. Bigelow(William C. Schroeder・[[w:Stewart Springer|Stewart Springer]]と共にカラスザメ類の記載に関わった)への献名である<ref name="shirai and tachikawa"/>。この種群の特徴は、乱雑に並んだ切り株状の[[皮歯]]である<ref name="shirai and tachikawa">{{cite journal |doi=10.2307/1447149 |title=Taxonomic Resolution of the ''Etmopterus pusillus'' Species Group (Elasmobranchii, Etmopteridae), with Description of ''E. bigelowi'', n. sp. |author=Shirai, S. and H. Tachikawa |journal=Copeia |volume=1993 |issue=2 |date=May 3, 1993 |pages=483&ndash;495 |jstor=1447149}}</ref>。
1993年、日本の[[魚類学者]][[白井滋]]と立川浩之により、[[科学誌]]''Copeia''に、[[カラスザメ]][[種群]]の[[分類学]]的再検討の一環として記載された。 彼らは、カラスザメ ''E. pusillus'' にはこれまで認識されていなかった第二の種、''E. bigelowi''が含まれることを明らかにした。[[種小名]]はHenry B. Bigelow(William C. Schroeder・[[w:Stewart Springer|Stewart Springer]]と共にカラスザメ類の記載に関わった)への献名である<ref name="shirai and tachikawa"/>。この種群の特徴は、乱雑に並んだ切り株状の[[皮歯]]である<ref name="shirai and tachikawa">{{cite journal |doi=10.2307/1447149 |title=Taxonomic Resolution of the ''Etmopterus pusillus'' Species Group (Elasmobranchii, Etmopteridae), with Description of ''E. bigelowi'', n. sp. |author=Shirai, S. and H. Tachikawa |journal=Copeia |volume=1993 |issue=2 |date=May 3, 1993 |pages=483&ndash;495 |jstor=1447149}}</ref>。


==分布==
==分布==

2021年10月15日 (金) 06:57時点における最新版

リュウキュウカラスザメ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
: ツノザメ目 Squaliformes
: カラスザメ科 Etmopteridae
: カラスザメ属 Etmopterus
: リュウキュウカラスザメ E. bigelowi
学名
Etmopterus bigelowi
Shirai & Tachikawa, 1993
英名
Blurred lanternshark
blurred smooth lanternshark[2]
分布

リュウキュウカラスザメ Etmopterus bigelowiカラスザメ科に属するサメの一種。全世界の深度110-1000mの海底中深層に生息する。カラスザメ種群を形成し、細長い体、大きな頭部、乱雑に並んだ皮歯という共通点がある。67cmに達し、発光器を持つ。卵胎生で餌は小さなイカ魚卵IUCN保全状況軽度懸念としている。

分類[編集]

1993年、日本の魚類学者白井滋と立川浩之により、科学誌Copeiaに、カラスザメ種群分類学的再検討の一環として記載された。 彼らは、カラスザメ E. pusillus にはこれまで認識されていなかった第二の種、E. bigelowiが含まれることを明らかにした。種小名はHenry B. Bigelow(William C. Schroeder・Stewart Springerと共にカラスザメ類の記載に関わった)への献名である[3]。この種群の特徴は、乱雑に並んだ切り株状の皮歯である[3]

分布[編集]

全世界の大陸棚大陸斜面・海嶺・海山で見られる[1]大西洋ではメキシコ湾アルゼンチン西アフリカ南アフリカ沖から、インド太平洋ではオーストラリア沖縄天皇海山群ナスカプレート上から報告されている[3]。外洋にも出現し、中層では110-700m、海底では163-1000mの深度に生息する[4]。他のカラスザメ類と同じように、成体は幼体より深い場所に生息する[3]

形態[編集]

最低でも67cmになり、細い体、大きな頭、短い尾を持つ。吻はくさび型で少し平たく、先細りになる。鼻孔は大きく、短い前鼻弁がある。眼は楕円形で眼窩の前方は深く凹む。口の周りに長い溝があり、口角から第一鰓裂までの距離の半分程度まで伸びる。上顎歯列は19-24、下顎は25-39。上顎歯の尖頭は細く、2-4対の小尖頭が隣接する。45cmを超えた雄では小尖頭が増える。下顎歯は滑らかでナイフ状の尖頭を持ち、全ての歯が連動して一枚の刃を構成している。雄で43cm、雌で35cmを越えると歯が直立してくる[3][4]

第一背鰭は腹鰭より胸鰭に近く、前部に溝のある棘を持つ。第二背鰭はその1.5倍の大きさで、長くカーブした棘を持つ。胸鰭の先端は丸く、腹鰭は角張る。第一背鰭-胸鰭間と第二背鰭-腹鰭間はほぼ同じ長さである。臀鰭はない。尾柄は細く、尾鰭の下葉は発達して上葉には欠刻がある。平たく切り株状の皮歯は、乱雑で密に並んでいる。背面は茶-灰色、松果体上に淡い点があり、黒い模様が頭部上側面から、胸鰭の下、腹鰭の上を通って尾柄の下まで続いている[3][4]。他のカラスザメ類のように種に特有の発光器を持つが、明瞭な帯を形成してはいない[5]カラスザメに似るが、より大型であり、螺旋弁の数が多い(本種は16-19、カラスザメは10-13)ことで区別できる[3]

生態[編集]

餌はイカ・小型のツノザメハダカイワシ魚卵[4]卵胎生卵黄栄養で育つ。出生時は全長16cm[1]。雄は全長31-39cm、雌は38-47cmで性成熟する[4]

人との関連[編集]

無害で経済価値もないが、深海漁で混獲されて廃棄されている。漁獲圧が高い証拠はなく、分布域も広いことからIUCN保全状況軽度懸念としている[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Horodysky, A.Z. and G.H. Burgess (2006). "Etmopterus bigelowi". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008. International Union for Conservation of Nature. 2009年9月19日閲覧
  2. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2009). "Etmopterus bigelowi" in FishBase. September 2009 version.
  3. ^ a b c d e f g Shirai, S. and H. Tachikawa (May 3, 1993). “Taxonomic Resolution of the Etmopterus pusillus Species Group (Elasmobranchii, Etmopteridae), with Description of E. bigelowi, n. sp.”. Copeia 1993 (2): 483–495. doi:10.2307/1447149. JSTOR 1447149. 
  4. ^ a b c d e McEachran, J.D. and J.D. Fechhelm (1998). Fishes of the Gulf of Mexico: Myxiniformes to Gasterosteiformes. University of Texas Press. p. 114. ISBN 0292752067 
  5. ^ Compagno, L.J.V., M. Dando and S. Fowler (2005). Sharks of the World. Princeton University Press. p. 95. ISBN 9780691120720