「暗峠」の版間の差分

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[[ファイル:暗峠 最大斜度地点.jpg|thumb|right|300px|峠に続く国道308号線大阪側の最急勾配31%の場所。]]
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暗峠越えの峠道は国道([[国道308号]])に指定されているとはいえ、一部は自動車1台が何とか通行できる程度に道幅は狭く、頂上付近では民家の軒先をかすめながら通行する箇所も存在する。大阪側ではきつい所で最大傾斜勾配31%<ref name="nikkei140215">{{Cite web |date=2014-02-15 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB3009F_S4A210C1000000/ |title=ベタ踏み坂より急 酷道308号、東大阪・暗峠をゆく |publisher=日本経済新聞 電子版 |accessdate=2015-07-17}}</ref>の急勾配がS字カーブになっており、慣れない者が走行すると登りきることができず立ち往生するほどともいわれる{{sfn|佐藤健太郎|2014|p=150|ps=、「最も急な坂」より。}}。[[ヤマハ・PAS|ヤマハ電動アシスト自転車PAS]]激坂チャレンジNo.1[https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/recommend/gekizaka/0001.html]によると、最も急な斜面の傾斜計での簡易測定では、傾斜角度26度 (勾配48.7%) であった<ref group="注釈" name=slope>通常、急斜面の坂道のある道路では、[[蛇行]]を入れた[[つづら折り]]となる。[[道路構造令#制動停止視距・追越視距|視距]]の確保や[[内輪差]]の影響が考慮されてカーブ(曲線部)では道路が拡幅されることもある。このため、2点間を直線道路とみなした高低差から求められる[[勾配]]は、カーブの坂道は直線の坂道よりも小さくなる傾向がある。一方で、斜度(傾斜角度)は任意の2点間の高低差から求めるので、カーブの内側は距離が必然的に短くなり斜度を測ると勾配よりも大きくなる。道交法により[[路側帯]]側を走らなければならない交通手段によっては、一般車両よりも昇降は酷であることを留意しなければならない。</ref>。
暗峠越えの峠道は国道([[国道308号]])に指定されているとはいえ、一部は自動車1台が何とか通行できる程度に道幅は狭く、頂上付近では民家の軒先をかすめながら通行する箇所も存在する。大阪側ではきつい所で最大傾斜勾配31%<ref name="nikkei140215">{{Cite web |date=2014-02-15 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB3009F_S4A210C1000000/ |title=ベタ踏み坂より急 酷道308号、東大阪・暗峠をゆく |publisher=日本経済新聞 電子版 |accessdate=2015-07-17}}</ref>の急勾配がS字カーブになっており、慣れない者が走行すると登りきることができず立ち往生するほどともいわれる{{sfn|佐藤健太郎|2014|p=150|ps=、「最も急な坂」より。}}。[[ヤマハ・PAS|ヤマハ電動アシスト自転車PAS]]激坂チャレンジNo.1[https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/recommend/gekizaka/0001.html]によると、最も急な斜面の傾斜計での簡易測定では、傾斜角度26度 (勾配48.7%) であった<ref group="注釈" name=slope>通常、急斜面の坂道のある道路では、[[蛇行]]を入れた[[つづら折り]]となる。[[道路構造令#制動停止視距・追越視距|視距]]の確保や[[内輪差]]の影響が考慮されてカーブ(曲線部)では道路が拡幅されることもある。このため、2点間を直線道路とみなした高低差から求められる[[勾配]]は、カーブの坂道は直線の坂道よりも小さくなる傾向がある。一方で、斜度(傾斜角度)は任意の2点間の高低差から求めるので、カーブの内側は距離が必然的に短くなり斜度を測ると勾配よりも大きくなる。道交法により[[路側帯]]側を走らなければならない交通手段によっては、一般車両よりも昇降は酷であることを留意しなければならない。</ref>。

大阪側からの場合、[[自然吸気エンジン]]の[[軽自動車]]や[[原動機付自転車|原付一種]]での走行は坂を登り切る程の出力が無いため、一部の高出力車種を除いて走破は基本的に不可能である。


写真のとおり峠のすぐ東側を[[信貴生駒スカイライン]]が通っているが、付近に出入口が無いため直接暗峠にアクセスすることはできない。
写真のとおり峠のすぐ東側を[[信貴生駒スカイライン]]が通っているが、付近に出入口が無いため直接暗峠にアクセスすることはできない。

2021年7月24日 (土) 10:46時点における版

暗峠
暗峠の石畳(奈良県側から)
暗峠の石畳
所在地 奈良県生駒市大阪府東大阪市
座標
暗峠の位置(日本内)
暗峠
北緯34度39分57秒 東経135度40分17秒 / 北緯34.66583度 東経135.67139度 / 34.66583; 135.67139座標: 北緯34度39分57秒 東経135度40分17秒 / 北緯34.66583度 東経135.67139度 / 34.66583; 135.67139
標高 455 m
山系 生駒山地
通過路 国道308号標識国道308号
大阪府道・奈良県道702号大阪枚岡奈良線
プロジェクト 地形
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地図
暗峠の位置。

暗峠(くらがりとうげ)は、奈良県生駒市西畑町大阪府東大阪市東豊浦町との境にある国道308号及び大阪府道・奈良県道702号大阪枚岡奈良線(重複)の。古くは闇峠とも書かれた。標高は455m。

概要

暗越奈良街道生駒山地における難所で、つづら折りの少ない直線的な急勾配が続く。特に大阪府側は、麓から峠まで約2.5kmにわたる勾配である。峠道の沿道や道端に、古寺や地蔵、石仏も多くあり、ハイキングコースとしても有名である[1]

峠の頂上には小さな集落があり、茶店もある。この付近の路面は江戸時代郡山藩により敷設された石畳となっている。この50mほどあるコンクリート舗装の石畳は、暗峠が急坂であることから、参勤交代で殿様が乗った籠が滑らないようにするために敷かれたものである[1]。なお、国道に指定されている道で石畳状の路面を呈するものは、国内で唯一この暗峠のみである[2]

「暗がり」の名称の起源は、樹木が鬱蒼と覆い繁り、昼間も暗い山越えの道であった説や、「椋嶺峠」が転じた説[1]、「鞍借り」、「鞍換へ」が訛って「暗がり」となったとする異説[要出典]もある。上方落語伊勢参宮神乃賑の枕では、「あまりに険しいので馬の鞍がひっくり返りそうになることから、鞍返り峠と言われるようになった」と語られている[2]

暗峠を通る暗越奈良街道は「日本の道100選」に選定されており、峠頂部の石畳の道端には、日本の道100選の顕彰碑が置かれている[1]今西祐行作の絵本『とうげのおおかみ』の舞台。

歴史

江戸時代に暗峠の村に大和郡山藩の本陣が置かれ、参勤交代路になっていた[1]。同時代に刊行された『河内名所図会』には、「世に暗峠という者非ならん……(中略)……生駒の山脈続て小椋山という。故尓椋ケ根の名あり、一説尓は此山乃松杉大ひ尓繁茂し、暗かりぬればかく名付くともいう。」と記されている。また、「大阪より大和及び伊勢参宮道となり、峠村には茶屋旅舎多し」とも記されており、江戸時代後期は庶民の伊勢参宮道となり、旅籠や茶屋が立ち並び賑わっていた[1]

井原西鶴の『世間胸算用』にはこの峠の近くで追い剥ぎが出たという記述がある。

1694年10月27日元禄7年9月9日)、松尾芭蕉が奈良から大坂へ向かう途中この峠を通った。このときに「菊の香に くらがり越ゆる 節句かな」という重陽の節句にちなんだ句が詠まれたといわれる[1]

1970年昭和45年)、暗峠を通る暗越奈良街道国道308号に指定された。

峠周辺の道路状況

暗峠(大阪府側から)。奈良県側に見えるガードレールがある道路は信貴生駒スカイライン。県境標識の上にある標識は直後にある旧道の幅員制限の標識(後に撤去・2000年頃撮影)。
峠に続く国道308号線大阪側の最急勾配31%の場所。

暗峠越えの峠道は国道(国道308号)に指定されているとはいえ、一部は自動車1台が何とか通行できる程度に道幅は狭く、頂上付近では民家の軒先をかすめながら通行する箇所も存在する。大阪側ではきつい所で最大傾斜勾配31%[3]の急勾配がS字カーブになっており、慣れない者が走行すると登りきることができず立ち往生するほどともいわれる[4]ヤマハ電動アシスト自転車PAS激坂チャレンジNo.1[3]によると、最も急な斜面の傾斜計での簡易測定では、傾斜角度26度 (勾配48.7%) であった[注釈 1]

大阪側からの場合、自然吸気エンジン軽自動車原付一種での走行は坂を登り切る程の出力が無いため、一部の高出力車種を除いて走破は基本的に不可能である。

写真のとおり峠のすぐ東側を信貴生駒スカイラインが通っているが、付近に出入口が無いため直接暗峠にアクセスすることはできない。 このため、大阪側からアクセスする際は車で国道308号を利用するか、枚岡駅から歩いて登るしかないが、生駒側からは平日のみ生駒市コミュニティバスたけまる号」の西畑線が南生駒駅から暗峠本陣跡前にある「暗峠」停留所まで運行[5]しており、それを使うと歩いて登ることなく生駒側の峠直前まで容易にアクセスできる。

脚注

注釈

  1. ^ 通常、急斜面の坂道のある道路では、蛇行を入れたつづら折りとなる。視距の確保や内輪差の影響が考慮されてカーブ(曲線部)では道路が拡幅されることもある。このため、2点間を直線道路とみなした高低差から求められる勾配は、カーブの坂道は直線の坂道よりも小さくなる傾向がある。一方で、斜度(傾斜角度)は任意の2点間の高低差から求めるので、カーブの内側は距離が必然的に短くなり斜度を測ると勾配よりも大きくなる。道交法により路側帯側を走らなければならない交通手段によっては、一般車両よりも昇降は酷であることを留意しなければならない。

参照

  1. ^ a b c d e f 「日本の道100選」研究会 2002, pp. 144–145.
  2. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 72.
  3. ^ ベタ踏み坂より急 酷道308号、東大阪・暗峠をゆく”. 日本経済新聞 電子版 (2014年2月15日). 2015年7月17日閲覧。
  4. ^ 佐藤健太郎 2014, p. 150、「最も急な坂」より。
  5. ^ 生駒コミュニティバス路線図【西畑線・有里線】 (PDF)生駒市、2016年4月9日閲覧。

参考文献

  • 佐藤健太郎『ふしぎな国道』講談社〈講談社現代新書〉、2014年10月20日。ISBN 978-4-06-288282-8 
  • 「日本の道100選」研究会 著、国土交通省道路局(監修) 編『日本の道100選〈新版〉』ぎょうせい、2002年6月20日。ISBN 4-324-06810-0 

関連項目