「シャシ (自動車)」の版間の差分

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シャシという用語は、英語らしい表現で言えば「frame フレーム」つまり日本語では「枠(わく)」のことであり、自動車の大枠(おおわく)、物理的な骨格となる[[フレーム形式 (自動車)|フレーム]]を指す。
シャシという用語は、英語らしい表現で言えば「frame フレーム」つまり日本語では「枠(わく)」のことであり、自動車の大枠(おおわく)、物理的な骨格となる[[フレーム形式 (自動車)|フレーム]]を指す。


シャシという用語は、もともとは[[フランス語]]の{{Lang-fr-short|châssis}}であり、それが英語圏でも使われるようになり、アルファベットの「a」の上にあるトンガリ帽子の形をしたアクセント記号が英語圏では脱落して{{Lang-en-short|chassis}}と綴られるようになったわけである。
シャシという用語は、もともとは[[フランス語]]の{{Lang-fr-short|châssis}} シャシ」であり、それが英語圏でも使われるようになり、アルファベットの「a」の上にあるトンガリ帽子の形をしたアクセント記号が英語圏では脱落してchassisと綴られるようになったわけである。


この意味でのシャシも、現在でも「シャシ」と呼ばれている。英語で呼びたい人は「フレーム」と呼ぶ。
この意味でのシャシも、現在でも「シャシ」と呼ばれている。英語で呼びたい人は「フレーム」と呼ぶ。

2021年3月13日 (土) 00:31時点における版

シャシ (: chassis[1]) という用語は多義的であり、

  • 自動車の基本骨格
  • 自動車の基本構造(基本骨格 + エンジン + 動力伝達装置 + サスペンションなど)
  • 自動車の車輪周囲の構造・機構(: undercarriage

上記のいずれかを指す。シャーシ、シャシー、シャーシーとも表記される。

つまり「車の基本骨格」を指す場合と、「基本骨格 + 走行に必要不可欠な装置群」を指す場合と、「「自動車の自動車の車輪周囲の構造・機構(足回り)」を指す場合がある。それぞれ別の意味ではあるので、ひとつひとつ解説する。

車の基本骨格部分

ランボルギーニ・アヴェンタドールのシャシ

シャシという用語は、英語らしい表現で言えば「frame フレーム」つまり日本語では「枠(わく)」のことであり、自動車の大枠(おおわく)、物理的な骨格となるフレームを指す。

シャシという用語は、もともとはフランス語の「: châssis シャシ」であり、それが英語圏でも使われるようになり、アルファベットの「a」の上にあるトンガリ帽子の形をしたアクセント記号が英語圏では脱落してchassisと綴られるようになったわけである。

この意味でのシャシも、現在でも「シャシ」と呼ばれている。英語で呼びたい人は「フレーム」と呼ぶ。

ローリング・シャーシ

なお自動車製造の歴史の変遷の中で、「chassis シャシ」という用語が骨格部分だけでなく、そこに動力系も組み足した状態も含めて指す、ということも(並行的に)行われるようになった。

だが、どちらも乱暴に「シャシ」と呼んでしまっては、概念どうしの区別がつかず、混乱が起きがちなので、動力系も組み込んだものに関しては「ローリング・シャーシ rolling chassis」と呼び分けるのが正式の呼び方である。(なお、rolling chassisは「走る状態のシャーシ」という意味の表現である)

ローリング・シャーシは、(上の節で説明した)シャシ(=フレーム、基本骨格)に、エンジントランスミッションドライブシャフトディファレンシャルステアリングギア、サスペンションなど、走るための一連の装置を組み込んだ(組み足した)『自動車としての基本構成部分』を指す。この意味でのシャシは漢字表記する場合は「車台(しゃだい)」となる。これと対比・区別される用語は「body ボデー」であり、漢字表記では「車体」である。

一部の人が「ローリング・シャーシ」を乱暴に「シャーシ」と略してしまうこともあるが、学術的に言えば、意味のとりちがえが起きて混乱が起きてしまうことがあるので、やはり「ローリング・シャーシ」と区別して呼び分けることが望ましい。

なおトラックなどの商用車を製造するメーカーは、シャシのみ、ダッシュボードから前(ボンネット)とシャシのみ(これは正式には「カウル・シャーシ」と呼び分ける)、運転席とシャシのみ(これは正式には「キャブシャーシ」と呼び分ける)といった状態でも車両を出荷している。こうした状態で出荷することで、別途特別仕様のボデーを架装することができる。こうした例としては、キャンピングカー消防自動車救急車など挙げられる。[t 1]

ローリング・シャーシの構成

なお、自動車業界では基本的には英語をカタカナにした表記を優先する習慣がある。漢字表現は混乱のもととなりがちなので、カタカナ表記の後にまわすのが一般的。

[t 2]

車の足回り部分

モノコック構造の車両では、フレームの役割はボデーが担うようになり、独立したフレームはなくなった。モノコックボデーにおいてのシャシとは、エンジン、パワートレインを除いたフロアパン、サスペンションアクスル)、ステアリングなどの「足回り」(: undercarriage アンダーキャリッジ)を指すことも、並行的に、行われるようになった。

英語版のen:undercarriageの記事も参照のこと。

なおこの意味で使う場合は、複数の概念を同一用語で指してしまうことによる大混乱を避けるために、従来の『車の基本構成部分』を指すためにはプラットフォームという用語が用いられることも多い。


歴史:自動車製造の歴史の中での位置づけの変遷

「シャシ」に代わる概念「プラットフォーム」の登場

自動車開発の基本構成部品の意味でのシャシは、ボデーを乗せ替えることで別の車種を派生させることができる。1970年代フォードが、異なる種類の車種を開発するベースとなる『基本構成部分』をまとめて、「プラットフォーム」(: platform)と呼び始めた。その後、『基本構成部分』を指すシャシに代わる言葉として「プラットフォーム」を用いる自動車メーカーも増えてきた。プラットフォームはボデー以外の走行にかかわる『基本構成部分』を指す概念的な用語であり、具体的なパーツを指すものではない。概念的といわれる大きな要素がボデーである。モノコック構造のボデーは車を構成する大きな一つの構造体である。従来フレームが担っていた骨格相当の役割はボデーの機能の一つであり、これはプラットフォームの一部で車の基本構造である。しかし、同じボデーだが外見的な見栄えにかかわる部分(スタイル)などは具体的な個別の車種で変更される部分であり、これはプラットフォームには含まれない。

モノコック構造の場合、具体的な『基本構成部分』を意味するシャシはなく、概念的な『基本構成部分』としてのプラットフォームとして、具体的なボデー、エンジン、トランスミッション、パワートレイン、そして『足回り部分』としてのシャシが位置づけられる。また、フレーム構造では、概念的な『基本構成部分』をプラットフォーム、具体的な『基本構成部分』をシャシと表現することがあるがほぼ同義となる。

漢字表記の「車台」は具体的な『基本構成部分』を意味するシャシの日本語訳として作られたが、プラットフォームを説明する場面で、特に学術系で、概念的な『基本構成部分』を意味するプラットフォームを指して「車台」という漢字表現が使われることがある。[t 3]

最近の状況

現在の乗用車の多くはモノコック構造を使用しており、フレームを使用している乗用車は数少なくなってきている。

ただし、トラックなどの重量物を扱う自動車ではフレーム構造が主流であり、ピックアップトラックやそれをベースとしたSUVでは現在でも使用されている。フレーム構造ではないSUV、つまり、モノコック構造の乗用車をベースに作られたSUVはクロスオーバー車、CUV、XUVなどと呼ばれるようになっている。

脚注

雑学
  1. ^ トリビア - なお、ボデーというものは、セパレートフレームマルチチューブラーフレーム方式では、構造という観点からは、まったく必要のないものであり、単にシャシ上に乗っている「覆い(おおい)」と言って良い。
  2. ^ 上記以外は、省略することも一般的。ただし、広義には以下のものも(「試験コースで走行するなら動力系が動けば十分だが、公道で走行するのには法規的には他のものだって必要だろう」というやや強引な理屈で)以下のものまで含めることがある。 など。
  3. ^ トリビア - ややこしいことに、通常、具体的なボディを意味する用語である「車体」も、プラットフォームの「車台」と対比される文脈では、概念的な意味での「車体」となる。
出典など


関連項目

  1. ^ なお、chassiは単複同形、つまり単数形複数形も全く同じ綴りである。