「栄養繁殖」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Hybrida (会話 | 投稿記録)
Hybrida (会話 | 投稿記録)
修正
15行目: 15行目:


== 栄養繁殖器官とその例 ==
== 栄養繁殖器官とその例 ==
=== 茎(地下茎)に由来 ===
=== 茎([[地下茎]])に由来 ===
; 鱗茎(りんけい、scaly bulb, bulb)
; 鱗茎(りんけい、scaly bulb, bulb)
: 短い地下茎に、栄養分を貯めた葉が密生したもの。[[園芸#花卉園芸|園芸]]でいう「球根」の多くは鱗茎である。 例:[[タマネギ]]、[[ニンニク]]、[[ユリ]]など[[ユリ科]]植物
: 短い地下茎に、栄養分を貯めた葉が密生したもの。[[園芸#生産園芸|園芸]]でいう「球根」の多くは鱗茎である。 例:[[タマネギ]]、[[ニンニク]]、[[ユリ]]など[[ユリ科]]植物


; 塊茎(かいけい、tuber)
; 塊茎(かいけい、tuber)
: 伸びた[[地下茎]]の先端が栄養分を溜め肥大したもの。  例:[[ジャガイモ]]、[[シクラメン]]
: 伸びた地下茎の先端が栄養分を溜め肥大したもの。  例:[[ジャガイモ]]、[[シクラメン]]


; 球茎(きゅうけい、corm, soid corm)
; 球茎(きゅうけい、corm, soid corm)
33行目: 33行目:
=== 根に由来 ===
=== 根に由来 ===
; 塊根(かいこん、tuberous root, root tuber)
; 塊根(かいこん、tuberous root, root tuber)
: 根が栄養分を溜め肥大したもの。  例:[[サツマイモ]]、[[ヤマイモ]]
: 根が栄養分を溜め肥大したもの。  例:[[サツマイモ]]


=== その他 ===
=== その他 ===
; 葉
; 葉(は、leaf)
: 一部の植物では、葉の周辺部から植物体ができる。 例:[[カランコエ]]
: 一部の植物では、葉の周辺部から植物体ができる。 例:[[カランコエ]]


43行目: 43行目:


; 担根体(たんこんたい)
; 担根体(たんこんたい)
: 根でも茎でもない、ヤマノイモ属に特有の器官。 例:[[ヤマイモ]]などヤムイモ類。
: 根でも茎でもない、ヤマノイモ属に特有の器官。 例:[[ヤマイモ]]などヤムイモ類。


; [[球根]](きゅうこん、bulb)
; [[球根]](きゅうこん、bulb)
: 球形をした塊茎・球茎・鱗茎・塊根・担根体の総称(園芸用語)
: 塊茎・球茎・鱗茎・塊根・根茎・担根体の総称(園芸用語)


== 園芸で用いる栄養繁殖 ==
== 園芸で用いる栄養繁殖 ==
野菜(蔬菜)・果樹・花(花卉)の[[園芸]]各分野や、ガーデニング(家庭園芸)で栄養繁殖による増殖が広く行われている。
野菜(蔬菜)・果樹・花(花卉)の[[園芸]]各分野や、ガーデニング(家庭園芸)で栄養繁殖による増殖が広く行われている。
前記の栄養繁殖器官を種苗として用いるほかにも、[[挿し木]]([[葉挿し]]を含む)、[[取り木]]、[[茎伏せ]]、[[株分け]]などの手法がある。また、[[1980年]]代から、[[組織培養]]によって作成された[[クローン]]苗も一部では利用されている。
前記の栄養繁殖器官を種苗として用いるほかにも、[[挿し木]](葉挿しを含む)、[[取り木]]、[[茎伏せ]]、[[株分け]]などの手法がある。また、[[1980年]]代から、[[組織培養]]によって作成された[[クローン]]苗も一部では利用されている。


[[接ぎ木]]は人為的に[[キメラ]]植物を作る技術であるが、[[果樹]]など[[種子]]での増殖が難しい[[木本]]植物の増殖にも用いられる。このような木本植物の[[接ぎ木]]は、一種の人為的な栄養繁殖と捉えることができる。
[[接ぎ木]]は人為的に[[キメラ]]植物を作る技術であるが、[[果樹]]など[[種子]]での増殖が難しい[[木本]]植物の増殖にも用いられる。このような木本植物の[[接ぎ木]]は、一種の人為的な栄養繁殖と捉えることができる。

2006年9月26日 (火) 16:00時点における版

カランコエ(Kalanchoë daigremontiana)の葉の周辺から芽生えた新しい個体。

栄養繁殖(えいようはんしょく、英語:vegetative propagation )とは、植物無性生殖の1つ。栄養生殖(vegetative reproduction )とも呼ぶ。 種子を経由せずになどの栄養器官から、次の世代の植物が繁殖すること。


概要

栄養繁殖とは、植物の無性生殖の1つで、栄養生殖とも呼ぶ。根・茎・葉などから、次の世代の植物が繁殖すること。

植物の繁殖様式の1つとして観察され、特に種子繁殖力が低い高次倍数体では一般的な繁殖様式である。 農業でも作物種苗増殖に広く用いられており、イモ類やイチゴの例がある。以下は主に農業(園芸)の観点から、栄養繁殖について記述する。


栄養繁殖器官とその例

茎(地下茎)に由来

鱗茎(りんけい、scaly bulb, bulb)
短い地下茎に、栄養分を貯めた葉が密生したもの。園芸でいう「球根」の多くは鱗茎である。 例:タマネギニンニクユリなどユリ科植物
塊茎(かいけい、tuber)
伸びた地下茎の先端が栄養分を溜め肥大したもの。  例:ジャガイモシクラメン
球茎(きゅうけい、corm, soid corm)
地下茎の基部が栄養分を貯めて球状になったもの。  例:サトイモクワイグラジオラス
根茎(こんけい、rhizome, rootstalk)
水平方向に伸びた地下茎が肥大化したもの。  例: ハスタケ
ランナー(runner)
匍匐枝(ほふくし)、走出枝(そうしゅつし)とも言う。地上に伸びるが地下茎の一種。  例:シダ植物の一部、イチゴユキノシタ

根に由来

塊根(かいこん、tuberous root, root tuber)
根が栄養分を溜め肥大したもの。  例:サツマイモ

その他

葉(は、leaf)
一部の植物では、葉の周辺部から植物体ができる。 例:カランコエ
零余子(むかご、珠芽 brood bud, 鱗芽 bulbil, 肉芽 aerial tuber)
葉の付け根にできる芽が栄養分を貯めて球状となったもの。葉に由来する珠芽・鱗芽、茎に由来する肉芽がある。 例:ヤマイモ、ムカゴイラクサ、オニユリ
担根体(たんこんたい)
根でも茎でもない、ヤマノイモ属に特有の器官。 例:ヤマノイモなどヤムイモ類。
球根(きゅうこん、bulb)
塊茎・球茎・鱗茎・塊根・根茎・担根体の総称(園芸用語)

園芸で用いる栄養繁殖

野菜(蔬菜)・果樹・花(花卉)の園芸各分野や、ガーデニング(家庭園芸)で栄養繁殖による増殖が広く行われている。 前記の栄養繁殖器官を種苗として用いるほかにも、挿し木(葉挿しを含む)、取り木茎伏せ株分けなどの手法がある。また、1980年代から、組織培養によって作成されたクローン苗も一部では利用されている。

接ぎ木は人為的にキメラ植物を作る技術であるが、果樹など種子での増殖が難しい木本植物の増殖にも用いられる。このような木本植物の接ぎ木は、一種の人為的な栄養繁殖と捉えることができる。


種苗管理上の問題

栄養繁殖は、短かい期間に同じ遺伝子型の作物を増殖させることができるが、一度ウイルスに感染すると、そのウイルスを保持したまま増殖することになる。ウイルスに感染した作物は収量や品質が劣るので、対策が必要になる。多くの作物ではその特性に変化がおきないように公的機関が大元になる種苗(原々種・原種)を生産し、それをさらに増殖した後に一般に配布する。一度ウイルス感染が起きてしまったものに対して、組織培養によるウイルスの除去(ウイルスフリー化)が行われることもある。


栄養繁殖ではない植物の無性生殖

植物では、体細胞から不定胚発生をするアポミクシス(無性胚発生)がギニアグラスなどで、珠心細胞が胚発生する多胚現象がカンキツマンゴーで観察されている。


関連項目