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幼虫はトウワタの葉を食べることによって、トウワタのもつ[[アルカロイド]]を体内に蓄えて[[毒]]化する。この毒は蛹や成虫も持ち続けているので、鳥などがオオカバマダラを捕食すると間もなく苦しみはじめ、ついには吐き出してしまう。オオカバマダラは幼虫、蛹、成虫どれも鮮やかな体色をしているが、これは捕食者に毒を持っていることを知らせる[[警戒色]]といえる。[[カバイロイチモンジ]] ([[:en:Viceroy butterfly|Viceroy]]、''Limenitis archippus'')など、 オオカバマダラの翅色に似せた[[擬態]]([[擬態#ベイツ型擬態|ベイツ型擬態]])をすることで身を守るチョウも知られている。また、分布域の南部では同属の他のチョウと分布が重なるため、[[擬態#ミューラー型擬態|ミューラー型擬態]]も起こっている。
幼虫はトウワタの葉を食べることによって、トウワタのもつ[[アルカロイド]]を体内に蓄えて[[毒]]化する。この毒は蛹や成虫も持ち続けているので、鳥などがオオカバマダラを捕食すると間もなく苦しみはじめ、ついには吐き出してしまう。オオカバマダラは幼虫、蛹、成虫どれも鮮やかな体色をしているが、これは捕食者に毒を持っていることを知らせる[[警戒色]]といえる。[[カバイロイチモンジ]] ([[:en:Viceroy butterfly|Viceroy]]、''Limenitis archippus'')など、 オオカバマダラの翅色に似せた[[擬態]]([[ベイツ型擬態]])をすることで身を守るチョウも知られている。また、分布域の南部では同属の他のチョウと分布が重なるため、[[擬態#ミューラー型擬態|ミューラー型擬態]]も起こっている。
[[画像:Monarch flock.jpg|thumb|200px|木の枝に鈴なり状態に群がった成虫]]
[[画像:Monarch flock.jpg|thumb|200px|木の枝に鈴なり状態に群がった成虫]]
[[Image:Monarch Butterfly Danaus plexippus on Milkweed Hybrid 2800px.jpg|thumb|200px|right|トウワタにとまるオオカバマダラ]]
[[Image:Monarch Butterfly Danaus plexippus on Milkweed Hybrid 2800px.jpg|thumb|200px|right|トウワタにとまるオオカバマダラ]]

2020年5月6日 (水) 11:49時点における版

オオカバマダラ
オオカバマダラ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目 Lepidoptera
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: タテハチョウ科 Nymphalidae
亜科 : マダラチョウ亜科 Danainae
: マダラチョウ族 Danaini
: オオカバマダラ属 Danaus
: オオカバマダラ
D. plexippus
学名
Danaus plexippus
(L., 1758)
和名
オオカバマダラ
英名
Monarch
亜種
  • D. p. plexippus
  • D. p. megalippe

オオカバマダラ(大樺斑・学名Danaus plexippus )は、チョウ目タテハチョウ科マダラチョウ亜科に分類されるチョウの一種。北アメリカでは渡り鳥のように渡りをするチョウとして有名。

特徴

成虫の前翅長は5cmほど。翅は橙色で翅脈と縁が黒い。黒の縁取りの上には小さな白い斑点がある。オスとメスを比較すると、オスは後翅の腹部に近い部分に黒い斑点がある。メスにはこの黒い斑点がなく、黒い翅脈がオスよりも太い。ゆっくりと飛ぶが飛行能力にはすぐれていて、あまり羽ばたかずに気流に乗って遠距離を飛び続けることができる。

おもに北アメリカカナダ南部から南アメリカ北部にかけて分布するが、西インド諸島太平洋諸島オーストラリアニュージーランドなど)、カナリア諸島マデイラ諸島にも分布する。日本では小笠原諸島南西諸島で発見された記録があるが、これらは定着しておらず、季節風台風などに乗って日本へやってきた「迷蝶」とみられる。なお、ロシアアゾレス諸島イギリススウェーデンスペインでも、迷蝶としてしばしば記録される。

メスを見つけたオスは尾部から毛の束を出し、この毛の束からフェロモンを放出しながらメスの周囲を飛び回る。交尾の終わったメスは幼虫食草であるトウワタなどのガガイモ科植物の上に産卵する。幼虫は白黒の横しま模様で、頭部付近と尾部付近に黒い突起を持つ。また、は青緑色で、羽化間近になると金属光沢のある灰黒色となる。

幼虫はトウワタの葉を食べることによって、トウワタのもつアルカロイドを体内に蓄えて化する。この毒は蛹や成虫も持ち続けているので、鳥などがオオカバマダラを捕食すると間もなく苦しみはじめ、ついには吐き出してしまう。オオカバマダラは幼虫、蛹、成虫どれも鮮やかな体色をしているが、これは捕食者に毒を持っていることを知らせる警戒色といえる。カバイロイチモンジViceroyLimenitis archippus)など、 オオカバマダラの翅色に似せた擬態ベイツ型擬態)をすることで身を守るチョウも知られている。また、分布域の南部では同属の他のチョウと分布が重なるため、ミューラー型擬態も起こっている。

木の枝に鈴なり状態に群がった成虫
トウワタにとまるオオカバマダラ

大移動

北アメリカに分布する基亜種D. p. plexippusは、南北3500kmほどに及ぶ分布域内で、1年のうちに北上と南下を行うことが知られている。ただし南下は1世代で行われるが、北上は3世代から4世代にかけて行われるので、同じ個体が移動する渡り鳥のおこなう渡りとは厳密には異なる。

春にはカリフォルニア州からメキシコにかけてで見られる。これらは世代交代を繰り返しながら徐々に北上し、夏になると北アメリカ中部まで達する。そして8月頃、北アメリカ中部で羽化した個体が南下をはじめる。この世代は多くの花から蜜を吸い、体内に脂肪を大量に蓄える。この脂肪をエネルギーにして、春に移動が始まったカリフォルニアからメキシコにかけての地域を目指す。ロッキー山脈から東ではメキシコのミチョアカン州で越冬し、西ではカリフォルニア州の中部から南部で越冬する。10月頃にはこの地域の森林地帯で、木の枝に鈴なり状態となったオオカバマダラがみられる。このような木ではチョウの重みで枝が折れることもある。

南下する世代は、北上する世代よりも寿命が長い。この大移動にまつわる報告・研究も数多いが、大移動の理由の一つとしては「幼虫の食草を枯渇させないため」が挙げられる。

米国フロリダ州からカリブ海、アマゾン川流域に分布するD. p. megalippe亜種は渡りをしない。


保護の現状

越冬地となる森林が多く伐採されたこともあり、オオカバマダラは近年個体数を大幅に減らしている。そのため今では人間がオオカバマダラを生むということもおこなわれている。

人間との関係

その目をひく姿と興味深い生態から、アングロアメリカでは広く愛されている。アラバマ州アイダホ州イリノイ州テキサス州の州の昆虫[1]およびミネソタ州バーモント州ウェストバージニア州の州のチョウ[2]に指定されている。カナダの国虫であり、1989年にはアメリカ合衆国の国虫にノミネートされた。

ペットとして、また教材として飼育されることもあり、結婚式で成虫を大量に放つことも人気がある。昆虫学者は愛蝶家の協力により北アメリカ各地で秋に捕獲した成虫の翅に標識シールを貼って放し、渡りの生態を調査している。

カリフォルニア州とメキシコでは、越冬地をエコツーリズムに役立てている例もある。

テレビ放映

大移動とメキシコでの保護活動を紹介する仏加共同制作のテレビ番組が2007年にNHKで放映されて、その後2013年5月2日に再放送された。 そして、同年10月24日NHK BSプレミアムでハイビジョン フロンティア特集「神秘のチョウ 驚異の大冒険」として再々放送された。 カナダやアメリカ北部から5千㎞を越えて、オオカバマダラが飛来するメキシコ・ミチョアカン州では、死者が家族の元に帰るものとして賑やかな祭りが催され観光化している。 また、渡りの際に様々な環境の変化によって年々その数が減ってきていると警鐘している。

参考文献

  1. ^ List of U.S. State Insects 米国の州の昆虫リスト(英文)
  2. ^ List of U.S. State Butterflies 米国の州の蝶リスト(英文)