「大回転」の版間の差分
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FIS競技規則に基づいた記述・脚注の変更(今回はスキーに関する物のみ) |
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'''大回転'''(だいかいてん)は、[[スキー]]競技または[[スノーボード]]競技の[[アルペンスキー|アルペン]]種目の1つ。'''ジャイアント・スラローム'''({{Lang-en-short|giant slalom}})、'''GS'''、'''リーゼンスラローム'''({{Lang-de-short|Riesenslalom}})とも称する。 |
'''大回転'''(だいかいてん)は、[[スキー]]競技または[[スノーボード]]競技の[[アルペンスキー|アルペン]]種目の1つ。'''ジャイアント・スラローム'''({{Lang-en-short|giant slalom}})、'''GS'''、'''リーゼンスラローム'''({{Lang-de-short|Riesenslalom}})とも称する。 |
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同じ「大回転」と称しているが、スキーとスノーボードの競技内容・規則・コース設定には違いがあるので、ここではそれぞれについて記述する。 |
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平均斜度15度〜20度の中斜面・急斜面を、おおむね25mから30m間隔で設置された旗門を交互に通過しながら滑り、2本の合計タイムを争う。方向転換数(ターン数)はスタートからゴールまでの標高差で決まり、標高差の11%から15%の範囲の数となる。 |
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コースには両側の旗門を結んで[[滑降]]、[[スーパー大回転]]と同様に方向を示すカラーペイントが雪上に施されることがある。選手はこの左右のラインの間を滑り降ることになる。 |
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== スキー == |
== スキー == |
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アルペンスキーでは、[[回転_(スキー)|回転]]に近い小刻みのターン技術と、[[スーパー大回転]]の持つスピード感を併せ持ったダイナミックな種目で、人気が高い。アルペンスキーの基本の種目とされることがある。他の種目同様に、[[カービングスキー]]の登場によって競技技術に革新的変化が起こった。スーパー大回転・[[滑降]]が高速系種目と呼ばれるのに対して回転・大回転は技術系種目と呼ばれる。 |
アルペンスキーでは、[[回転_(スキー)|回転]]に近い小刻みのターン技術と、[[スーパー大回転]]の持つスピード感を併せ持ったダイナミックな種目で、人気が高い。アルペンスキーの基本の種目とされることがある。他の種目同様に、[[カービングスキー]]の登場によって競技技術に革新的変化が起こった。スーパー大回転・[[滑降]]が高速系種目と呼ばれるのに対して回転・大回転は技術系種目と呼ばれる。 |
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=== コース === |
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コースの設定は規定により、それぞれ次の通りとなっている<ref name="FIS-Rule-01">以下、特記事項以外については{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/edb0022bb0d882c08a7107768221e869.pdf 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版]}}900「大回転(Giant Slalom)」各項目より。</ref>。 |
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<ref name="SAJ-Rule-01">以下、最新の用具に関する規則についてはSAJウェブサイト中の{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/df8394ea0a6cddc1ed73f87d6303686f.pdf 【アルペン】2019/20シーズン スキー用具に係る国内運用ルールについて]}}より参照した。</ref>上述したように[[カービングスキー]]の登場による技術的革新により滑走速度の高速化の傾向にあり、選手の負傷数の増加が問題となっていた。そこで、意図的に過度に滑走速度が上昇しないよう、スキーの長さ(以下、全長)、回転半径(ラディウス〈R〉、スキーのサイドカーブのきつさ)等に規制([[国際スキー連盟|FIS]]競技規則)が設定され、度々改定が行われている。 |
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'''標高差''' |
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当初は、FIS公認レースおよび[[全日本スキー連盟|SAJ]]の公認レースでの全長は男子185cm以上(カテゴリーによっては180㎝以上)、女子180cm以上(カテゴリーによっては175㎝以上)、回転半径はR≧21mとなっていた。 |
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* 通常の[[国際スキー連盟|FIS]]競技会(下記以外) |
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2008シーズンでは一部、2009シーズンからは全ての公認大会で、回転半径は男子R≧27m、女子R≧23mが適用されていた。 |
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: 男子250[[メートル|m]] - 450m、女子250m - 400m |
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* [[冬季オリンピック|オリンピック]]・[[アルペンスキー世界選手権|世界スキー選手権]]・[[アルペンスキーワールドカップ|ワールドカップ]] |
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: 男女とも最低300m |
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* ユースコース |
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: 男女とも200m - 350m、日本国ではK1(男女とも)140m - 300m、K2(男女とも)160m - 350m |
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* エントリーリーグ(ENL、男女とも) |
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: 200m - 250m |
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'''旗門''' |
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2013シーズンからは一部、2014シーズンからは全ての公認大会で全長は男子195cm以上(カテゴリーによっては190㎝以上)、女子188cm以上(カテゴリーによっては183㎝以上)、回転半径は男子R≧35m、女子R≧30mが適用されていた。 |
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アルペン競技で旗門に使われるポールは'''「スラロームポール」'''と称されていて、'''「リジットポール(屈曲しないポール)」'''と'''「フレックスポール(屈曲する可倒式のポール)」'''の2種類がある。大回転では、ターニングゲート(ターン内側の旗門)のターニングポール(ターニングゲートコース側のポール)にフレックスポールとアウトサイドポール(ターニングゲート外側のポール)にリジットポールを使ってフラッグ(旗)を取り付け、アウトサイドゲート(外側の旗門)は全てリジットポールを2本使用してフラッグ(旗)を取り付ける事が定められ、赤と青を交互に設置しなければならない。また、旗門の設置場所に必ずカラーペイントのマーキングを行い、全競技中は最後まで消えないようにすると定めている<ref name="FIS-Rule-02">{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/edb0022bb0d882c08a7107768221e869.pdf 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版]}}614.1.2.2「旗門のマーキング」より。</ref>。 |
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2019シーズンからは、コンチネンタルカップ(COC)において全長は男子195cm以上・女子188cm以上、その他カテゴリーにおいて全長は男子188㎝以上・女子183㎝以上、回転半径は全てのカテゴリーで男子R≧35m、女子R≧30mが適用されている。 |
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方向転換数は標高差から計算され(小数点以下は切り下げか繰り上げ)、FISレベルでは11 - 15%、U-16 - 14では13 - 17%、エントリーリーグ(ENL)では13 - 15%の数としている。 |
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ユースカテゴリーにおいてK2(U16、高校1年早生まれ・中学2年 - 1 年)では男子・女子ともに全長は188㎝以下、回転半径はR≧17m、K1(U14、小学5年 - 6年)では男子・女子ともに全長は130㎝以上(FISカテゴリーの場合、SAJカテゴリーでは188㎝以下を推奨)、回転半径はR≧14m(FISカテゴリーの場合、SAJカテゴリーではR≧17mを推奨)となっている。 |
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旗門幅は4m - 8mとしていて、連続する2旗門の最も近いポール間距離は10m、旗門のターニングポールの間隔は27m以上でなければならない。 |
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このほかにもスキー板の最大高さ(プレートとビンディングを含めた合計数値)やスキーブーツの最大高さ(インソール含む)が設定されている。 |
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旗門に使われるポールは、ターニングゲート(コース内側の旗門)のターニングポール(内側のポール)にフレックスポール(可倒式のポール)を、それ以外はリジッドポール(通常の折れ曲がらないポール)を使い、旗門に使われるフラッグ(旗)は選手衝突時に簡単に結び目が解ける・抜ける・破れるなど、絡まっても危険を生じない物である事が定められている<ref name="FIS-Rule-03">{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/edb0022bb0d882c08a7107768221e869.pdf 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版]}}690「大回転とスーパーGのゲートフラッグ」各項目より。</ref>。 |
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ヘルメットは装着義務があり、FISによる安全規格基準が定められ、現在は「FISステッカーRH2013」適用品のみ認められている。 |
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{{See also|アルペンスキー#アルペン競技・全日本スキー技術選手権大会におけるヘルメット}} |
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旗門設置の例外として、FISレベルの競技会を行う場合のみにおいて'''シングルジャイアントスラローム'''と呼ばれる、アウトサイドゲート(コース外側の旗門)を設置しない旗門設定を行う競技会が行われる事があり、この場合はFISによるシングルジャイアントスラローム競技の規則を適用の上で、アウトサイドゲートを仮想とした上で大回転競技の全てのルールを適用している。 |
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なお、FISやSAJ以外の主催競技会についてはこの限りではない事もあるが、安全面等から規則がFISやSAJのものに準じるケースはある。 |
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選手はこれらの規定等によって設置されたコースを通常は2本滑走するが、次の例外がある。 |
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* {{commonscat-inline|Giant slalom skiing|アルペンスキー大回転}} |
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# U14(K1)カテゴリーの競技会において、主催者側が滑走数を1本と決定した場合<ref name="FIS-Rule-04">{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/edb0022bb0d882c08a7107768221e869.pdf 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版]}}901.1.4「大回転(Giant Slalom)・ユースコース」より。</ref> |
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# ジュリーにより、2本目のスタート人数を半分まで減らす事が認められている<ref name="FIS-Rule-05">{{PDFlink|[http://saj-wp.appmlj.com/wp-content/uploads/edb0022bb0d882c08a7107768221e869.pdf 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版]}}906.2「大回転(Giant Slalom)・2本目の制限」より。</ref>ため、その決定によって2本目のスタートから除外された選手 |
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== スノーボード == |
== スノーボード == |
2019年12月17日 (火) 07:15時点における版
大回転(だいかいてん)は、スキー競技またはスノーボード競技のアルペン種目の1つ。ジャイアント・スラローム(英: giant slalom)、GS、リーゼンスラローム(独: Riesenslalom)とも称する。
同じ「大回転」と称しているが、スキーとスノーボードの競技内容・規則・コース設定には違いがあるので、ここではそれぞれについて記述する。
スキー
アルペンスキーでは、回転に近い小刻みのターン技術と、スーパー大回転の持つスピード感を併せ持ったダイナミックな種目で、人気が高い。アルペンスキーの基本の種目とされることがある。他の種目同様に、カービングスキーの登場によって競技技術に革新的変化が起こった。スーパー大回転・滑降が高速系種目と呼ばれるのに対して回転・大回転は技術系種目と呼ばれる。
コース
コースの設定は規定により、それぞれ次の通りとなっている[1]。
標高差
- 通常のFIS競技会(下記以外)
- 男子250m - 450m、女子250m - 400m
- 男女とも最低300m
- ユースコース
- 男女とも200m - 350m、日本国ではK1(男女とも)140m - 300m、K2(男女とも)160m - 350m
- エントリーリーグ(ENL、男女とも)
- 200m - 250m
旗門
アルペン競技で旗門に使われるポールは「スラロームポール」と称されていて、「リジットポール(屈曲しないポール)」と「フレックスポール(屈曲する可倒式のポール)」の2種類がある。大回転では、ターニングゲート(ターン内側の旗門)のターニングポール(ターニングゲートコース側のポール)にフレックスポールとアウトサイドポール(ターニングゲート外側のポール)にリジットポールを使ってフラッグ(旗)を取り付け、アウトサイドゲート(外側の旗門)は全てリジットポールを2本使用してフラッグ(旗)を取り付ける事が定められ、赤と青を交互に設置しなければならない。また、旗門の設置場所に必ずカラーペイントのマーキングを行い、全競技中は最後まで消えないようにすると定めている[2]。
方向転換数は標高差から計算され(小数点以下は切り下げか繰り上げ)、FISレベルでは11 - 15%、U-16 - 14では13 - 17%、エントリーリーグ(ENL)では13 - 15%の数としている。
旗門幅は4m - 8mとしていて、連続する2旗門の最も近いポール間距離は10m、旗門のターニングポールの間隔は27m以上でなければならない。
旗門に使われるポールは、ターニングゲート(コース内側の旗門)のターニングポール(内側のポール)にフレックスポール(可倒式のポール)を、それ以外はリジッドポール(通常の折れ曲がらないポール)を使い、旗門に使われるフラッグ(旗)は選手衝突時に簡単に結び目が解ける・抜ける・破れるなど、絡まっても危険を生じない物である事が定められている[3]。
旗門設置の例外として、FISレベルの競技会を行う場合のみにおいてシングルジャイアントスラロームと呼ばれる、アウトサイドゲート(コース外側の旗門)を設置しない旗門設定を行う競技会が行われる事があり、この場合はFISによるシングルジャイアントスラローム競技の規則を適用の上で、アウトサイドゲートを仮想とした上で大回転競技の全てのルールを適用している。
選手はこれらの規定等によって設置されたコースを通常は2本滑走するが、次の例外がある。
- U14(K1)カテゴリーの競技会において、主催者側が滑走数を1本と決定した場合[4]
- ジュリーにより、2本目のスタート人数を半分まで減らす事が認められている[5]ため、その決定によって2本目のスタートから除外された選手
スノーボード
アルペンスノーボードでは1998年(平成10年)長野オリンピックより大回転が公式競技となり、2002年ソルトレイクシティオリンピックよりそれに代わる形でパラレル大回転が、冬季オリンピック公式競技となっている(スノーボードは左足が前になるレギュラースタンスと、右足が前になるグーフィースタンスとがあるため、アルペンスキーとは違いパラレル大回転では左右対称の旗門設定になっている)。
この種目は大回転競技が一つのコースを全選手が1人ずつ滑るのに対し、並行して設定されたコースを2人が並んで同時に滑走する。まずは1人で1本滑ったタイムで予選を行い、上位16位までが決勝トーナメントへ進出。決勝トーナメントでは2名が同時に滑走し、早い者が勝ち抜けていく。タイムが重要であることは変わらないが、競技の展開上勝者と敗者、速いか遅いかが一目瞭然で、観戦の娯楽性がより強い競技になっている。
脚注
- ^ 以下、特記事項以外については【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版 (PDF) 900「大回転(Giant Slalom)」各項目より。
- ^ 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版 (PDF) 614.1.2.2「旗門のマーキング」より。
- ^ 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版 (PDF) 690「大回転とスーパーGのゲートフラッグ」各項目より。
- ^ 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版 (PDF) 901.1.4「大回転(Giant Slalom)・ユースコース」より。
- ^ 【アルペン】競技規則(ICR) 2018年7月版 (PDF) 906.2「大回転(Giant Slalom)・2本目の制限」より。