「軌道離心率」の版間の差分

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[[地球]]の軌道離心率は[[惑星]]間[[重力]]の相互作用により、長年の間にほぼ0から約0.05までの間を振れており、現在は約0.0167である([[月]]は0.0549)。[[水星]]は0.2056と、[[太陽系]]の他の惑星と比べてかなり大きい値を持つ。[[準惑星]]の[[冥王星]]はさらに大きく0.248である。太陽系の[[小惑星]]のほとんどは0から0.35の間で、その平均は0.17であるが、比較的大きい値を持つものは、[[木星]]の強力な重力の影響による。太陽系の中で最も値が小さいのは、[[海王星]]の[[海王星の衛星|衛星]][[トリトン (衛星)|トリトン]]の0.000016である。
[[地球]]の軌道離心率は[[惑星]]間[[重力]]の相互作用により、長年の間にほぼ0から約0.05までの間を振れており、現在は約0.0167である([[月]]は0.0549)。[[水星]]は0.2056と、[[太陽系]]の他の惑星と比べてかなり大きい値を持つ。[[準惑星]]の[[冥王星]]はさらに大きく0.248である。太陽系の[[小惑星]]のほとんどは0から0.35の間で、その平均は0.17であるが、比較的大きい値を持つものは、[[木星]]の強力な重力の影響による。太陽系の中で最も値が小さいのは、[[海王星]]の[[海王星の衛星|衛星]][[トリトン (衛星)|トリトン]]の0.000016である。


[[彗星]]の軌道離心率はほぼ1に近い。[[周期彗星]]は非常に長細い楕円軌道で、1よりわずかに小さく、例えば[[ハレー彗星]]は0.967である。[[非周期彗星]]は放物線に近い軌道を描き、やはり1に近い。例えば[[ヘール・ボップ彗星]]は0.995086、[[マックノート彗星 (C/2006 P1)|マックノート彗星]]は1.000030である。前者の値は1より小さいため実は楕円軌道で、西暦4380年頃に再び現れる。一方後者は[[双曲線軌道]]であり、太陽系を離れれば二度と戻ることはない。[[1980年]]に発見された[[ボーエル彗星]]は1.058と、太陽系内で観測された天体の中での最大記録であったが、[[2017年]]に発見された観測史上初の[[恒星間天体]]である[[オウムアムア (恒星間天体)|オウムアムア]]は1.199と極端な双曲線軌道を描いており、最大値を大きく更新した。
[[彗星]]の軌道離心率はほぼ1に近い。[[周期彗星]]は非常に長細い楕円軌道で、1よりわずかに小さく、例えば[[ハレー彗星]]は0.967である。[[非周期彗星]]は放物線に近い軌道を描き、やはり1に近い。例えば[[ヘール・ボップ彗星]]は0.995086、[[マックノート彗星 (C/2006 P1)|マックノート彗星]]は1.000030である。前者の値は1より小さいため実は楕円軌道で、西暦4380年頃に再び現れる。一方後者は[[双曲線軌道]]であり、太陽系を離れれば二度と戻ることはない。[[1980年]]に発見された[[ボーエル彗星]]は1.058と、太陽系内で観測された天体の中での最大記録であったが、[[2017年]]に発見された観測史上初の[[恒星間天体]]である[[オウムアムア (恒星間天体)|オウムアムア]]は1.199と極端な双曲線軌道を描いており、最大値を大きく更新した。その後2019年に発見された2番目の恒星間天体である[[ボリソフ彗星 (2I/Borisov)|ボリソフ彗星]]は離心率がおよそ 3.3 であり、最大値をさらに更新した。


観測された中で最も値が小さい(=真円に近い)軌道を持つ天体は、[[白色矮星]][[EQ J190947-374414]]と[[連星]]になっている[[パルサー]][[PSR J1909-3744]]の0.000000135である。
観測された中で最も値が小さい(=真円に近い)軌道を持つ天体は、[[白色矮星]][[EQ J190947-374414]]と[[連星]]になっている[[パルサー]][[PSR J1909-3744]]の0.000000135である。

2019年10月2日 (水) 06:07時点における版

離心率と円錐曲線

軌道離心率(きどうりしんりつ、英語:orbital eccentricity)は、天体の軌道の絶対的な形を決める重要なパラメータである。軌道離心率は、この形がどれだけ円から離れているかを表す値であると言う事ができる。

標準的な条件下で、軌道離心率の値により、楕円放物線双曲線が定義できる。

  • 円:
  • 楕円:
  • 放物線:
  • 双曲線:

となる。

簡単な証明によって、楕円ではsin−1eが、円から離心率eの楕円への投影角を与えることが示される。これにより、水星の軌道の離心率0.2056より、円からこの軌道への投影角11.86°が簡単に計算できる。コーヒーカップなど真上から見たら円のものを傾けて見ると楕円に見えるが、この傾けた大きさが投影角である。

計算

離心率は、離心率ベクトルの絶対値として表される。

ここでは離心率ベクトルである。

楕円軌道では、近点距離 遠点距離 でも表現できる。

オウムアムアの双曲線軌道

地球の軌道離心率は惑星重力の相互作用により、長年の間にほぼ0から約0.05までの間を振れており、現在は約0.0167である(は0.0549)。水星は0.2056と、太陽系の他の惑星と比べてかなり大きい値を持つ。準惑星冥王星はさらに大きく0.248である。太陽系の小惑星のほとんどは0から0.35の間で、その平均は0.17であるが、比較的大きい値を持つものは、木星の強力な重力の影響による。太陽系の中で最も値が小さいのは、海王星衛星トリトンの0.000016である。

彗星の軌道離心率はほぼ1に近い。周期彗星は非常に長細い楕円軌道で、1よりわずかに小さく、例えばハレー彗星は0.967である。非周期彗星は放物線に近い軌道を描き、やはり1に近い。例えばヘール・ボップ彗星は0.995086、マックノート彗星は1.000030である。前者の値は1より小さいため実は楕円軌道で、西暦4380年頃に再び現れる。一方後者は双曲線軌道であり、太陽系を離れれば二度と戻ることはない。1980年に発見されたボーエル彗星は1.058と、太陽系内で観測された天体の中での最大記録であったが、2017年に発見された観測史上初の恒星間天体であるオウムアムアは1.199と極端な双曲線軌道を描いており、最大値を大きく更新した。その後2019年に発見された2番目の恒星間天体であるボリソフ彗星は離心率がおよそ 3.3 であり、最大値をさらに更新した。

観測された中で最も値が小さい(=真円に近い)軌道を持つ天体は、白色矮星EQ J190947-374414連星になっているパルサーPSR J1909-3744の0.000000135である。

関連項目