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密航では、輸送機関の旅客スペース以外に身を潜める必要があることなどから、それら輸送機関の安全が保証された快適な旅行とは異なり、命にかかわるほどの過酷な状況に晒されることもある。
密航では、輸送機関の旅客スペース以外に身を潜める必要があることなどから、それら輸送機関の安全が保証された快適な旅行とは異なり、命にかかわるほどの過酷な状況に晒されることもある。


例えば[[飛行機]]の主脚格納庫に侵入し密航を謀ったケースでは、その場所が[[与圧]]されていないことから目的地へ到着する前に[[凍死]]する危険性が高い。アメリカ航空局が把握している数字では、1947年から105人が格納庫に侵入し、生き延びた例は25人であり生還率は低い<ref>{{Cite news|url=http://www.gizmodo.jp/2014/04/post_14449.html|title=なぜ無傷。飛行機の車輪格納部に隠れて飛行した少年、生存の秘訣は「極寒」?|work= gizmodo|publisher= gizmodo|date=2014-04-23|accessdate=2014-04-23}}</ref>。凍死しないまでも、[[仮死状態]]による身体的なダメージ、部分的な[[凍傷]]によって体が不自由になる危険もある。また、急激に[[気圧]]が下がるので、[[高山病]]に似た症状があらわれることもある<ref>{{Citenews|url=http://www.47news.jp/CN/200303/CN2003031801000588.html|title=航空機の車輪格納庫に遺体 成田空港|work=47News|newspaper=共同通信社|date=2003-01-08|accessdate=2014-04-21}}</ref>。また陸送、海上輸送用[[コンテナ]]の場合では、内部に居住スペースを設置し密航を謀るケースがあったが、目的地へ到着する前に[[熱中症|熱射病]]のため死亡したケースもある。コンテナ内は密閉に近いため、[[日射]]にさらされると温度が上がりやすいだけではなく、[[酸欠]]の危険性もある。また、飲料水を確保できない場合は[[脱水症状]]の危険も高まる<ref>{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/top/200904/t2009040616_all.html|title=コンテナから46人遺体発見…アフガン密航か|work=zakzak|publisher=夕刊フジ|date=2009-04-06|accessdate=2014-04-21}}</ref>。
例えば[[飛行機]]の主脚格納庫に侵入し密航を謀ったケースでは、その場所が[[与圧]]されていないことから目的地へ到着する前に[[凍死]]する危険性が高い([[USエアウェイズ741便密航者凍死事件]]など)。アメリカ航空局が把握している数字では、1947年から105人が格納庫に侵入し、生き延びた例は25人であり生還率は低い<ref>{{Cite news|url=http://www.gizmodo.jp/2014/04/post_14449.html|title=なぜ無傷。飛行機の車輪格納部に隠れて飛行した少年、生存の秘訣は「極寒」?|work= gizmodo|publisher= gizmodo|date=2014-04-23|accessdate=2014-04-23}}</ref>。凍死しないまでも、[[仮死状態]]による身体的なダメージ、部分的な[[凍傷]]によって体が不自由になる危険もある。また、急激に[[気圧]]が下がるので、[[高山病]]に似た症状があらわれることもある<ref>{{Citenews|url=http://www.47news.jp/CN/200303/CN2003031801000588.html|title=航空機の車輪格納庫に遺体 成田空港|work=47News|newspaper=共同通信社|date=2003-01-08|accessdate=2014-04-21}}</ref>。また陸送、海上輸送用[[コンテナ]]の場合では、内部に居住スペースを設置し密航を謀るケースがあったが、目的地へ到着する前に[[熱中症|熱射病]]のため死亡したケースもある。コンテナ内は密閉に近いため、[[日射]]にさらされると温度が上がりやすいだけではなく、[[酸欠]]の危険性もある。また、飲料水を確保できない場合は[[脱水症状]]の危険も高まる<ref>{{Cite news|url=http://www.zakzak.co.jp/top/200904/t2009040616_all.html|title=コンテナから46人遺体発見…アフガン密航か|work=zakzak|publisher=夕刊フジ|date=2009-04-06|accessdate=2014-04-21}}</ref>。


密航の失敗の多くは、乗員などに発見されることだが、発見された場合は目的地に到着した直後に[[退去強制|強制送還]]される。古くは「海に投げ込まれた」や「[[強制労働]]させられた」などの話も物語を中心に語り継がれる所ではあるが、中には発見され[[救命ボート]]で逃走したケースもある。救命ボートは基本的に救助を待つために[[漂流]]することを前提として設計されているため、[[外洋]]などで逃走することには向いていないし、[[沿岸]]付近で逃走しても岸にたどり着きにくい。こういった逃走者の多くは、救助という形で捕まり、強制送還の憂き目に遭う。
密航の失敗の多くは、乗員などに発見されることだが、発見された場合は目的地に到着した直後に[[退去強制|強制送還]]される。古くは「海に投げ込まれた」や「[[強制労働]]させられた」などの話も物語を中心に語り継がれる所ではあるが、中には発見され[[救命ボート]]で逃走したケースもある。救命ボートは基本的に救助を待つために[[漂流]]することを前提として設計されているため、[[外洋]]などで逃走することには向いていないし、[[沿岸]]付近で逃走しても岸にたどり着きにくい。こういった逃走者の多くは、救助という形で捕まり、強制送還の憂き目に遭う。

2017年10月31日 (火) 01:07時点における版

貨物列車に乗り込む密航者

密航(みっこう)とは、正規の出入国手続きを経ずに他国に渡航をすること。すなわち、航空機貨物船に紛れ込み、あるいは渡航先の上陸資格を持たない船に乗船するなどして渡航することを指す。密航を行う者を密航者(みっこうしゃ)という。

概要

古くは貧しい移民希望者が、20世紀に入ると政治的迫害を受けた亡命者や経済的困窮から母国を脱出する手段として用いることが多くなった。こういった者の中には国外での就労を希望しての場合もある。また、政治的迫害を受けていたり、戦争内戦紛争などや兵役から逃れるために密航する者もいる。

20世紀後半になると、各国の入国管理身分証明制度が強化され、空港港湾の警備体制が近代化されるとともに、輸送も輸送される物資の量的な増大に伴い隠れる手段が少ないコンテナ船へと変化している。このため船舶では船員など関係者と内通していない限り密航は不可能となっている。このため、船を密航者で占拠して密航を行うボートピープルパスポート偽造などによる偽装出国が増加している。ただし、アメリカ日本韓国のように入国審査指紋採取を実施している国家ではパスポート偽造という手法での密入国は困難になっている。

その一方で、航空機など船舶以外の交通機関や場合によっては国境を横断する鉄道列車や貨物自動車に隠れて便乗して来るケースも見られる。しかし、身分証明が社会補償サービスにも就労にも居住にも、また医療保険などのような生活支援サービスの前提となるなど、「正式に入国しないと就労以前に居住・生活することもままならない」状態にある先進国社会では、経済難民による密航は割に合わないものともなっている。一方で、戦争、紛争や兵役などから逃れることが目的ならば、密航のメリットは大きいといえる。

失敗例

密航では、輸送機関の旅客スペース以外に身を潜める必要があることなどから、それら輸送機関の安全が保証された快適な旅行とは異なり、命にかかわるほどの過酷な状況に晒されることもある。

例えば飛行機の主脚格納庫に侵入し密航を謀ったケースでは、その場所が与圧されていないことから目的地へ到着する前に凍死する危険性が高い(USエアウェイズ741便密航者凍死事件など)。アメリカ航空局が把握している数字では、1947年から105人が格納庫に侵入し、生き延びた例は25人であり生還率は低い[1]。凍死しないまでも、仮死状態による身体的なダメージ、部分的な凍傷によって体が不自由になる危険もある。また、急激に気圧が下がるので、高山病に似た症状があらわれることもある[2]。また陸送、海上輸送用コンテナの場合では、内部に居住スペースを設置し密航を謀るケースがあったが、目的地へ到着する前に熱射病のため死亡したケースもある。コンテナ内は密閉に近いため、日射にさらされると温度が上がりやすいだけではなく、酸欠の危険性もある。また、飲料水を確保できない場合は脱水症状の危険も高まる[3]

密航の失敗の多くは、乗員などに発見されることだが、発見された場合は目的地に到着した直後に強制送還される。古くは「海に投げ込まれた」や「強制労働させられた」などの話も物語を中心に語り継がれる所ではあるが、中には発見され救命ボートで逃走したケースもある。救命ボートは基本的に救助を待つために漂流することを前提として設計されているため、外洋などで逃走することには向いていないし、沿岸付近で逃走しても岸にたどり着きにくい。こういった逃走者の多くは、救助という形で捕まり、強制送還の憂き目に遭う。

アフリカからヨーロッパへの密航

近年、アフリカからヨーロッパへの密航者の急増が社会問題化している。経済的に発展途上国が多く、労働市場の状況が悪いアフリカ諸国から、仕事を求めてヨーロッパへの渡航を試みるものは多い。アフリカからヨーロッパへ密航するルートはおもに西アフリカからスペインを目指す[4]ものと、リビアからイタリアを目指すものなどがある[5]1990年代シェンゲン協定が西ヨーロッパ諸国で実施され、ヨーロッパ内の国境通過が自由化されると、そこからドイツフランスなどの経済先進国への入国を目指そうと考える密航者が増えている。

1990年代になると、モロッコから、アフリカ大陸のスペインの飛び地であるスペイン領セウタへ密入国するアフリカ人が急増した。2000年には、セウタとモロッコとの陸上国境の中立地帯に二重の鉄条網が張り巡らされ、国境警備が厳しくなったが、海路でジブラルタル海峡から密航する小型船が後を絶たない。

モロッコからヨーロッパ大陸への交易海上警備が強化されると、モロッコ沖のスペイン領カナリア諸島を目的地とする密航船が増加した。100キロ以上の外洋を航海することになるため、遭難する船や、海上で命を落とす密航者も少なくない。モロッコ沿岸の取締りが強化され、2000年代半ばには、密航船の出発地が、モーリタニア沿岸、さらにセネガル沿岸へと、どんどん遠方化していく。それに伴い密航にかかわるリスクとコストは増加することになる。2006年にはセネガル沿岸からのカナリア諸島への密航者が急増し、8月までの約8ヶ月間で、約2万人が密航したといわれている。セネガルからカナリア諸島への密航には、1人当たり約40万CFAフラン(約9万円)が必要といわれている。

出典


関連項目