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1910年に地元紙『オーバーン・ジャーナル』に詩が売れて、同年から1912年にかけて、東洋を舞台にした4編の短編小説が『オウヴァーランド・マンスリー』『ブラック・キャット』各誌に掲載された。これにより招待された婦人クラブを通じてスターリングに紹介され、詩作について助言を得るようになる。さらにバウトウェル・ダンラップによりサンフランシスコ、次いで東海岸にも紹介される。この1912年に最初の詩集『星を踏み歩くもの (''Star-Treader and Other Poems'')』を出版。その後は両親の農作業を手伝いながら詩作を続け、1918年頃から絵画も描き始める。1918年に第二詩集『頌と十四行誌 (''Odes and Sonnets'')』、1922年、25年に第三、第四詩集を出版。1922年に、スミスの詩を読んだ[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]から手紙が届き、文通が始まり、1923年にラヴクラフトの「潜み住む恐怖」が連載されたときには挿絵を提供した。1923年に創刊された『[[ウィアード・テイルズ]]』誌の7・8月合併号にスミスの詩「邪悪の園」が掲載され、ラヴクラフトとともに同誌の人気作家となっていく。1923年4月から26年1月まで『オーバーン・ジャーナル』誌でコラムを連載して、収入も安定した。
1910年に地元紙『オーバーン・ジャーナル』に詩が売れて、同年から1912年にかけて、東洋を舞台にした4編の短編小説が『オウヴァーランド・マンスリー』『ブラック・キャット』各誌に掲載された。これにより招待された婦人クラブを通じてスターリングに紹介され、詩作について助言を得るようになる。さらにバウトウェル・ダンラップによりサンフランシスコ、次いで東海岸にも紹介される。この1912年に最初の詩集『星を踏み歩くもの (''Star-Treader and Other Poems'')』を出版。その後は両親の農作業を手伝いながら詩作を続け、1918年頃から絵画も描き始める。1918年に第二詩集『頌と十四行誌 (''Odes and Sonnets'')』、1922年、25年に第三、第四詩集を出版。1922年に、スミスの詩を読んだ[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]から手紙が届き、文通が始まり、1923年にラヴクラフトの「潜み住む恐怖」が連載されたときには挿絵を提供した。1923年に創刊された『[[ウィアード・テイルズ]]』誌の7・8月合併号にスミスの詩「邪悪の園」が掲載され、ラヴクラフトとともに同誌の人気作家となっていく。1923年4月から26年1月まで『オーバーン・ジャーナル』誌でコラムを連載して、収入も安定した。


ラブクラフトの薦めで幻想小説を書くようになり、1925年に最初の作品「ヨンドの忌むべきものども」を執筆。1929年以降に精力的に幻想小説を執筆し始め、1935年までに『[[ウィアード・テイルズ]]』を中心に、『アメージング・デテクティヴ・テイルズ』『[[ワンダー・ストーリーズ]]』などの[[パルプ雑誌]]に約80編の作品を発表。後年にはラヴクラフト、[[ロバート・E・ハワード]]と並んで、『ウィアード・テイルズ』黄金時代を築いた御三家と称される。
ラブクラフトの薦めで幻想小説を書くようになり、1925年に最初の作品「ヨンドの忌むべきものども」を執筆。1929年以降に精力的に幻想小説を執筆し始め、1935年までに『[[ウィアード・テイルズ]]』を中心に、『アメージング・デテクティヴ・テイルズ』『[[ワンダー・ストーリーズ]]』などの[[パルプ・マガジン]]に約80編の作品を発表。後年にはラヴクラフト、[[ロバート・E・ハワード]]と並んで、『ウィアード・テイルズ』黄金時代を築いた御三家と称される。


1937年にラヴクラフトと父が相次いで亡くなった頃を機に小説の執筆は減り、代わって1934年頃始めた彫刻に熱を入れ始め、約200の作品を作った。彫刻作品には、[[ハイパーボリア (クトゥルフ神話)|ハイパーボリア]]やゾティークの世界と結びついたものもあったが、絵画や彫刻は商業的に成功することはなかった。1942年には[[オーガスト・ダーレス]]の手によって最初の短編集『時空の外に (''Out of Space and Time'')』をアーカム・ハウス社から出版。同社からは短編集4冊と詩集2冊が出版された。
1937年にラヴクラフトと父が相次いで亡くなった頃を機に小説の執筆は減り、代わって1934年頃始めた彫刻に熱を入れ始め、約200の作品を作った。彫刻作品には、[[ハイパーボリア (クトゥルフ神話)|ハイパーボリア]]やゾティークの世界と結びついたものもあったが、絵画や彫刻は商業的に成功することはなかった。1942年には[[オーガスト・ダーレス]]の手によって最初の短編集『時空の外に (''Out of Space and Time'')』をアーカム・ハウス社から出版。同社からは短編集4冊と詩集2冊が出版された。
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== 作品 ==
== 作品 ==
連作ものとして、超未来の大陸ゾティーク、[[ギリシ神話]]を基にした古代の大陸ハイパーボレア、[[アトランティス]](ポセイドニス)もの、中世フランスを舞台にするアヴェロワーニュ(''Averoigne'')などがあり、他に[[ムー大陸]]や[[レムリア]]を扱った作品もある。1929年9月からの4か月に、アトランティス連作の第一作「最後の呪文」、アヴェロワーニュの第一作「物語の結末」、ハイパーボリアの第一作「サタムプラ・ゼイロスの話」が書かれている。この頃から「黒の書」(''The Black Book'')と呼ばれる黒革の手帳に小説の構想や覚書を書きとめていたことが知られており、1979年に翻刻された。
連作ものとして、超未来の大陸ゾティーク、[[ギリシ神話]]を基にした古代の大陸ハイパーボレア、[[アトランティス]](ポセイドニス)もの、中世フランスを舞台にするアヴェロワーニュ(''Averoigne'')などがあり、他に[[ムー大陸]]や[[レムリア]]を扱った作品もある。1929年9月からの4か月に、アトランティス連作の第一作「最後の呪文」、アヴェロワーニュの第一作「物語の結末」、ハイパーボリアの第一作「サタムプラ・ゼイロスの話」が書かれている。この頃から「黒の書」(''The Black Book'')と呼ばれる黒革の手帳に小説の構想や覚書を書きとめていたことが知られており、1979年に翻刻された。


1950年代になってダイジェストサイズの雑誌でスミスの作品が再録されるようになり、スミスの名文家としての名声は高まった。ラブクラフトやハワードとの親交も厚く、『魔神ツァソグアの神殿』や『魔道士エイボン』、『ウボ=サスラ』などの[[クトゥルフ神話]]作品も執筆している。ベックフォードの影響による、性愛を基調とする極めて視覚的な耽美世界を創出した。
1950年代になってダイジェストサイズの雑誌でスミスの作品が再録されるようになり、スミスの名文家としての名声は高まった。ラブクラフトやハワードとの親交も厚く、『魔神ツァソグアの神殿』や『魔道士エイボン』、『ウボ=サスラ』などの[[クトゥルフ神話]]作品も執筆している。ベックフォードの影響による、性愛を基調とする極めて視覚的な耽美世界を創出した。

2015年11月25日 (水) 16:11時点における版

クラーク・アシュトン・スミス
1912年のスミス
誕生 (1893-01-13) 1893年1月13日
カリフォルニア州 Long Valley, アメリカ合衆国
死没 1961年8月14日(1961-08-14)(68歳)
カリフォルニア州 Pacific Grove, アメリカ合衆国
職業 短編作家, 詩人
国籍 アメリカ合衆国
ジャンル ホラー小説, ファンタジー, サイエンス・フィクション
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クラーク・アシュトン・スミスClark Ashton Smith,1893年1月13日 - 1961年8月14日)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれの詩人小説家。精緻な文体による幻想的な作風が特徴で、超未来の大陸ゾティーク(Zothique) や超古代の大陸ハイパーボリア(Hyperborea)を舞台にした連作短編シリーズが有名。絵画彫刻も手を染めた。

経歴

カリフォルニア州のプレサー郡ロングバレーの母の実家で生まれる。父はイギリスから金鉱を探しに来ていて、母は地元の農家の娘であったが、1907年にボウルダーリッジに転居する。スミスは幼少時は体が弱く、読書を好み、11歳頃からアンデルセン童話集を手本に童話を書き始め、やがて『千夜一夜物語』やキップリングの影響で小説を書くようになる。その後ポーや英訳された『ルバイヤート』に触れて詩作に取り組み、カリフォルニア在住の詩人ジョージ・スターリングに特に感化を受けた。この時期、ラテン語を独学で習得し、またウェブスター辞書ブリタニカを通読するなどして、文体の訓練に励んだ。またウィリアム・トマス・ベックフォード『ヴァテック』を愛読していた。

1910年に地元紙『オーバーン・ジャーナル』に詩が売れて、同年から1912年にかけて、東洋を舞台にした4編の短編小説が『オウヴァーランド・マンスリー』『ブラック・キャット』各誌に掲載された。これにより招待された婦人クラブを通じてスターリングに紹介され、詩作について助言を得るようになる。さらにバウトウェル・ダンラップによりサンフランシスコ、次いで東海岸にも紹介される。この1912年に最初の詩集『星を踏み歩くもの (Star-Treader and Other Poems)』を出版。その後は両親の農作業を手伝いながら詩作を続け、1918年頃から絵画も描き始める。1918年に第二詩集『頌と十四行誌 (Odes and Sonnets)』、1922年、25年に第三、第四詩集を出版。1922年に、スミスの詩を読んだハワード・フィリップス・ラヴクラフトから手紙が届き、文通が始まり、1923年にラヴクラフトの「潜み住む恐怖」が連載されたときには挿絵を提供した。1923年に創刊された『ウィアード・テイルズ』誌の7・8月合併号にスミスの詩「邪悪の園」が掲載され、ラヴクラフトとともに同誌の人気作家となっていく。1923年4月から26年1月まで『オーバーン・ジャーナル』誌でコラムを連載して、収入も安定した。

ラブクラフトの薦めで幻想小説を書くようになり、1925年に最初の作品「ヨンドの忌むべきものども」を執筆。1929年以降に精力的に幻想小説を執筆し始め、1935年までに『ウィアード・テイルズ』を中心に、『アメージング・デテクティヴ・テイルズ』『ワンダー・ストーリーズ』などのパルプ・マガジンに約80編の作品を発表。後年にはラヴクラフト、ロバート・E・ハワードと並んで、『ウィアード・テイルズ』黄金時代を築いた御三家と称される。

1937年にラヴクラフトと父が相次いで亡くなった頃を機に小説の執筆は減り、代わって1934年頃始めた彫刻に熱を入れ始め、約200の作品を作った。彫刻作品には、ハイパーボリアやゾティークの世界と結びついたものもあったが、絵画や彫刻は商業的に成功することはなかった。1942年にはオーガスト・ダーレスの手によって最初の短編集『時空の外に (Out of Space and Time)』をアーカム・ハウス社から出版。同社からは短編集4冊と詩集2冊が出版された。

1954年に結婚してパシフィック・グローブに移り、庭師として働きながら絵や彫刻にいそしみ、詩や小説の執筆は無くなる。1961年に死去。遺された文書はブラウン大学のジョン・ヘイ図書館に寄贈された。

作品

連作ものとして、超未来の大陸ゾティーク、ギリシア神話を基にした古代の大陸ハイパーボレア、アトランティス(ポセイドニス)もの、中世フランスを舞台にするアヴェロワーニュ(Averoigne)などがあり、他にムー大陸レムリアを扱った作品もある。1929年9月からの4か月に、アトランティス連作の第一作「最後の呪文」、アヴェロワーニュの第一作「物語の結末」、ハイパーボリアの第一作「サタムプラ・ゼイロスの話」が書かれている。この頃から「黒の書」(The Black Book)と呼ばれる黒革の手帳に小説の構想や覚書を書きとめていたことが知られており、1979年に翻刻された。

1950年代になってダイジェストサイズの雑誌でスミスの作品が再録されるようになり、スミスの名文家としての名声は高まった。ラブクラフトやハワードとの親交も厚く、『魔神ツァソグアの神殿』や『魔道士エイボン』、『ウボ=サスラ』などのクトゥルフ神話作品も執筆している。ベックフォードの影響による、性愛を基調とする極めて視覚的な耽美世界を創出した。

詩集

  • 『星を踏み歩くもの』Star-Treader and Other Poems、1912年
  • 『頌と十四行誌』Odes and Sonnets、1918年
  • 『黒檀と水晶』Ebony and Crystal、1922年(自費出版)
  • 『白檀』Sandalwood、1925年(自費出版)

小説

短編集
  • 時空の外に Out of Space and Time 1942年
  • 呪われし地 Genius Loci and Other Tales 1948年(国書刊行会、1986年、訳:小倉多加志
  • 魔術師の帝国(創土社、1974年、訳:蜂谷昭雄
  • アトランティスの呪い(ポプラ社、1985年、訳:榎林哲)
  • イルーニュの巨人 The Colossus of Ylourgne東京創元社、1986年、訳:井辻朱美
  • 魔界王国(朝日ソノラマ、1986年、訳:柿沼瑛子)
  • ゾティーク幻妖怪異譚(東京創元社、2009年、訳:大瀧啓裕
  • ヒュペルボレオス極北神怪譚(東京創元社、2011年、訳:大瀧啓裕)
  • アヴェロワーニュ妖魅浪漫譚(東京創元社、2011年、訳:大瀧啓裕)
『クトゥルー 暗黒神話大系シリーズ』収録
  • The Hunters from Beyond「彼方からのもの」
  • The Return of the Sorcerer「妖術師の帰還」
  • Ubbo-Sathla「ウボ=サスラ」
  • The Seven Geases「七つの呪い」
  • The Door to Saturn「魔道士エイボン」
  • The Testament of Athammaus「アタマウスの遺言」
  • The Coming of the White Worm「白蛆の襲来」