「ハシリドコロ」の版間の差分
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[[日本]]の[[本州]]から[[四国]]・[[九州]]にかけて分布する[[多年草]]。山間の日陰などに群生する。早春に[[葉]]に包まれた新芽を出し、全長は40 - 50 cm程度に成長する。花期は4月から5月。釣鐘状の暗紫紅色の花を咲かせる。夏先には休眠状態に入るため枯れる。夏から冬までは見ることができない典型的な[[スプリング・エフェメラル]]である。 |
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[[アルカロイド]]類の毒成分が含まれる[[有毒植物]]である。和名は、食べると錯乱して走り回ること、また、[[球根|根茎]]が[[トコロ]](野老)に似ていることから付けられた。 |
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== 毒性と薬用 == |
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全草に毒を含むが、根茎と[[根]]が特に毒性が強い。主な成分は[[トロパンアルカロイド]]で、摂取し中毒を起こすと、[[嘔吐]]や[[散瞳]]、異常興奮を起こし、最悪の場合には死にいたる。これは、同じ |
全草に毒を含むが、根茎と[[根]]が特に毒性が強い。主な成分は[[トロパンアルカロイド]]で、摂取し中毒を起こすと、[[嘔吐]]や[[散瞳]]、異常興奮を起こし、最悪の場合には死にいたる。これは、同じナス科の[[ベラドンナ]]などと同様の症状である。ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、''l''-[[ヒヨスチアミン]]やそのラセミ体である[[アトロピン]](''dl''-ヒヨスチアミン)、他に[[ノルヒヨスチアミン]]、''l''-[[スコポラミン]]などが含まれる。これらの物質は[[副交感神経]]を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。 |
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ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根は'''ロートコン'''(莨菪根、''Scopoliae Rhizoma'')という薬品として[[日本薬局方]]にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは[[硫酸アトロピン]]の原料になり、ロートコンの成分を水または[[エタノール]]に浸出させたものは'''ロートエキス'''と呼ばれる。[[ロート製薬]]の[[胃腸薬]]「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品があり、これが同社の社名の由来になっているという俗説があるが、実際には[[目薬]]の処方を手がけた当時の[[眼科医]]界の権威・[[井上豊太郎]]の[[ドイツ]]留学時代の恩師である[[ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン|ミュンヘン大学]]教授[[アウグスト・フォン・ロートムント]]の名前にちなむものであり、ロートコンが由来というわけではない。 |
ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根は'''ロートコン'''(莨菪根、''Scopoliae Rhizoma'')という薬品として[[日本薬局方]]にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは[[硫酸アトロピン]]の原料になり、ロートコンの成分を水または[[エタノール]]に浸出させたものは'''ロートエキス'''と呼ばれる。[[ロート製薬]]の[[胃腸薬]]「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品があり、これが同社の社名の由来になっているという俗説があるが、実際には[[目薬]]の処方を手がけた当時の[[眼科医]]界の権威・[[井上豊太郎]]の[[ドイツ]]留学時代の恩師である[[ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン|ミュンヘン大学]]教授[[アウグスト・フォン・ロートムント]]の名前にちなむものであり、ロートコンが由来というわけではない。 |
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日本では、[[江戸時代]]に[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト]]が薬効に気付いたのが契機となり、以降[[ベラドンナ]]の代用品として用いられている。中国では「東莨菪(とうろうとう)」と呼んでいる(「莨菪」は[[ヒヨス]]の[[変種]]シナヒヨス ''Hyoscyamus niger'' var. ''chinensis'' を指す)。 |
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== 間違えやすい山菜 == |
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早春に土から顔を出す新芽は[[フキ|フキノトウ]]と間違えやすく、葉は青々として食べられそうに見えるため誤食されやすい。 |
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== 外部リンク == |
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* [http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/db/plant/101_110/scopolia_japonica.html ハシリドコロ] - [[日本新薬]] |
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* [http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/dokusou/05.html 有毒植物(東京都福祉保健局健康安全室)ハシリドコロ] |
* [http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/dokusou/05.html 有毒植物(東京都福祉保健局健康安全室)ハシリドコロ] |
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* [http://www5f.biglobe.ne.jp/~homepagehide3/torituyakuyou/hagyou/hasiridokoro.html 都立薬用植物園の妖精達 ハシリドコロ] |
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2014年10月25日 (土) 14:15時点における版
ハシリドコロ | |||||||||||||||||||||
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ハシリドコロ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Scopolia japonica Maxim. | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ハシリドコロ |
ハシリドコロ(走野老、莨菪、Scopolia japonica)は、ナス科ハシリドコロ属の草本。別名、キチガイイモ、キチガイナスビ、オニヒルグサヤ。
特徴
日本の本州から四国・九州にかけて分布する多年草。山間の日陰などに群生する。早春に葉に包まれた新芽を出し、全長は40 - 50 cm程度に成長する。花期は4月から5月。釣鐘状の暗紫紅色の花を咲かせる。夏先には休眠状態に入るため枯れる。夏から冬までは見ることができない典型的なスプリング・エフェメラルである。
アルカロイド類の毒成分が含まれる有毒植物である。和名は、食べると錯乱して走り回ること、また、根茎がトコロ(野老)に似ていることから付けられた。
毒性と薬用
全草に毒を含むが、根茎と根が特に毒性が強い。主な成分はトロパンアルカロイドで、摂取し中毒を起こすと、嘔吐や散瞳、異常興奮を起こし、最悪の場合には死にいたる。これは、同じナス科のベラドンナなどと同様の症状である。ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、l-ヒヨスチアミンやそのラセミ体であるアトロピン(dl-ヒヨスチアミン)、他にノルヒヨスチアミン、l-スコポラミンなどが含まれる。これらの物質は副交感神経を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。
ただし、用法・用量をまもって使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根はロートコン(莨菪根、Scopoliae Rhizoma)という薬品として日本薬局方にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは硫酸アトロピンの原料になり、ロートコンの成分を水またはエタノールに浸出させたものはロートエキスと呼ばれる。ロート製薬の胃腸薬「パンシロン」シリーズにもロートエキスを含む製品があり、これが同社の社名の由来になっているという俗説があるが、実際には目薬の処方を手がけた当時の眼科医界の権威・井上豊太郎のドイツ留学時代の恩師であるミュンヘン大学教授アウグスト・フォン・ロートムントの名前にちなむものであり、ロートコンが由来というわけではない。
日本では、江戸時代にフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが薬効に気付いたのが契機となり、以降ベラドンナの代用品として用いられている。中国では「東莨菪(とうろうとう)」と呼んでいる(「莨菪」はヒヨスの変種シナヒヨス Hyoscyamus niger var. chinensis を指す)。
間違えやすい山菜
早春に土から顔を出す新芽はフキノトウと間違えやすく、葉は青々として食べられそうに見えるため誤食されやすい。
ギャラリー
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ハシリドコロの幼芽1
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ハシリドコロの幼芽2
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ハシリドコロの葉
関連項目
参考書籍
- 原色牧野和漢薬草大図鑑 旧版監修:三橋博、編集:和田浩志・寺林進・近藤健児、北隆館、ISBN 483260810X
- 新装版山渓フィールドブックス (14) 山菜 木原浩、山と渓谷社、ISBN 4635060713