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== 宇宙に占める暗黒物質の割合の推定 ==
== 宇宙に占める暗黒物質の割合の推定 ==
[[1986年]]に発見された[[宇宙の大規模構造]]が作らるまで時間シミュレートし結果、[[グバン]][[宇宙]]から導き出されている137億といった宇宙の年齢はかけ離長い歳月するが明らかになった。ためビッグバン宇宙論が間違っていて修正が必要はないかう見解が生まれが、暗黒物質存在仮定するとビッグバン宇宙論と矛盾しな時間の範囲内でも、現在のような銀河集団の泡構造が出来上がることが明らかにされた<ref>{{Cite web|url=http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/Astro/Research/galform.html|title=銀河形成&宇宙論|publisher=[http://www.rccp.tsukuba.ac.jp/Astro/index-j.html 筑波大学宇宙物理理論研究室]|accessdate=2012-01-21}}</ref>。そこで、宇宙全体にど程度暗黒物質や暗黒エネルギー必要なのか繰り返しミュレーションが行なわているその結果、[[ダークマター]]を含めた物質を約30%、[[ダークエネルギー]]を約70%にした場合にうまくいくことが確認されている<ref name="sciam 2003">{{Cite news
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[[2003年]]から、[[宇宙背景放射]]を観測する[[WMAP]]衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。この観測結果は、宇宙の大規模構造のシミュレーションから予測されているダークマターの値と、ほぼ一致している。このように2つの方法から推測したダークマターの量がほぼ合うということから、この考えの妥当性が図られている。
[[2003年]]から、[[宇宙背景放射]]を観測する[[WMAP]]衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。この観測結果は、宇宙の大規模構造のシミュレーションから予測されているダークマターの値と、ほぼ一致している。このように2つの方法から推測したダークマターの量がほぼ合うということから、この考えの妥当性が図られている。

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== 暗黒物質の候補 ==
== 暗黒物質の候補 ==

2014年7月1日 (火) 14:32時点における版

現代宇宙論
宇宙
ビッグバンブラックホール
宇宙の年齢
宇宙の年表

暗黒物質(あんこくぶっしつ、dark matter )とは、宇宙にある星間物質のうち電磁相互作用をせずかつ色電荷を持たない、光学的には観測できないとされる仮説上の物質である。「ダークマター」とも呼ばれる。"人間が見知ることが出来る物質とはほとんど反応しない"などともされており、そもそも本当に存在するのか、もし存在するとしたらどのような正体なのか、何で出来ているか、未だに確認されておらず、不明のままである。

概要

暗黒物質の存在は、1934年にフリッツ・ツビッキーによって銀河団中の銀河の軌道速度における"欠損質量" (missing mass) を説明するために仮定された[1]。彼は、ビリアル定理かみのけ座銀河団に適用し未観測の質量の証拠を得た。ツビッキーは、銀河団の全質量をその周縁の銀河の運動に基づいて推定し、その結果を銀河の数および銀河団の全輝度に基づいて推定されたものと比較した。そして、彼は光学的に観測できるよりも400倍もの推定される質量が存在することを発見した。銀河団中の可視的な銀河の重力はそのように高速な軌道に対して小さすぎるので、何らかの外部要因が必要であった。これは"質量欠損問題" (missing mass problem) として知られている。これらの結論に基づき、ツビッキーは銀河団を互いに引き寄せる十分な質量や重力を及ぼす目に見えない物質が存在するはずであると推測した。

その後、宇宙の暗黒物質の存在を示唆する観測が報告されている。銀河の回転速度弾丸銀河団のような銀河団による背景物体の重力レンズ効果、そして銀河および銀河団を取り巻く熱い気体の温度分布などの観測結果である。

暗黒物質の存在の間接的な発見は、1970年代にヴェラ・ルービンによる銀河の回転速度の観測から指摘された[2][3]水素原子の出す21cm輝線で銀河外縁を観測したところ、ドップラー効果により星間ガスの回転速度を見積もることができた。この結果と遠心力・重力の釣り合いの式を用いて質量を計算できる。すると、光学的に観測できる物質の約10倍もの物質が存在するという結果が出た。この銀河の輝度分布と力学的質量分布の不一致は銀河の回転曲線問題と呼ばれている。この問題を通じて存在が明らかになった、光を出さずに質量のみを持つ未知の物質が暗黒物質と名付けられることとなった。なお、暗黒物質を仮定せずにこれらの問題を解決する方法も提唱されている。#暗黒物質という考え方への反論を参照。

暗黒物質が存在するとその質量によりが曲げられ、背後にある銀河などの形が歪んで見える重力レンズ効果が起こる。銀河の形の歪みから重力レンズ効果の度合いを調べ、そこから暗黒物質の3次元的空間分布を測定することに日米欧の国際研究チームが初めて成功したことが2007年1月に科学誌『ネイチャー』に発表された[4][5]。同年5月15日アメリカ航空宇宙局の発表によれば、米ジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームがこれを利用して、ハッブル宇宙望遠鏡で暗黒物質の巨大なリング構造を確認したという。10億~20億年前に2つの銀河団が衝突した痕跡で直径が約260万光年(銀河系の26倍)、衝突によりいったん中心部に集まった暗黒物質が、その後徐々に環状に広がっていったものとされる。

2013年4月3日、欧州合同原子核研究機関において、サミュエル・ティン(マサチューセッツ工科大学教授)らの研究グループが「暗黒物質が実際に存在する可能性を示す痕跡を発見した」と発表した。国際宇宙ステーション(ISS)に取り付けたアルファ磁気分光器を使い、陽電子を観測した。暗黒物質がニュートラリーノであると仮定すると、互いに衝突して消滅する際に陽電子が飛び出すと考えられている。


宇宙に占める暗黒物質の割合の推定

1986年宇宙の大規模構造が発見された。このような構造を形成するための宇宙の物質の総量が見積もられたが、予想よりも質量が少ないため構造の成長には、ハッブル則から導かれる宇宙の年齢(ハッブル時間):100億 - 200億年[6] よりも、さらに長い時間を要すると計算された(missing mass problem)。この少なすぎる質量を補うものとして、それまでにいくつかの研究で提案されていた暗黒物質(ダークマター、: dark matter )が存在が仮定された。この仮定は、いくつかのシミュレーションによってもハッブル則の範囲内で現在のような銀河集団の泡構造が出来上がることを支持している(例として[7]など。)。その後、宇宙の加速膨張が発見され、さらにインフレーション理論の説明のためダークエネルギーの概念が導入された。ある計算では、ダークマターを含めた物質を約30%、ダークエネルギーを約70%にした場合にうまくいくことが確認されている[8]

2003年から、宇宙背景放射を観測するWMAP衛星の観測によって、宇宙全体の物質エネルギーのうち、74%が暗黒エネルギー、22%が暗黒物質で、人類が見知ることが出来る物質の大半を占めていると思われる水素やヘリウムは4%ぐらいしかないことが分かってきている。この観測結果は、宇宙の大規模構造のシミュレーションから予測されているダークマターの値と、ほぼ一致している。このように2つの方法から推測したダークマターの量がほぼ合うということから、この考えの妥当性が図られている。

2013年3月、欧州宇宙機関プランクの観測結果としてダークマターは26.8%と発表した[9]

暗黒物質の候補

具体的に何が暗黒物質として宇宙の質量の大半を占めているかであるが、後述するように複数の候補が挙がっている。

これらのうちのどれかかもしれないし、複数かもしれないし、どれでもないかもしれない。それらの候補は大別して素粒子論からの候補と天体物理学からの候補に分けることができる。素粒子論からの候補はWIMPと呼ばれ、さらに熱い暗黒物質と冷たい暗黒物質の2種類に分けられる(厳密には温かい暗黒物質も考えられなくはないが、恣意的すぎるとされている)。

宇宙の晴れ上がりの時に、その暗黒物質の運動エネルギーが質量エネルギーを上回っていた場合は熱い暗黒物質、そうではないものを冷たい暗黒物質と呼ぶ。現状の本命は冷たい暗黒物質シナリオであるが、決定的な弱点はその候補粒子が未だ見つかっていないことである。


素粒子論からの候補

ニュートリノ以外は、存在が未確認であり、推測や予言の域を出ず、実在しない可能性を持つ候補もある。

ニュートリノ
熱い暗黒物質の代表例。従来ニュートリノの質量は0であると思われていたが、近年では微少な質量を持っている事がほぼ確実になった。ニュートリノは宇宙全体に存在する数が非常に多い(計算では~100個/cm3)ので、質量が10eV程度あれば暗黒物質の候補になるとされていた。しかしながら、ニュートリノの寄与は臨界密度の高々1.5%程度であることが分かってきたので、現在では主要な暗黒物質であるとは考えられていない。さらに、ニュートリノが暗黒物質の主成分だとすると銀河形成論的に困ったことがおこる。銀河団以下のスケールの構造が生まれなくなってしまうのである (free streaming mixing)。これは、ニュートリノ同士の相互作用がほとんど無く互いに通り過ぎてしまい、圧力が生じないことによる。
ニュートラリーノ
超対称性粒子のうち、電気的に中性である粒子。超対称性粒子は現在見つかっていないことから不安定であると考えられており、宇宙の初期にほとんどが通常の素粒子と、より軽い超対称性粒子に崩壊していったと考えられている。しかし、超対称性粒子に特有のRパリティ保存則により、最も軽い超対称性粒子 (Lightest Supersymmetric Particle : LSP) は崩壊できず宇宙に残っていると考えられている。電荷を持つLSPがあるならば既に見つかっているであろうから、現在考えられている宇宙暗黒物質としてのLSPは電荷を持たないLSPである。ニュートラリーノの質量は数GeV~数百GeVの範囲で原子核との散乱断面積は10-4以下と考えられている。
アキシオン
冷たい暗黒物質の代表例。軽い (~10-5eV) 質量しかないが、温度0なので「冷たい」のである。
ミラーマター
パリティ対称性を保つように標準模型を拡張したとき、その存在が予言される物質。重力の他は、光子-ミラー光子混合、ヒッグス-ミラーヒッグス混合を経由した相互作用しかしないため、もし存在したとしても、見ることも触ることも(どちらも光子を媒介とした電磁気力による相互作用である)不可能。重力レンズ効果の観測や、重力波干渉計などを用いた観測が期待される。
LKP
Lightest KK Particleの略。特定の高次元模型では標準模型と同じ電荷を持ち質量のみが異なるKK粒子の内最も軽いものが、余剰次元方向に対する運動量保存則により安定となる。LKPが中性だった場合暗黒物質の候補となるが、その質量は余剰次元の直接検証等から最低でも600GeV程度以上となり非常に冷たい暗黒物質となる。


天体物理学からの候補

いずれもバリオンからなる。ビッグバン仮説においては、バリオンの存在量が予言できる。その値は、臨界密度の4%程度である。ところが、実際の宇宙の物質密度は臨界密度の22%程度であると見積もられている。したがって、以下の候補を全て考慮に入れたとしても元々のバリオンの量が足りない。そのため、非バリオン暗黒物質の存在を仮定する必要があることに変わりはない。[10]

ブラックホール
小規模なブラックホールは超新星爆発のときに生じる。質量が太陽の数億倍もあるような大規模なブラックホールは銀河中心で観測されているが、まだ成因はよく分かっていない。恒星規模のブラックホールが銀河系内にいくつくらい存在するのか、その質量分布がどのような物か、等も未だ明らかではないため、これは暗黒物質の候補となる。また、原子核大の極微小ブラックホールも多量に存在しているかも知れない。さらに、宇宙誕生後3分頃に生成されたブラックホールについては、上記のバリオン存在量の制限から逃れることができる。
白色矮星中性子星
比較的小質量の恒星が燃え尽きると白色矮星・中性子星になる。こうした星が自分で出す光が小さい場合、暗黒物質の候補となりうる。
褐色矮星
恒星誕生の際、核融合が起こるほどのガス質量がなかった場合、明るく輝かないために観測は困難となる。近年、観測精度の向上によって褐色矮星が観測されるようになった。
惑星
観測できる多数の恒星がそれぞれ観測できない惑星を持っている可能性があり、これが暗黒物質の候補になる。
MACHO
Massive Astrophysical Compact Halo Objectの略。銀河ハロー内に存在する、小さくて光学的に観測の不可能(あるいはきわめて困難)な天体の総称。上記の白色矮星、恒星ブラックホールもその一種である。

暗黒物質という考え方への反論

プラズマ宇宙論を用いると、直接観測できない正体不明のダークマターの存在を無理に仮定しなくても、銀河の回転曲線問題などを綺麗に説明できる。またこの理論はビッグバンの存在を否定する。しかし宇宙マイクロ波背景放射などに関する観測事実を上手く説明できないことや、ビッグバン仮説を裏付けるいくつかの観測事実が存在する(但し、ビッグバン仮説では説明できない観測事実も存在する)ため、現在ではほとんど議論の俎上に登らない理論である。プラズマ宇宙論を参照。

出典

  1. ^ Zwicky, F. (1933). “Die Rotverschiebung von extragalaktischen Nebeln”. Helvetica Physica Acta 6: 110–127. http://adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-bib_query?bibcode=1933AcHPh...6..110Z. \ See also Zwicky, F. (1937). “On the Masses of Nebulae and of Clusters of Nebulae”. Astrophysical Journal 86: 217. doi:10.1086/143864. 
  2. ^ V. Rubin, W. K. Ford, Jr (1970). “Rotation of the Andromeda Nebula from a Spectroscopic Survey of Emission Regions”. Astrophysical Journal 159: 379. doi:10.1086/150317. 
  3. ^ V. Rubin, N. Thonnard, W. K. Ford, Jr, (1980). “Rotational Properties of 21 Sc Galaxies with a Large Range of Luminosities and Radii from NGC 4605 (R=4kpc) to UGC 2885 (R=122kpc)”. Astrophysical Journal 238: 471. doi:10.1086/158003. 
  4. ^ [1]
  5. ^ [2]
  6. ^ 1992年WMAPCMBの観測以前は、ハッブル定数は 50 - 100 km/s/Mpc というおおまかな値が与えられていた。なお、2014年までの理論では、ハッブル定数は過去から一定ではなかった(宇宙の加速)とされている。
  7. ^ 銀河形成&宇宙論”. 筑波大学宇宙物理理論研究室. 2012年1月21日閲覧。
  8. ^ Cline, David B. (2003年3月). “The Search for Dark Matter”. Scientific American. http://www.sciam.com/article.cfm?id=the-search-for-dark-matte 
  9. ^ {{Cite web|url=http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Planck/Planck_reveals_an_almost_perfect_Universe%7Ctitle=Plunck Reveals an almost perfect universe|date=2013-03-21|publisher=[[欧州宇宙機関]]|accessdate=2014-07-01}}
  10. ^ E.Kolb, M.Turner The Early Universe

関連項目

外部リンク