「レイ・チャップマン」の版間の差分
編集の要約なし |
|||
| 130行目: | 130行目: | ||
[[Category:アメリカ合衆国の野球選手]] |
[[Category:アメリカ合衆国の野球選手]] |
||
[[Category:クリーブランド・インディアンスの選手]] |
[[Category:クリーブランド・インディアンスの選手]] |
||
[[Category:競技中に死亡した |
[[Category:競技中に死亡した野球選手]] |
||
[[Category:ケンタッキー州の人物]] |
[[Category:ケンタッキー州の人物]] |
||
[[Category:1891年生]] |
[[Category:1891年生]] |
||
2014年2月2日 (日) 03:05時点における版
 | |
| 基本情報 | |
|---|---|
| 国籍 |
 アメリカ合衆国 |
| 出身地 | ケンタッキー州ビーバーダム |
| 生年月日 | 1891年1月15日 |
| 没年月日 | 1920年8月17日（29歳没） |
| 身長 体重 |
5' 10" ＝約177.8 cm 170 lb ＝約77.1 kg |
| 選手情報 | |
| 投球・打席 | 右投右打 |
| ポジション | 遊撃手 |
| プロ入り | 1910年 |
| 初出場 | 1912年8月30日 |
| 最終出場 | 1920年8月16日 |
| 経歴（括弧内はプロチーム在籍年度） | |
|
| |
この表について
| |
レイモンド・ジョンソン・チャップマン（Raymond "Ray" Johnson Chapman , 1891年1月15日 - 1920年8月17日）は、アメリカ合衆国ケンタッキー州ビーバーダム出身のプロ野球選手（遊撃手）。右投げ右打ち。
犠打と守備に長けたクリーブランド・インディアンスの正遊撃手だった。1920年8月16日の試合でニューヨーク・ヤンキースのカール・メイズ投手の投球を頭部左側のこめかみ部分に受けて昏倒し、12時間後の翌17日早朝に亡くなった。MLB史上唯一の試合中に他選手から受けた傷害が原因で死亡した選手である（試合中の事故が原因で死亡した選手も他にダク・パワーズのみ）[1]。この悲劇の後に試合中に汚れたボールは審判員の判断でいつでも交換出来るようになり、スピットボールなどボールに細工をする行為の対策が徹底された[2]。翌1921年春にはインディアンスが当時のNFL選手が使用していた革製ヘルメットを試験的に導入しており、打撃用ヘルメットの開発に繋がる一つの契機にもなった[3]。
経歴
1910年にセミプロチームからマイナーリーグへ移り、プロ野球のキャリアを開始した。
1911年7月にMLBのクリーブランド・ナップスに入団した。
1912年8月30日にMLBデビュー。このシーズンは31試合に出場し、打率.312を残した。
1913年から正遊撃手として試合に出場するようになり、犠打数がアメリカンリーグ最多となったのは1913年・1917年・1919年の3度を数え、1917年に記録したシーズン犠打数67はMLB歴代最多記録である（日本プロ野球では2001年に宮本慎也が1シーズン67犠打を達成）。
時々雑なプレーも見せたが、強い腕を持つ遊撃手であり[4]、刺殺数がリーグ最多を記録した年が3度（1915年、1917年、1918年）。1917年には補殺数も528（リーグ最多）を数えた。
また、盗塁王にはなれなかったが、快速走者でもあり[4]、1917年にはリーグ3位の52盗塁を記録した。これは1980年までインディアンズのチーム記録として残った。同じ1917年にリーグ4位の三塁打13本を放っている。1918年にはリーグ最多となる84得点を挙げた。
ピアノを演奏し、アマチュア歌唱コンテストでも一度優勝している。その非常に派手で、明るく社交的な性格からインディアンスの歴代の選手でも最も人気のある選手の一人であった[4]。
1920年シーズンが始まる直前にクリーブランドの著名なガス会社経営の実業家の娘ケイティと結婚した。家業に専念するために引退するのではないかという推測があったが、チャップマンはチームの中で最も親しい友人で、1919年から選手兼任監督に就任したトリス・スピーカー監督のもとでインディアンス初の優勝旗を獲得出来るように協力するために、少なくとも1シーズンはプレーする事を決めた[4]。
死亡事故
1920年8月16日のポロ・グラウンズで行われた対ニューヨーク・ヤンキース戦の5回表、チャップマンはこの回の先頭打者としていつものように前傾姿勢を取りながら打席に立った。対するアンダースローのカール・メイズ投手が1ストライク1ボールからインコース高めへ投じた速球が頭部左側のこめかみ部分を直撃し、チャップマンは地面に倒れて動かなくなった[4][5]。そして、当たった瞬間に右翼手のベーブ・ルースにも聞こえるほどの爆発音のような大きな音がして一塁方向に跳ね返った[4]。メイズはバットのグリップエンドに球が当たったものと思い、球を処理して一塁へ送球した[4][5]。一塁手のウォーリー・ピップは捕球後に異変を察知したという。ピップは本塁で左耳から血を流し、顔を歪めながら倒れているチャップマンを見て立ちすくんだ[4]。審判員は観客席まで走って医者を呼ぶように叫び出し[4][5]、他の選手と同様にスピーカー監督も倒れているチャップマンに駆け寄った[5]。2人の医師（うち1人がヤンキースの医師）が到着して氷を当て、チャップマンは意識を取り戻した[4]。立ち上がり、話そうとしたが、全く言葉が出てこなかった[5]。その後に不自由な足取りで外野の中堅方向に位置するクラブハウスへ向けて自力で歩いて戻ろうとしたが、二塁ベース手前で崩れ落ちた[5]。2人のチームメイトの肩に寄り添いながら、クラブハウスへ担ぎ込まれた[4]。チャップマンは言葉を発する事に苦労していたが、「私は大丈夫だ。カールには気にするなと伝えてくれ」と言ったという。また、「指輪･･･ケイティの指輪」と呟き続けた[5]。メイズは試合が中断されている間もマウンド上で待機していた[5]。
チャップマンは直ぐにニューヨーク市内の病院に搬送された。3.5インチ（約9cm）の頭蓋骨陥没骨折を起こしており、到着した時には意識を失っていた[6]。症状の回復の見込みは立たなかったが、試合後に病院に駆け付けたチームメイトや多くのヤンキースの選手達は一時的に呼吸と脈拍が改善した事を良い知らせとして受け取り、ホテルの部屋に戻った[5]。しかし、その判断は誤りだった。
死球を受けてから12時間後の翌17日午前4時40分にチャップマンは搬送先の病院で亡くなった。29歳没。1909年のダク・パワーズに次いでMLB史上2人目の試合中の事故が原因で死亡した選手となった。妻のケイティは第1子を妊娠中であり、スピーカーが待つホテルへ行き、訃報を聞いた時に気を失ってしまった[5]。この日に予定されていた試合は彼の死により、中止された[4]。チャップマンは頭部に当たる投球に対して避ける素振りさえ見せなかった。夕暮れ時で、当時は頻繁に使用されていた汚れたボールによって目視が難しくなったためと推測された[2][7]。
チャップマンの死後
チャップマンは当時のMLBで最も人気のあった選手の1人であり、ニューヨーク市内各地は死亡事故の話題で持ち切りだった[6]。8月19日にメイズは自発的にマンハッタン地区検察局へ行き、故意によるものでは無かったとして罪には問われない事を確認した[6][8]。
チャップマンの遺体はグランド・セントラル駅で会葬者の大群衆によって見送られた。親友だったタイ・カッブは「メイズを野球界から追放すべきだ」と主張し、インディアンスの何人かの選手も「二度とクリーブランドで姿を見せないでくれ」とメイズに警告した[4]。8月20日にクリーブランド市内の大聖堂で執り行われたチャップマンの葬儀には数千人の多くのインディアンスファンや野球関係者が参列した。遺体はレイクビュー墓地に埋葬された[4]。
インディアンスの選手達は喪章（黒のアームバンド）を着けてプレーした。これはプロスポーツチームが黒のアームバンドを着けてプレーした最初の例と考えられている[9]。スピーカー監督は落胆する選手達を結集し、インディアンスはチャップマンが死亡した1920年シーズンに球団初のリーグ優勝を成し遂げた。そして、ワールドシリーズでもブルックリン・ロビンスを破り、ワールドチャンピオンに輝いた。ワールドシリーズ最終戦の後、インディアンスのクラブハウスでは多くの選手が目に涙を浮かべていた[8]。
また、インディアンスがチャップマンの後釜遊撃手として9月にマイナーリーグのチームから獲得したジョー・シーウェルは通算で7132打席に立ち、三振は114だけという球史に残るコンタクトヒッターとして活躍し、1977年にベテランズ委員会による選考でアメリカ野球殿堂入りを果たした[10]。シーウェルは後年にインディアンスに移籍した時の事を振り返り、「嬉しさよりも不安な気持ちの方が強かったが、北を旅し、クリーブランドのユニフォームに袖を通した時、自分がジョー・シーウェルである事を忘れてチャップマンだとイメージし、クリーブランドに名誉と栄光をもたらすために戦おうと決意した」と述べている[10]。
妻のケイティは死亡事故当時に第1子の女子を妊娠中であり、チャップマンの死後にビジネスマンの男性と再婚した[11]。しかし、最愛の夫の死後はうつ病の発作に苦しみ、1928年4月20日に洗浄液を飲んで自殺した[11]。娘は継父に育てられたが、1929年にはしかに罹り、亡くなった[11]。
2006年にチャップマンはインディアンス野球殿堂入りを果たした[12]。
チャップマンの死後まもなく、リーグ・パークに「彼は彼を知っていた全ての人の心の中に生きている」と刻まれた彼のブロンズの記念プラークが作成された[7]。その後にクリーブランド・スタジアム、次いでジェイコブス・フィールドへと移されたが、ジェイコブス・フィールドに輸送した後は置き場所が無くなり、忘れ去られていた。2007年2月にジェイコブス・フィールドの保管室を掃除する作業員によって再発見された時には、かつて青銅色だった表面にホコリやゴミが付着し、酸化して暗褐色に変わっていた[7]。プラークは復元され、プログレッシブ・フィールドにある歴史公園に展示される事になった[7]。
詳細情報
年度別打撃成績
| 年 度 |
球 団 |
試 合 |
打 席 |
打 数 |
得 点 |
安 打 |
二 塁 打 |
三 塁 打 |
本 塁 打 |
塁 打 |
打 点 |
盗 塁 |
盗 塁 死 |
犠 打 |
犠 飛 |
四 球 |
敬 遠 |
死 球 |
三 振 |
併 殺 打 |
打 率 |
出 塁 率 |
長 打 率 |
O P S |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1912 | CLE | 31 | 132 | 109 | 29 | 34 | 6 | 3 | 0 | 46 | 19 | 10 | 5 | 12 | -- | 10 | -- | 1 | 13 | -- | .312 | .375 | .422 | .797 |
| 1913 | 141 | 601 | 508 | 78 | 131 | 19 | 7 | 3 | 173 | 39 | 29 | -- | 45 | -- | 46 | -- | 2 | 51 | -- | .258 | .322 | .341 | .622 | |
| 1914 | 106 | 442 | 375 | 59 | 103 | 16 | 10 | 2 | 145 | 42 | 24 | 9 | 18 | -- | 48 | -- | 1 | 48 | -- | .275 | .358 | .387 | .745 | |
| 1915 | 154 | 669 | 570 | 101 | 154 | 14 | 17 | 3 | 211 | 67 | 36 | 15 | 26 | -- | 70 | -- | 3 | 82 | -- | .270 | .353 | .370 | .723 | |
| 1916 | 109 | 436 | 346 | 50 | 80 | 10 | 5 | 0 | 100 | 27 | 21 | 14 | 40 | -- | 50 | -- | 1 | 46 | -- | .231 | .330 | .289 | .619 | |
| 1917 | 156 | 693 | 563 | 98 | 170 | 28 | 13 | 2 | 230 | 36 | 52 | -- | 67 | -- | 61 | -- | 0 | 65 | -- | .302 | .370 | .409 | .779 | |
| 1918 | 128 | 571 | 446 | 84 | 119 | 19 | 8 | 1 | 157 | 32 | 35 | -- | 35 | -- | 84 | -- | 6 | 46 | -- | .267 | .390 | .352 | .742 | |
| 1919 | 115 | 518 | 433 | 75 | 130 | 23 | 10 | 3 | 182 | 53 | 18 | -- | 50 | -- | 31 | -- | 3 | 38 | -- | .300 | .351 | .420 | .772 | |
| 1920 | 111 | 530 | 435 | 97 | 132 | 27 | 8 | 3 | 184 | 49 | 13 | 9 | 41 | -- | 52 | -- | 2 | 38 | -- | .303 | .380 | .423 | .803 | |
| 通算：9年 | 1051 | 4592 | 3785 | 671 | 1053 | 162 | 81 | 17 | 1428 | 364 | 238 | 52 | 334 | -- | 452 | -- | 19 | 427 | -- | .278 | .358 | .377 | .735 | |
- 各年度の太字はリーグ最高
- 赤太字はメジャーリーグ記録
- クリーブランド・ナップスは、1915年にクリーブランド・インディアンスに球団名を変更
記録
- シーズン犠打数：67（1917年） - MLB歴代最多記録
- 通算犠打数：334 - MLB歴代6位、現クリーブランド・インディアンス球団記録
脚注
- ^ “Major leaguers who died in-season” (英語). ESPN.com. 2014年1月20日閲覧。
- ^ a b “Chapman beaning - BR Bullpen” (英語). Baseball-reference.com. 2014年1月21日閲覧。
- ^ 佐山和夫 (2008年2月12日). “「ヘルメット」その２ 「耳付き」のはじまりは？”. 朝日新聞デジタル. asahi.com. 2014年1月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “Ray Chapman” (英語). SABR.org. 2013年10月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “THE MAYS/CHAPMAN INCIDENT The IncidentPrelude” (英語). TheDeadballEra.com. 2013年10月29日閲覧。
- ^ a b c “Beaned by a Pitch, Ray Chapman Dies” (英語). The New York Times. 2014年1月14日閲覧。
- ^ a b c d “Hidden diamond: Indians uncover lost Ray Chapman plaque” (英語). USA Today. 2014年1月21日閲覧。
- ^ a b “THE MAYS/CHAPMAN INCIDENT The Aftermath” (英語). TheDeadballEra.com. 2014年1月23日閲覧。
- ^ “Black Arm Band Began In Baseball Back In '20s By Cleveland Indians” (英語). The Morning Call. 2014年1月17日閲覧。
- ^ a b “SPORTS OF THE TIMES; When Sewell Replaced Ray Chapman” (英語). The New York Times. 2014年1月17日閲覧。
- ^ a b c “Katie Daly Chapman” (英語). Findagrave.com. 2013年8月8日閲覧。
- ^ “Carlos Baerga, John Hart to be inducted into Cleveland Indians Hall of Fame” (英語). THE OFFICIAL SITE OF THE CLEVELAND INDIANS. MLB.com. 2014年1月17日閲覧。
関連項目
- 現役中に亡くなったプロ野球選手の一覧
- ダク・パワーズ - メジャーリーグ選手。試合中にファウルボールを追って壁に衝突した事が原因で死亡。
- 久慈次郎 - 日本の社会人野球選手。試合中に牽制球を頭部に受けた事が原因で死亡。
- 東門明 - 日本の大学野球選手。試合中に併殺狙いの送球を頭部に受けた事が原因で死亡。
- マイク・クールボー - マイナーリーグAA級コーチ。試合中にファウルボールを頭部に受けた事が原因で死亡。