「鬼殺し (将棋)」の版間の差分
図1,2で後手「持ち駒角」⇒「持ち駒なし」 |
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2013年10月25日 (金) 18:57時点における版
鬼殺し(おにごろし)は、将棋の戦法の一つ。奇襲戦法である。そのルーツは、大正時代末期、大道詰将棋を出題していた野田圭甫が「可章馬(かしょうま)戦法」という本を売り出したことによるという。「可章馬戦法」の本を売っていた時の売り文句が「この戦法を使えば鬼も逃げ出す、鬼も倒せる」ということから、この名がついたとされている。
いきなり桂が高跳びするという手順だが、早石田の変化(王手飛車をはじめとする両取り狙い、7三地点の突破)を取り込んでいるために破壊力があり、庶民に分かりやすかったことから縁台将棋で流行し、いつしか「鬼殺し」と呼ばれるようになった。
原始鬼殺し
△持ち駒 なし
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△持ち駒 なし
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△持ち駒 角
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△持ち駒 角二
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先手の戦法である。▲7六歩△3四歩に▲7七桂と跳ねる(図1)。これに対して後手が△8四歩ときたら、▲6五桂△6二銀▲7五歩(図2)とする。これに手抜きすると▲7四歩△同歩▲2二角成△同銀▲5五角で飛車・銀の両取りとなるため△6四歩と対応するが、▲2二角成△同銀▲5五角と進む(図3)。この後、△3三銀▲6四角△5二金右▲7四歩△6三金▲7八飛△6四金▲7三歩成で先手必勝となる。(図4)
後手の有効な対策としては、△6二銀で△6二金と立つ手がある。▲6五桂に対して△6四歩~△6三金としておけば、先手に有効な手段はない。
△6二金の受けが発見されてから、鬼殺しはハメ手の奇襲として扱われ、廃れてしまったが、稀にプロの対局でも出現することがあり、その時は後手はいずれも△6二銀と指している。これまでの先例は佐藤大五郎対中原誠戦、神吉宏充対瀬川晶司戦であるが、佐藤を破った中原は「△6二銀(▲7六歩△3四歩▲7七桂の局面で△8四歩との比較で)の方が勝る」と述べている。
新・鬼殺し
ハメ手の要素が強い鬼殺し戦法であるが、この戦法の改良型が米長邦雄によって考案され、プロの実戦でも指されたことがある。
▲7六歩△8四歩に対して▲7五歩と早石田含みの駒組みを進めるのが特徴で、以下△8五歩▲7七角△3四歩▲7八飛が先手の基本型となる。以下、後手の指し手(△8六歩、△6二銀などがある)に応じて臨機応変に動いていくのが特徴である。
手順が本格的になったことで、原始鬼殺し同様の狙いだけでなく、持久戦にも対応する形となったが、後手が穏やかに応じれば先手であるにもかかわらず後手番で石田流に構えたのと同じような展開となるため、プロ間では「先手の得がない」という理由で戦法として定着するまでには至らなかった。 しかし、狙いとなる筋は明快で、アマチュアには非常にわかりやすかったことから、この戦法を著した米長邦雄の「新鬼殺し戦法」は60刷近くを数えるロングセラーとなった。
鬼殺し向かい飛車
鬼殺し戦法の更なる改良形ともいえるのが、島朗考案の「鬼殺し向かい飛車」戦法である。これは角道を止めずに向かい飛車に振り、相手が角交換してきた時には一気に鬼殺しへ変化するという非常に高度な戦法である。これまで考案された鬼殺し系統の戦法の中で、唯一相手が常に正しい手を指し続けても不利にならないとされている。なお角交換しない場合は普通の向かい飛車となるが、相手が角道を止めざるを得ないので有利になる。
この戦法に近い戦い方は森内俊之対羽生善治の第62期名人戦第1局で行われた。先手森内の鬼殺し向かい飛車模様に対し、後手羽生は正しい手を指して角交換しなかったものの、森内はそのまま玉を穴熊に囲い、勝利を収めた。 考案者の島が自著『島ノート』で紹介したため、インターネット将棋では一時期非常に流行したという。
参考図書
- 米長邦雄『新鬼殺し戦法』山海堂、1988年、ISBN 4-381-00068-4