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高音域と中低音を分離した結果、「48kbps程度のレートでCDの音質を実現している」とされる。48kbpsで[[音質|MUSHRA]]が80点 (Excellent) である。24kbpsでは HE-AAC v2 で Good である。<!-- が、一方では「それ以上はビットレートを上げても大して音質が向上しない」性質も併せ持つ。-->全てのビットレートで AAC < HE-AAC v1 < HE-AAC v2 と音質が改善されている。
高音域と中低音を分離した結果、「48kbps程度のレートでCDの音質を実現している」とされる。48kbpsで[[音質|MUSHRA]]が80点 (Excellent) である。24kbpsでは HE-AAC v2 で Good である。<!-- が、一方では「それ以上はビットレートを上げても大して音質が向上しない」性質も併せ持つ。-->全てのビットレートで AAC < HE-AAC v1 < HE-AAC v2 と音質が改善されている。


また、高音域の成分が複雑に入っている音は高音域の[[ノイズ]]が目立ちにくいが、高音域の成分がある程度単調な音ではノイズが乗っているように聞こえることがある(これはSBRの特徴であり、ビットレートを上げてもそれほど改善しない)。したがって、再生帯の幅狭い[[J-POP]]や[[演歌]]を含む[[歌謡曲]]、[[ハードロック]]、[[トランス (音楽)|トランス]]などに向いているが、一方で再生帯の幅広い[[ジャズ]]や[[クラシック音楽|クラシック]]などには不向きである。
また、高音域の成分が複雑に入っている音は高音域の[[ノイズ]]が目立ちにくいが、高音域の成分がある程度単調な音ではノイズが乗っているように聞こえることがある(これはSBRの特徴であり、ビットレートを上げてもそれほど改善しない)。したがって、高音域が複雑な[[J-POP]]や[[演歌]]を含む[[歌謡曲]]、[[ハードロック]]、[[トランス (音楽)|トランス]]などに向いているが、一方で高音域が単調な[[ジャズ]]や[[クラシック音楽|クラシック]]などには不向きである。


2004年のマルチチャンネルのテストでは、HE-AAC 160kbps は [[ドルビーデジタル]] AC-3 384kbps や [[Windows Media Audio]] 192kbps をほとんどのケースで音質([[平均オピニオン評点]])で上回っている<ref name="trev_305-moser">[http://tech.ebu.ch/docs/techreview/trev_305-moser.pdf MPEG-4 HE-AAC v2 - EBU TECHNICAL REVIEW – January 2006]</ref>。
2004年のマルチチャンネルのテストでは、HE-AAC 160kbps は [[ドルビーデジタル]] AC-3 384kbps や [[Windows Media Audio]] 192kbps をほとんどのケースで音質([[平均オピニオン評点]])で上回っている<ref name="trev_305-moser">[http://tech.ebu.ch/docs/techreview/trev_305-moser.pdf MPEG-4 HE-AAC v2 - EBU TECHNICAL REVIEW – January 2006]</ref>。

2013年10月8日 (火) 13:28時点における版

HE-AAC (High-Efficiency Advanced Audio Coding) は、オーディオ圧縮符号化国際標準化方式であるMPEG-4 AACの拡張仕様であり、MPEG-4 Audio (ISO/IEC 14496-3)においてAACバージョン3として標準化された。HE-AAC が2003年に、HE-AAC v2 が2006年に制定された。

概要

HE-AAC では、Coding Technologiesがmp3PROで採用している Spectral Band Replication(SBR)技術をAACに組み込むことにより、再生帯域を拡大して主に低ビットレート(128kbps以下[1])での音質(圧縮効率)を大幅に向上させている。これによりHE-AACは、MPEG-4 AAC Plus SBRや、Coding Technologiesの登録商標であるaacPlusAAC+などの名称でも呼ばれている。

HE-AAC v2 では、さらなる低ビットレート (48kbps以下[1])で音質を改善している。aacPlus v2eAAC+ といった商標名で呼ばれることもある。

iTunes 9以降、WinampSonicStage等で無料でエンコードが可能である。また『着うたフル』に使用されているコーデックとしても有名。オープンソースのライブラリとしては libaacplus[2] がある。

技術

HE-AAC v1 では、そのレートより若干低いAAC音声データに SBR と呼ばれる部分を追加して記録している。 行程は、はじめに高周波数部分において、圧縮後のサンプリングレートで失われる周波数以上を抜き出す。このとき、エンコード部分に収まる部分との関連性を調べ、SBR部分の情報として圧縮する。その後、低サンプリングレートで通常通りAACとして圧縮を行う。 そして、この二つのデータをセットにして記録する。 デコードする時にはまず、AACをデコードした上で、SBRを使い高音域を予測して生成したデータを合成し、再生を行う。

HE-AAC v2 では、v1 にパラメトリックステレオを追加している。

互換性

HE-AACのデータは、ベースとなるAAC部分に、拡張データであるSBR部分を上乗せする形で符号化されるため、従来のAACしか再生できないプレイヤーでも、音質は劣るもののAAC部分だけを再生できる、という特徴がある。

音質

高音域と中低音を分離した結果、「48kbps程度のレートでCDの音質を実現している」とされる。48kbpsでMUSHRAが80点 (Excellent) である。24kbpsでは HE-AAC v2 で Good である。全てのビットレートで AAC < HE-AAC v1 < HE-AAC v2 と音質が改善されている。

また、高音域の成分が複雑に入っている音は高音域のノイズが目立ちにくいが、高音域の成分がある程度単調な音ではノイズが乗っているように聞こえることがある(これはSBRの特徴であり、ビットレートを上げてもそれほど改善しない)。したがって、高音域が複雑なJ-POP演歌を含む歌謡曲ハードロックトランスなどに向いているが、一方で高音域が単調なジャズクラシックなどには不向きである。

2004年のマルチチャンネルのテストでは、HE-AAC 160kbps は ドルビーデジタル AC-3 384kbps や Windows Media Audio 192kbps をほとんどのケースで音質(平均オピニオン評点)で上回っている[1]

種類

HE-AACにもいくつかの種類が存在する。しかし、1バイトを除いてほぼ同一であるので、機能に差はない。

ただし、下位互換であるAAC形式のコンテナにはiTunesなどで使用される拡張子がM4Aのものと、Winampなどで使用される拡張子がAACのもの(特にAACPlusと呼ばれる)に互換性がないため注意が必要である。

このため両者の拡張子のみを書き換えても正常に読み込みできないことがある。(特にAACのファイルはau Music Portでは読み込めない)

他にMP4フォーマット(拡張子MP4・3GP)が使用されることがあり、アプリケーションやデバイスによって対応状況が異なる。

MPEG-2 Audio AAC Bandwidth (MPEG-2 HE-AAC)
MPEG-2の構造・用途を用いたHE-AAC。SD-Audio及びモバHO!に使われている(AAC+SBRという名で呼ばれている)
MPEG-4 Audio AAC Bandwidth (MPEG-4 HE-AAC)
MPEG-4の構造・用途を用いたHE-AAC。現在あるものは殆どこちらの規格。

HE-AAC v2

HE-AAC v1 にパラメトリックステレオを利用した音質改善を施した物が MPEG-4 High Efficiency AAC v2 profile (HE-AAC v2) である。高ビットレートでの音質改善はないが、48kbps 以下の低ビットレートで音質が改善する[1]

特許

v1 はフィリップスドルビーノキア特許を持っていて、利用には特許プールとの契約が必要。v2 は v1 に加えて、フィリップスドルビーが特許を持っていて、特許プールに加えてドルビーとの特許契約が必要。

利用例

関連項目

参照

  1. ^ a b c d MPEG-4 HE-AAC v2 - EBU TECHNICAL REVIEW – January 2006
  2. ^ HE-AAC+ Codec as Shared Library - tipok.org.ua

外部リンク