「レオノーレ序曲第1番」の版間の差分

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『'''レオノーレ'''』'''序曲第1番 ハ長調 作品138'''は、[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン]]が作曲した[[序曲]]。[[オペラ]]『[[フィデリオ]]』のために作曲された4つの序曲の1つ。
『'''レオノーレ'''』'''序曲第1番 作品138'''は、[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン]]が作曲した[[序曲]]。[[オペラ]]『[[フィデリオ]]』のために作曲された4つの序曲の1つ。


==概要==
==概要==
ベートーヴェンの唯一のオペラ『[[フィデリオ]]』は、最初『レオノーレ』のタイトルで[[1804年]]11月20日に初演されたが、これは失敗に終わっている。全3幕で、その第1幕が異常に長かったことと、台本が稚拙であったなどが原因とされているが、ベートーヴェンは[[1806年]]の3月には新たに2幕版の改訂初演に臨んでおり、この2幕版は一応の成功を収めている。しかし[[1813年]]から3度、台本を含めた改訂にトライし、曲目も『フィデリオ』と変えて[[1814年]]5月23日にケルントナトーア劇場で初演、ついに大きな成功と喝采を博した。
ベートーヴェンの唯一のオペラ『[[フィデリオ]]』は、最初『レオノーレ』のタイトルで[[1805年]][[11月20日]]に初演されたが、これは失敗に終わっている。全3幕で、その第1幕が異常に長かったことと、台本が稚拙であったなどが原因とされているが、ベートーヴェンは[[1806年]]の3月には新たに2幕版の改訂初演に臨んでおり、この2幕版は一応の成功を収めている。しかし[[1813年]]から三たび台本を含めた改訂を試み、曲目も『フィデリオ』と変えて[[1814年]][[5月23日]][[ケルントナトーア劇場]]で初演、ついに大きな成功と喝采を博した。


こうした過程からわかるように、序曲も第1稿のために[[レオノーレ序曲第2番|『レオノーレ』序曲第2番]]、第2稿のために[[レオノーレ序曲第3番|『レオノーレ』序曲第3番]]、第3稿のために『フィデリオ』序曲が作曲されている。この『レオノーレ』序曲第1番は[[1807年]]、[[プラハ]]での上演が計画された際に作曲されたものであったが、最終的にこの計画は水に流れ、ベートーヴェンの生前には演奏されなかった。
こうした過程からわかるように、序曲も第1稿のために[[レオノーレ序曲第2番|『レオノーレ』序曲第2番]]、第2稿のために[[レオノーレ序曲第3番|『レオノーレ』序曲第3番]]、第3稿のために『フィデリオ』序曲が作曲されている。この『レオノーレ』序曲第1番は[[1807年]]、[[プラハ]]での上演が計画された際に作曲されたものであったが、最終的にこの計画は実現せず、ベートーヴェンの生前には演奏されなかった。出版は[[1827年]]に行われ、[[1828年]][[2月7日]]に[[ウィーン]]で初演されている。この出版の際に1805年に作曲されたものと誤認されたため、レオノーレ序曲「第1番」と呼ばれている


番号付きの『レオノーレ』序曲としては最後に書かれた力作であり、主題や動機も『フィデリオ』序曲ホ長調ほどではないが、第2番や第3番と関連が薄く、規模は小さいがこの歌劇の期待感を募らせる吸引力を持つ魅力的な音楽となった。
主題や動機において、第2番や第3番との関連は薄い。番号付きの『レオノーレ』序曲としては最後に書かれた力作であり、規模は小さいがこの歌劇の期待感を募らせる吸引力を持つ魅力的な音楽となった。


==編成==
==編成==
[[フルート]]2、[[オーボエ]]2、[[クラリネット]]2、[[ファゴット]]2、[[ホルン]]4、[[トランペット]]2、[[ティンパニ]]、[[弦五部]]
*[[木管楽器]]
:[[フルート]]2、[[オーボエ]]2、[[クラリネット]]2、[[ファゴット]]2
*[[金管楽器]]
:[[ホルン]]4、[[トランペット]]2
*[[打楽器]]
:[[ティンパニ]]
*[[弦五部]]


==構成==
==構成==
[[ハ長調]]、序奏をもつ変則的な[[ソナタ形式]]。演奏時間は約10分。
*アンダンテ・コン・モート-アレグロ・コン・ブリオ

[[ハ長調]]、アンダンテ・コン・モートの序奏に続いて、アレグロ・コン・ブリオの主部に入る。
4/4拍子、アンダンテ・コン・モートの動きの細かい序奏に続いて、2/2拍子、アレグロ・コン・ブリオの主部に入り、付点リズムを強調した快活な第一主題になだらかな第二主題が続く。展開部にあたる部分には、オペラ中のアリア「人生の春の日に」(第2、第3番でも用いられている)をもとにした3/4拍子、[[変ホ長調]]のアダージョが置かれる。型通りの再現部と第一主題を扱ったコーダが続くが、コーダ冒頭のクレッシェンドには[[ジョアッキーノ・ロッシーニ]]の影響を認めることができる。


==演奏時間==
約10分。


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2013年6月11日 (火) 03:49時点における版

レオノーレ序曲第1番 作品138は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲した序曲オペラフィデリオ』のために作曲された4つの序曲の1つ。

概要

ベートーヴェンの唯一のオペラ『フィデリオ』は、最初『レオノーレ』のタイトルで1805年11月20日に初演されたが、これは失敗に終わっている。全3幕で、その第1幕が異常に長かったことと、台本が稚拙であったなどが原因とされているが、ベートーヴェンは1806年の3月には新たに2幕版の改訂初演に臨んでおり、この2幕版は一応の成功を収めている。しかし1813年から三たび台本を含めた改訂を試み、曲目も『フィデリオ』と変えて1814年5月23日ケルントナートーア劇場で初演、ついに大きな成功と喝采を博した。

こうした過程からわかるように、序曲も第1稿のために『レオノーレ』序曲第2番、第2稿のために『レオノーレ』序曲第3番、第3稿のために『フィデリオ』序曲が作曲されている。この『レオノーレ』序曲第1番は1807年プラハでの上演が計画された際に作曲されたものであったが、最終的にこの計画は実現せず、ベートーヴェンの生前には演奏されなかった。出版は1827年に行われ、1828年2月7日ウィーンで初演されている。この出版の際に1805年に作曲されたものと誤認されたため、レオノーレ序曲「第1番」と呼ばれている。

主題や動機において、第2番や第3番との関連は薄い。番号付きの『レオノーレ』序曲としては最後に書かれた力作であり、規模は小さいがこの歌劇の期待感を募らせる吸引力を持つ魅力的な音楽となった。

編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ弦五部

構成

ハ長調、序奏をもつ変則的なソナタ形式。演奏時間は約10分。

4/4拍子、アンダンテ・コン・モートの動きの細かい序奏に続いて、2/2拍子、アレグロ・コン・ブリオの主部に入り、付点リズムを強調した快活な第一主題になだらかな第二主題が続く。展開部にあたる部分には、オペラ中のアリア「人生の春の日に」(第2、第3番でも用いられている)をもとにした3/4拍子、変ホ長調のアダージョが置かれる。型通りの再現部と第一主題を扱ったコーダが続くが、コーダ冒頭のクレッシェンドにはジョアッキーノ・ロッシーニの影響を認めることができる。