「ポリアクリルアミドゲル電気泳動」の版間の差分

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ポリアクリルアミドは[[アガロースゲル電気泳動|アガロース]]よりもさらに[[分子ふるい]]効果が大きく、蛋白質や比較的低分子量の核酸を分離するのに適している。
ポリアクリルアミドは[[アガロースゲル電気泳動|アガロース]]よりもさらに[[分子ふるい]]効果が大きく、蛋白質や比較的低分子量の核酸を分離するのに適している。


[[DNA]]、[[RNA]]などの核酸[[分子]]はマイナスの[[電荷]]を持つため陽極方向に移動する。分子ふるい効果により[[分子量]]の小さいものほど長く泳動される。核酸分子は[[尿素]]などの[[変性]]剤の存在下で1本鎖となり、その長さに応じて精密に分離される。末端に特定の[[塩基]]を有するDNA断片をこの方法で泳動すると、その長さに相当する位置にのみDNAが検出されるので、[[塩基配列]]の決定('''[[シークエンス|シークエンシング]]''')に用いられる。
[[DNA]]、[[RNA]]などの核酸[[分子]]はマイナスの[[電荷]]を持つため陽極方向に移動する。分子ふるい効果により[[分子量]]の小さいものほど長く泳動される。核酸分子は[[尿素]]などの[[変性]]剤の存在下で直線状の1本鎖となり、その長さに応じて精密に分離される。末端に特定の[[塩基]]を有するDNA断片をこの方法で泳動すると、その長さに相当する位置にのみDNAが検出されるので、[[塩基配列]]の決定('''[[シークエンス|シークエンシング]]''')に用いられる。


[[画像:SDS-PAGE.jpg|thumb|230px|SDS-PAGEの例。左1列が分子量を決めるためのマーカー、右5列が分析対象の蛋白質。(出典:英語版"SDS-PAGE")]]
[[画像:SDS-PAGE.jpg|thumb|230px|SDS-PAGEの例。左1列が分子量を決めるためのマーカー、右5列が分析対象の蛋白質。(出典:英語版"SDS-PAGE")]]

2006年3月4日 (土) 16:53時点における版

ポリアクリルアミドゲル電気泳動(-でんきえいどう)は、アクリルアミドの重合体であるポリアクリルアミドのゲルを使用した電気泳動により、蛋白質核酸を分離する方法。略してPAGE=ペイジ=ともいう。

1964年にデイビスとオーンスタインにより導入された。初期にはガラス管内にゲルを作製して用いる方法(ディスク電気泳動)であったが、現在は2枚のガラス板の間にゲルを作製する方法が主流。様々な応用が派生した重要な手法である。

原理

ポリアクリルアミドはアガロースよりもさらに分子ふるい効果が大きく、蛋白質や比較的低分子量の核酸を分離するのに適している。

DNARNAなどの核酸分子はマイナスの電荷を持つため陽極方向に移動する。分子ふるい効果により分子量の小さいものほど長く泳動される。核酸分子は尿素などの変性剤の存在下で直線状の1本鎖となり、その長さに応じて精密に分離される。末端に特定の塩基を有するDNA断片をこの方法で泳動すると、その長さに相当する位置にのみDNAが検出されるので、塩基配列の決定(シークエンシング)に用いられる。

SDS-PAGEの例。左1列が分子量を決めるためのマーカー、右5列が分析対象の蛋白質。(出典:英語版"SDS-PAGE")

蛋白質の荷電は種類によって大きく異なるが、陰イオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下ではSDS分子が蛋白質分子を変性させミセルを作るため、蛋白質分子は全体として陰性に荷電し陽極方向に移動する。この方法がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE=エスディーエスペイジ=と略す)で、核酸の場合と同様に分子量による分離が行える。

両性イオンを含む緩衝液中で蛋白質を泳動し等電点によって分離する方法が等電点電気泳動であり、通常は担体としてポリアクリルアミドを用いる。

多種類の蛋白質の分析によく用いられる二次元電気泳動は、1次元目で細長いゲルを用いた等電点電気泳動を行い、それを2次元目のSDS-PAGEで更に分離するのが通常の方法である。