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{{独自研究|date=2013-2}}
'''浮遊粒子状物質'''(ふゆうりゅうしじょうぶっしつ、略称:'''SPM''', ''Suspended Particulate Matter'')は、[[大気]]中に浮遊している[[粒子状物質]](PM)のことである。代表的な「[[大気汚染]]物質」のひとつ。

==概要==
日本の[[環境基準]]の測定の対象になるものの定義としては、粒径10μm以下のものとされている。
発生源は工場の[[ばい煙]]、[[自動車]][[排気ガス]]などの人の活動に伴うもののほか、自然界由来([[海塩]]の飛散、[[火山]]、[[森林]]火災など)のものがある。

また、粒子として排出される一次粒子とガス状物質が大気中で粒子化する[[二次生成粒子]]がある。

粒径により呼吸器系の各部位へ沈着し人の健康に影響を及ぼす。年平均100mg/m³になると呼吸器への影響、全死亡率の上昇などがみられることなどが知られている。このためSPMの環境基準は、1時間値の1日平均値が0.10mg/m³以下、1時間値が0.20mg/m³以下、と定められている。

[[高度成長期]]以降、度重なる規制強化がなされたが、著しい[[モータリゼーション]](特に[[トラック輸送]]による物流の比率の相対的増加や[[乗用車]]の[[レクリエーショナル・ビークル|RV]]化などが大きな原因となったといえよう。)に規制が追いつかず、[[バブル期]]までは、悪化の一途をたどってきた。2003年10月1日から、[[東京都]]・[[埼玉県]]・[[神奈川県]]・[[千葉県]]の[[ディーゼル車規制条例]]により排出ガス基準を満たさないディーゼル車の走行規制が始まった。これらの規制強化により、近年は、改善傾向にはあるものの、都市部の[[幹線道路]]沿いなどではまだ環境基準の達成率は低い。

==微小粒子状物質==
浮遊粒子状物質のなかで、粒径2.5μm以下の小さなものを微小粒子状物質([[粒子状物質|PM2.5]])と呼んでいる。
微小粒子状物質は粒径がより小さくなることから、肺の奥深くまで入りやすく健康への影響も大きいと考えられている。

日本においては、欧米における対策に比べ長らく規制が遅れていたが、[[東京大気汚染公害訴訟]]における和解において対策に言及されたことを受け、[[中央環境審議会]]において検討が進められた。その答申を踏まえ、年平均値15μg/m&sup3;以下かつ1日平均値35μg/m&sup3;以下とする[[環境基準]]が[[2009年]][[9月9日]]に定められた。<ref>[http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=11546]平成21年9月9日「微小粒子状物質に係る環境基準について」(告示)について(お知らせ)</ref>

== 脚注 ==
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==関連項目==
*[[大気汚染防止法]]
*[[自動車排出ガス規制]]

==リンク==

*[http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2008/06/40i6p102.htm 大気中微小粒子状物質(PM2.5)について(東京都)]
*[http://www.env.go.jp/air/report/h20-01/index.html 微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書]

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2013年2月7日 (木) 13:41時点における版

粒子状物質(りゅうしじょうぶっしつ、Particulate Matter, PM, Particulate)とは、一般的にはマイクロメートル(μm)の大きさの固体液体の微粒子のことをいう。主に燃焼による煤塵黄砂のような飛散土壌海塩粒子、工場や建設現場で生じる粉塵等などからなる。これらを大気汚染物質として扱うときに用いる用語。

類義語と指標

PM10, SPM, PM2.5の分級(捕集効率)特性。SPMはPM6.5 - 7.0に相当する[1]

「粒子状物質」は一般的には大気汚染の原因となる微粒子全般をいうが、日本では大気汚染防止法が定める自動車排ガスの中の「粒子状物質」のみに限定して用いる場合があるので注意を要する[2][3]。一般的用法としての「粒子状物質」には、いくつかの類義語と指標がある。

SPM(Suspended Particulate Matter、浮遊粒子状物質
大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径(空気動力学径、以下同)が10μm以下のもの。粒子径10μmで100%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。PM6.5 - 7.0に相当する。大気汚染の指標として日本などで用いられる[4][1]
PM10
大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね10μm以下のもの。粒子径10μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。大気汚染の指標として世界の多くの地域で用いられる[5][4]
PM2.5(微小粒子状物質)
日本では訳語として「微小粒子状物質」の語が充てられるが、日本以外では相当する単語はなく専らPM2.5と呼ぶ。大気中に浮遊する微粒子のうち、粒子径が概ね2.5μm以下のもの。粒子径2.5μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する微粒子。PM10と比べて小さなものが多いため、健康への悪影響が大きいと考えられている。1990年代後半から採用され始め[6]、世界の多くの地域でPM10とともに大気汚染の指標とされている[2][4][7]
PM0.1
日本では訳語として「超微小粒子」などと呼ばれる。PM2.5よりもさらに一桁以上小さい、粒子径が概ね0.1μm以下(ナノメートルの大きさ)の微粒子を指す。PM2.5と比べて健康影響が大きいとされるが、研究途上にある[8][9][10]
ディーゼル排気微粒子(Diesel Exhaust Particles, DEP または Diesel Particulate Matter, DPM)
ディーゼル車の排気ガスに含まれる微粒子。PM2.5の大部分を占めているという研究もある[10]
吸入性粒子、吸入性粉塵 (Respirable Suspended Particulate, RSP)
の奥に達して沈着する可能性のある微粒子。健康への影響の観点から定義したもの。5μm以下の微粒子が主であるが、それより大きなものも重量や形状、(個人によって異な)呼吸の速さによっては肺に到達しうる。例として、ISO 7708に定められている「吸入性粉塵」は「相対沈降径(空気動力学径)4μmで50%の捕集効率を持つ分粒装置を透過する粉塵」であり、日本の労働安全衛生法下の「作業環境測定基準」にも採用されている[11][12]。また、金属粉末や石綿のように有害性の高いものもあれば小麦粉のように害がほとんどないものもあり、微粒子の組成によって健康に対する害が異なる点に留意する必要がある[13]
降下煤塵
大気中の微粒子のうち、粒子径が大きいため浮遊できずに降下・落下するもの。大気中を徐々に落下するものと、などの降水に混じって落下するものとがある[14]
大気エアロゾル粒子(浮遊粉塵)
大気中を浮遊する微粒子。気象学用語。

粒子状物質の大きさによる性質の違いを考えるときは2μmを境にして、それより大きなものを「粗大粒子」、小さなものを「微小粒子」という。比較的大きな重力を受ける粗大粒子は落下が相対的に速いが、微小粒子は重力の影響が小さく拡散も遅いため、雲核になって雲粒に取り込まれたり(レインアウト)降水に取り込まれたり(ウォッシュアウト)しないと、比較的長期の汚染や高濃度汚染を起こしやすい。ただし、「エイトケン粒子」と呼ばれる0.1μm - 0.01μmのレベルになると、速やかに凝集して粒子径の大きな微粒子に変化する傾向があり、寿命はむしろ短くなる[15]

マイクロメートルよりも大きな粒子はほとんどが浮遊せず、降下する。統一された用語ではないが、この大きさの粒子は「降下物」などと呼ぶことが多い。粉塵と呼ばれるものにはこの大きさのものも含まれる。

分類

[2][16]

発生源による分類
一次生成粒子
直接大気中に放出される
煤煙
燃焼により発生
粉塵
物の破砕等により発生
大気汚染防止法が定める
粒子状物質

自動車排気等により発生
土壌粒子
風塵・砂塵嵐により発生
海塩粒子
海面より発生
など
二次生成粒子
大気中で生成される
環境中の存在形態による分類
降下煤塵
大気中を降下する

(大気中を浮遊する)
大気中を浮遊する微粒子の大きさ(空気動力学径)による分類
大きい← →小さい

(大きなものが多い)
PM10
10μm - 50%
SPM 又は 浮遊粒子状物質
10μm - 100%
PM2.5 又は 微小粒子状物質
2.5μm - 50%

様々な粒子状物質

発生源や組成から粒子状物質を区分すると、様々な種類の微粒子が存在することが分かる[17]

煤煙は物を燃焼させることで生じ、主にからなる煤塵とに分けられる。煙の中には硫黄分や等が固体・液体の化合物として含まれている。これは工場生産、焼畑野焼き焚き火、燃料を用いるストーブ暖炉、航空機や船舶のエンジン等、産業や生活の様々な場面で用いられる火のほか、自然の山火事等でも発生する。

燃焼により煤煙と同時に生じる気体成分(ガス状物質)は、大気中で化学変化を起こして固体や液体に変質することがある。こうした大気中で生成する粒子状物質を「二次生成粒子」といい、燃焼由来の二酸化硫黄が変質して生じる硫酸エアロゾル等が知られている。

大気汚染防止法が定める自動車由来の「粒子状物質」は煤煙と二次生成粒子からなる。この中でも、ディーゼルエンジン排ガス起源のディーゼル排気微粒子(DEP)は健康への害が大きいという報告があり、社会的に問題視されている[2]

粉塵石炭(炭塵)、セメント、鉄などの金属(金属粉)のほか、大気汚染防止法で「特定粉じん」に指定され取扱が厳しく規定されている石綿などからなる。主に産業分野であり、工場の他、建物の解体などの建設現場で多く生じる。

自然に由来するものでは、主に海面の微小な気泡の破裂により生じる海塩粒子、軽い砂塵からなる表土により風塵砂塵嵐となって飛散することにより生じる土壌粒子(東アジアでは黄砂)、星間物質宇宙から降下してくる宇宙塵などがある。

また研究により指摘がなされている程度の段階ではあるが、農業に伴い排出されるやもみ殻、イソプレンテルペンなど植物に由来する二次生成粒子等が粒子状物質(特にPM2.5)の中に含まれる濃度変化に影響していることも知られている[18]

健康への影響

人間が呼吸を通して微粒子を吸い込んだ時、気管など呼吸器に沈着することで健康への影響を引き起こす[8]。粒子径が小さいほど、肺の奥まで達する可能性が高い。粒子径以外に粒子の形状や個人の呼吸の速度などにもよるが、概ね5μm以下のものは肺胞にまで達する可能性があるとされる[12]。ただし、1μmでは吸入量の1 - 2割が肺胞まで達するのみで残りは呼吸により再び排出される(Soderholm、1989年)[12]。20nm (0.02μm)付近が肺胞への沈着が最も多く50%程度とされ、これ以下ではむしろ肺胞よりも上気道への沈着の方が多くなるとされる[9]

疫学的には、呼吸器罹患率や死亡率の増加、肺機能の低下、重い症状としては肺の毛細血管への刺激や呼吸困難肺気腫などが知られている。また一般的に3μm以下のものは健康への影響を及ぼすとの報告がある[8]。ラットにおける実験では、ディーゼル排気微粒子が免疫機能へ影響を及ぼしアレルギーを憎悪させるという報告がある。黄砂においてもアレルギーを悪化させるという実験報告があるほか、中国、台湾、韓国では黄砂の飛来時に呼吸器疾患や心疾患、アレルギーが増加したとの論文報告が複数ある[19]。また、PM0.1のような超微小粒子のレベルになると肺以外への影響も懸念されるような血液への移行があるという報告もあるが、研究途上である[9]

最も古い疫学的研究としてアメリカにおける二酸化硫黄と粒子状物質の健康影響に関する研究(1974年)等がある。1980年には「一般の大気環境の濃度範囲の粒子状物質や二酸化硫黄が健康な人に死亡を引き起こすような証拠はない」と結論付ける論文が発表されて議論となった事があるが、すでにこの時期には汚染の濃度が低下しつつあり急速な健康影響が生じなくなっていた(長期的な暴露による影響に主題が移っていった)のではないかという考察がある。その後1980年代後半から研究報告が増え、Pope, Schwartzらをはじめとして都市部で日常的に観測される濃度での死亡率との関連性を肯定する報告、長期的な暴露に関する報告が複数発表された[6]

(Dockeryら、1993年、Popeら、1995年)をまとめた(新田、2009年)の報告によれば、「ハーバード6都市研究」と呼ばれるコホート研究の結果、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患肺疾患による死亡の相対リスクとの間で、有意な関連性が認められている。また(Popeら、1995年、2002年、Krewskiら、2000年)をまとめた(新田、2009年)の報告によれば、米国癌学会の研究を利用しアメリカの50都市30万人を対象に1989年までの7年間(追跡調査では1998年まで)行われた解析調査で、PM2.5の濃度と、全死亡および心疾患・肺疾患・肺癌による死亡との間で、有意な関連性が認められている。アメリカではこれらの研究が明らかになったことを契機にPM2.5の環境基準が設定されるに至った。日本でもSPM濃度と肺癌による死亡との関連性を示唆する研究報告がある[6][10]

定量的な推計報告の主な例では、1990年において大気浄化法のによる規制がなかった場合と比較して年間184,000人が助かったとの推計(アメリカ環境保護庁、1997年)、PM10への短期暴露により8,100人が死亡しているとの推計(イギリス保健省・大気汚染健康影響委員会、1998年)、ディーゼル排気による発癌を被る人は年間5,000人余りとする推計(日本、岩井・内山、2001年)などがある[10]

環境への影響

自然環境や人間以外に与える影響としては、含有物質にもよるが金属腐食、塗装面の劣化、彫刻などの芸術作品や人工構造物の劣化などの物理的被害、降雨へ取りまれて酸性雨の発生に寄与する間接的影響が挙げられる。また、煙霧の原因物質として視程を悪化させる作用[15]凝結核として働きを生成する作用、の表面に堆積し太陽光を吸収する作用、大気中のエアロゾル粒子として働き太陽光を吸収する作用(日傘効果地球薄暮化)による気候への影響も考えられている[8]

測定

SPM、PM10、PM2.5の測定法は主に、大気を吸引してフィルタ上に粒子を集め電子天秤でその重量を測定する「フィルタ法」と、同様に集めた粒子にベータ線を照射してその透過率から重量を測定する「ベータ線吸収法」、フィルタ経由でカードリッジに集めた粒子を振動により重量測定する「フィルタ振動法」(Tapered Element Oscillating Microbalance、TEOM)がある。日本ではSPMの環境基準が設定された1973年以来、ロウボリウムエアサンプラ(Low Volume Air Sampler)と呼ばれる測定器を用いて「フィルタ法」で測定が行われている[4]

各国の動向

世界のエアロゾルの光学的厚さ(粒子状物質とほぼ同じ分布を示す)、2007-2011年(NASA
EU各国のPM10、24時間値の年平均値の90パーセンタイル値(2005年、欧州環境機関

各国の環境基準と規制の動向について解説する。

WHO

世界保健機関(WHO)は、公衆衛生の進展度が異なる各国が環境基準を定める際のガイドラインとして、粒子状物質を含む「大気質指針」(Air Quality Guidelines)と暫定目標を定めている。1987年にWHO欧州地域事務局がヨーロッパのガイドラインを定めて以降、健康影響に関する評価を進めて世界全体を対象としたガイドラインに拡張し、2006年10月 - 2007年3月にかけて公表した。以下のような構成となっており、最終的には「大気質指針」が理想であるが、各国の状況も尊重され、これと異なる独自の基準を設定することを妨げるものではないと表明している。なお、下表の24時間平均は、99パーセンタイル値(この値を超えない日は年間365日のうち99%、超える日は1%=3日間まで)[20]

WHO大気質指針
PM10 24時間平均 50μg/m3
年平均 20μg/m3
PM2.5 24時間平均 25μg/m3
年平均 10μg/m3
WHO大気質指針 暫定目標
暫定目標1 暫定目標2 暫定目標3
PM10 24時間平均 150μg/m3
年平均 70μg/m3
24時間平均 100μg/m3
年平均 50μg/m3
24時間平均 75μg/m3
年平均 30μg/m3
PM2.5 24時間平均 75μg/m3
年平均 35μg/m3
24時間平均 50μg/m3
年平均 25μg/m3
24時間平均 37.5μg/m3
年平均 15μg/m3

アメリカ

大気浄化法により1971年に初めて環境基準が設定された。当初は全浮遊粒子状物質(Total Suspended Particles, TSP)の値を定めていたが、1987年の改訂でPM10に変更、1997年の改定でPM2.5の値が追加されている。現在の基準は以下の通り[20]

PM10 24時間平均 150μg/m3(超過は年1回まで)
PM2.5 24時間平均 35μg/m3(年平均値の98パーセンタイル値の3年間平均値)
年平均 15μg/m3(年平均値の3年間平均値。緩和規定あり)

EU

ヨーロッパでは各国が独自に基準を定めている。EU広域では、1980年に当時のECが浮遊粒子(Suspended Particulate, SP)の環境基準の値を定め、1990年にPM10の値を設定している。現在、「Directive(EU指令) 2008/50/EC」では、以下のような基準を定めている[21][22]

PM10 24時間平均 50μg/m3(超過は年35回まで)
年平均 40μg/m3
PM2.5 年平均 25μg/m3

日本

日本では大気汚染防止法において環境基準を設定すべきと定め、1972年に浮遊粒子状物質(SPM)の基準を初めて設定した。現行では環境省告示としてSPMと微小粒子状物質(PM2.5)の基準を定めている[23]

  • SPM:1時間値の1日平均値0.10mg/m3(100μg/m3相当)以下、かつ1時間値が0.20mg/m3(200μg/m3相当)以下であること(1973年5月8日告示・現行1996年改正版「大気の汚染に係る環境基準について」[24])。
  • PM2.5:1年平均値が15μg/m3以下、かつ1日平均値が35μg/m3以下であること(2009年9月9日告示・現行「微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について」[25])。

基準を上回る状態が継続すると予想されるときは、大気汚染注意報を発表して排出規制や市民への呼びかけを行うことが大気汚染防止法で規定されている。また、自動車NOx・PM法でも三大都市圏の中心地域において一部の自動車に排ガス規制措置が執られている(自動車排出ガス規制)。

平成20年度(2008年)の環境省発表による国内全測定局のSPM濃度の年平均では、自動車排出ガス測定局(自排局)で昭和49年(1974年)に0.16mg/m3を超えていたものが翌年に0.09mg/m3以下に漸減、以後緩やかに減少し平成13年(2001年) - 平成20年(2008年)まで0.04mg/m3以下を維持している。また一般環境大気測定局(一般局)で0.06mg/m3近くだったものが緩やかに減少し昭和56年(1981年)以降は0.04mg/m3以下、平成13年(2001年)頃 - 平成20年(2008年)まで0.03mg/m3以下を維持している。また同発表における平成20年度(2008年)の環境基準達成率は自排局99.3%、一般局99.6%だった[26]

中国

中国では1982年に初めて全浮遊粒子状物質(TSP, 100μm以下)と浮遊粒子(PM10に相当)の環境基準を設定[27][28]、2度改正され2012年改正(2016年施行予定)の国家標準GB 3095-2012「环境空气质量标准」(環境空気質基準)ではPM2.5の基準も追加された[29][30][27]。2009年同国政府発表の「中国環境状況公報」では全都市中でPM10の二級基準を達成した都市が84.3%であった[27]

GB 3095-1996(現行)[27][30]
一級 二級 三級
TSP 24時間平均 0.12mg3(120μg/m3
年平均 0.08mg3(80μg/m3
24時間平均 0.3mg3(300μg/m3
年平均 0.2mg3(200μg/m3
24時間平均 0.5mg3(500μg/m3
年平均 0.3mg3(300μg/m3
PM10 24時間平均 0.05mg3(50μg/m3
年平均 0.04mg3(40μg/m3
24時間平均 0.15mg3(150μg/m3
年平均 0.1mg3(100μg/m3
24時間平均 0.25mg3(250μg/m3
年平均 0.15mg3(150μg/m3
一級は都市部、二級は半農半牧畜の地域、三級は農業や林業の地域。
GB 3095-2012(2016年1月1日施行予定)[29]
一級 二級
TSP 24時間平均 120μg/m3
年平均 80μg/m3
24時間平均 300μg/m3
年平均 200μg/m3
PM10 24時間平均 50μg/m3
年平均 40μg/m3
24時間平均 150μg/m3
年平均 70μg/m3
PM2.5 24時間平均 35μg/m3
年平均 15μg/m3
24時間平均 50μg/m75
年平均 35μg/m3
PM10とPM2.5は国内全域対象、TSPは地方政府が実情に応じて個別に導入すると規定されている。

脚注

  1. ^ a b 「微小粒子状物質健康影響評価検討会 第7回 資料2 適切な粒径のカットポイントの検証 (PDF) 」環境省、2013年2月6日閲覧
  2. ^ a b c d 大気汚染の原因 【ばいじん、粉じん、浮遊粒子状物質(SPM)とは?】大気環境の情報館(環境再生保全機構)、2013年1月25日閲覧
  3. ^ 粒子状物質(PM)大気環境・ぜん息などの情報館(環境再生保全機構)、2013年1月25日閲覧
  4. ^ a b c d 大気中の微小粒子状物質(PM2.5)の測定方法について (PDF) 」環境省 微小粒子状物質(PM2.5)測定法評価検討会、2008年12月、2013年1月25日閲覧
  5. ^ PM10eicネット(環境情報センター)、2012年5月16日更新版、2013年1月25日閲覧
  6. ^ a b c 新田裕史「微小粒子状物質の健康影響評価について-疫学の視点からの考察- (PDF) 」大気環境学会、平成21年「粒子状物質の動態と健康影響」講演会要旨、2009年、2013年1月29日閲覧
  7. ^ PM2.5eicネット(環境情報センター)、2009年10月14日更新版、2013年1月25日閲覧
  8. ^ a b c d Pollutants: Particulate matter (PM)」国連環境計画(UNEP)、2013年1月29日閲覧
  9. ^ a b c 微小粒子の健康影響 アレルギーと循環機能 (PDF) 」『環境儀』No.22、2006年10月、国立環境研究所、2013年1月29日閲覧
  10. ^ a b c d 岸本充生「浮遊粒子状物質による健康影響の定量評価の現状と課題」第2回環境管理研究部門・化学物質リスク管理研究センター講演会「化学物質リスク評価とリスク削減に向けた環境産業技術の開発」資料、2003年1月24日、2013年1月29日閲覧
  11. ^ 明星敏彦「作業環境測定基準に基づく吸入性粉じんとロウボリウムサンプラ用多段分粒装置の性能評価 (PDF) 」『産業衛生学雑誌』47巻、239-245頁、2005年、2013年1月25日閲覧
  12. ^ a b c 日本産業衛生学会 許容濃度等に関する委員会「粉塵等の許容値の暫定値の提案理由書(2011年度) (PDF) 」『産業衛生学雑誌』53巻、204-209頁、2011年5月18日、2013年1月25日閲覧
  13. ^ 粉の危険性のお話」2013年1月25日閲覧
  14. ^ 降下ばいじんeicネット(環境情報センター)、2009年10月14日更新版、2013年1月25日閲覧
  15. ^ a b 坂本和彦「PM2.5と大気環境」日本自動車工業会『JAMAGAZINE』2012年6月号、2013年1月29日閲覧
  16. ^ 浮遊粒子状物質(SPM)大気環境・ぜん息などの情報館(環境再生保全機構)、2013年1月25日閲覧
  17. ^ 大気汚染の原因(大気汚染物質の種類)大気環境の情報館(環境再生保全機構)、2013年1月25日閲覧
  18. ^ PM2.5環境基準の設定について」日本自動車工業会『JAMAGAZINE』2012年6月号、2013年1月29日閲覧
  19. ^ 市瀬孝道「2009年度秋季大会シンポジウム「東アジアの大気環境」の報告 黄砂と中国大都市粒子状物質の健康影響 (PDF) 」、日本気象学会『天気』58巻6号、pp511-516、2011年。
  20. ^ a b 資料2-1 欧米における粒子状物質に関する動向について (PDF) 」環境省、2013年1月25日閲覧
  21. ^ 欧州における新大気質に関する指令について」日本産業機械工業会 情報報告 ウイーン、2013年1月25日閲覧
  22. ^ Air Quality Standards」欧州委員会、2012年1月12日付、2013年1月25日閲覧
  23. ^ 大気汚染に係る環境基準」環境省、2013年1月25日閲覧
  24. ^ 大気の汚染に係る環境基準について 」環境省、2013年1月29日閲覧
  25. ^ 微小粒子状物質による大気の汚染に係る環境基準について 」環境省、2013年1月29日閲覧
  26. ^ 大気汚染の状況(浮遊粒子状物質(SPM)の概要、年平均値の推移)大気環境の情報館(環境再生保全機構)、2013年1月29日閲覧
  27. ^ a b c d 金振「中国の大気汚染防止の法制度および関連政策(Ⅰ)SciencePortal China(科学技術振興機構)、2012年12月21日付、2013年1月29日閲覧
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  29. ^ a b GB 3095-2012 环境空气质量标准 (PDF) 」中華人民共和国環境保護部・国家質量監督検験検疫総局、2013年1月29日閲覧
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関連項目