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'''void'''(ボイド)は、[[プログラミング言語]]において、「何もない」といった意味の型などの[[識別子]]や[[予約語]]などに使われる名前である。
'''void'''(ボイド)は、[[プログラミング言語]]において、「何もない」といった意味の型などの[[識別子]]や[[予約語]]などに使われる名前である。


[[ALGOL]]や、[[C言語]]とそこから派生した言語には、'''void型'''と呼ばれる[[データ型|型]]があり、呼び出し側に返り値を戻さない[[サブルーチン|関数]]を書く場合に用いられる。そのような関数は、何かしらの処理、あるいは引数を出力するといった、[[副作用 (プログラム)|副作用]]のために呼び出されるのが通例である。値を返さない手続きは関数ではなく[[プロシージャ]]である、という言語([[Visual Basic]]や[[Pascal]])もある。似たものとしてnil([[Null]])や{{日本語版にない記事リンク|Unit型|en|Unit type}}があるが、void型は、そのような値は存在しないという点が、それらと違う。
[[ALGOL]]68や、[[C言語]]とそこから派生した言語には、'''void型'''と呼ばれる[[データ型|型]]があり、呼び出し側に返り値を戻さない[[サブルーチン|関数]]を書く場合に用いられる。そのような関数は、何かしらの処理、あるいは引数を出力するといった、[[副作用 (プログラム)|副作用]]のために呼び出されるのが通例である。値を返さない手続きは関数ではなく[[プロシージャ]]である、という言語([[Visual Basic]]や[[Pascal]])もある。似たものとしてnil([[Null]])や{{日本語版にない記事リンク|Unit型|en|Unit type}}があるが、void型は、そのような値は存在しないという点が、それらと違う。


C言語や[[C++]]では'''void型へのポインタ'''(<code>void *</code>として宣言される)があるが、これは上で述べたvoid型と直接関連するものではなく、「void型へのポインタ」は、「不特定の」型を指す[[ポインタ (プログラミング)|ポインタ]]となっている。つまり、この文脈ではvoidが汎用型として扱われている。プログラムでどんな型のデータもvoid型のポインタから指すことができ、逆に元のデータを参照することもできるため、[[ポリモーフィズム|ポリモーフィック]]な関数を書く際に有用である(ただし、関数はデータとして扱えないため、関数ポインタについては違ってくる部分がある<ref>http://www.safercode.com/blog/2008/11/25/generic-function-pointers-in-c-and-void.html</ref>)。
C言語や[[C++]]では'''void型へのポインタ'''(<code>void *</code>として宣言される)があるが、これは上で述べたvoid型と直接関連するものではなく、「void型へのポインタ」は、「不特定の」型を指す[[ポインタ (プログラミング)|ポインタ]]となっている。つまり、この文脈ではvoidが汎用型として扱われている。プログラムでどんな型のデータもvoid型のポインタから指すことができ、逆に元のデータを参照することもできるため、[[ポリモーフィズム|ポリモーフィック]]な関数を書く際に有用である(ただし、関数はデータとして扱えないため、関数ポインタについては違ってくる部分がある<ref>http://www.safercode.com/blog/2008/11/25/generic-function-pointers-in-c-and-void.html</ref>)。

2013年1月11日 (金) 03:40時点における版

void(ボイド)は、プログラミング言語において、「何もない」といった意味の型などの識別子予約語などに使われる名前である。

ALGOL68や、C言語とそこから派生した言語には、void型と呼ばれるがあり、呼び出し側に返り値を戻さない関数を書く場合に用いられる。そのような関数は、何かしらの処理、あるいは引数を出力するといった、副作用のために呼び出されるのが通例である。値を返さない手続きは関数ではなくプロシージャである、という言語(Visual BasicPascal)もある。似たものとしてnil(Null)やUnit型英語: Unit typeがあるが、void型は、そのような値は存在しないという点が、それらと違う。

C言語やC++ではvoid型へのポインタvoid *として宣言される)があるが、これは上で述べたvoid型と直接関連するものではなく、「void型へのポインタ」は、「不特定の」型を指すポインタとなっている。つまり、この文脈ではvoidが汎用型として扱われている。プログラムでどんな型のデータもvoid型のポインタから指すことができ、逆に元のデータを参照することもできるため、ポリモーフィックな関数を書く際に有用である(ただし、関数はデータとして扱えないため、関数ポインタについては違ってくる部分がある[1])。

また、JavaScriptなど、言語によっては、void演算子が存在する。void演算子は、オペランドの式を評価してその値を得る計算をおこなうが、その値は捨てられ、値を返さない。

C言語、C++

返り値がvoid型の関数では、引数なしでreturn文を実行するか、abort、exitなどの関数を呼び出すことで終了する。C の最新規格 C11 では、これらの操作なく関数が処理の終わりまで達してしまった場合の動作は未定義である。また、関数プロトタイプにvoidを単独で書いて、「引数がない」ことを明示する用途にも使われる。void(空虚)という名前に反して、void型は空集合を意図したunit型のような使われ方をしている。ただし、void型の値を実際に作り出す方法は言語上に存在しない。

初期のC言語では、返り値が明示されていない関数がint型として扱われ、また引数のない関数ではただ空のカッコを書いていた。そして、指す先の型が決まらないポインタは整数、あるいはcharへのポインタを代用していた。この仕様だったコンパイラでは、関数の返り値を使わないことで警告が出ていたので、それをvoid型にキャストすることで警告を出さないようなコードが書かれることもあった。ビャーネ・ストロヴストルップが1979年~80年頃にC++の開発を始めた時点では、void型やそのポインタはAT&T系のコンパイラがサポートしていた方言であった[2]

関数プロトタイプでvoidを明示することと、何も書かないのとでは、以下のようにC言語とC++で意味合いに違いが出てくる[3]

C++ C言語
void f(); //推奨されている書き方 void f(void);
void f(void); void f(void);
void f(...); //可変長引数 void f(); /* 可変長引数 */

ただしC言語でも、C99では上記のvoid f()のような、何も書かないことで可変長の引数を意味する記法が非推奨となっている[4]

void演算子

ECMAScriptでは、voidはキーワードであり(予約語を参照)、単項式の前に付けて単項式を形成する前置演算子のひとつである[5]。構文規則上は void 単項式 という形のため void(式) という形で用いられることが多い。式を評価し、その値を取得するがその値を特にどうともせず、常にundefinedを返す。もっぱらHTML内で、<a href="javascript:void(0)">ほげほげ</a>のように記述して、リンクとしての機能を働かせないために用いられる。

脚注

  1. ^ http://www.safercode.com/blog/2008/11/25/generic-function-pointers-in-c-and-void.html
  2. ^ http://cm.bell-labs.com/cm/cs/who/dmr/chist.html, "Standardisation."
  3. ^ Stroustrup, Bjarne (2009). Programming: Principles and Practice Using C++. Boston: Addison-Wesley. p. 996. ISBN 0321543726 
  4. ^ Bjarne Stroustrup, C and C++: Case Studies in Compatibility. Reconcilable differences? You decide, Dr. Dobb's, September 01, 2002; print version
  5. ^ ECMA-262 5.1 Edition §11.4.2