「ザトウムシ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Ks (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
編集の要約なし
11行目: 11行目:
|下位分類名=亜目
|下位分類名=亜目
|下位分類=
|下位分類=
*ダニザトウムシ亜目
*ダニザトウムシ亜目 Cyphophthalmi
*アシブトザトウムシ亜目 Oncopodomorphi
:Cyphophthalmi
*アシブトザトウムシ亜目
*アザトウムシ亜目 Gonyleptomorphi
*イキザトウムシ亜目 Dyspnoi
:Oncopodomorphi
*カザトウムシ亜目
*カイキザトウムシ亜目 Eupnoi
:Gonyleptomorphi
*ヘイキザトウムシ亜目
:Dyspnoi
*イキザトウムシ亜目
:Eupnoi
}} <!-- このテンプレートは、PJ:BIOでの議論に基づき、Bot(User:Point136)により移行されました。 -->
}} <!-- このテンプレートは、PJ:BIOでの議論に基づき、Bot(User:Point136)により移行されました。 -->


'''ザトウムシ'''(座頭虫)は、[[節足動物門]][[鋏角亜門]][[クモ綱]]'''ザトウムシ目'''に属する[[動物]]の総称である。非常に足の長いものがあり、豆に針金の足をつけたような独特の姿をしている。長い足で前を探りながら歩く様子から、座頭虫の名がある。
'''ザトウムシ'''座頭虫は、[[節足動物門]][[鋏角亜門]][[クモ綱]]'''ザトウムシ目'''に属する[[動物]]の総称である。非常に足の長いものがあり、豆に針金の足をつけたような独特の姿をしている。長い足で前を探りながら歩く様子から、座頭虫の名がある。


一瞥するとクモを連想させる外見ではあるが、長い歩脚を除く本体の構造はクモとは明らかに異なり系統的にもむしろサソリに近い。(ダニに近縁であるという報告も存在する。)
一瞥するとクモを連想させる外見ではあるが、長い歩脚を除く本体の構造はクモとは明らかに異なり系統的にもむしろサソリに近い。(ダニに近縁であるという報告も存在する。)
31行目: 26行目:


== 特徴 ==
== 特徴 ==

[[Image:Leiobunum sp moegi koubi.jpg|left|220px|thumb|ユミヒゲザトウムシの1種の[[交尾]]<br>黄色いのが雄]]
[[Image:Leiobunum sp moegi koubi.jpg|left|220px|thumb|ユミヒゲザトウムシの1種の[[交尾]]<br>黄色いのが雄]]
ザトウムシ目の体は、楕円形にまとまっていてノミに似た体形である。ごく小型のものもあるが、たいていは1~2cm程度の、中型のクモ類である。頭胸部と腹部は密着して、全体として楕円形にまとまるが、頭胸部と腹部の間、及び腹部の体節ははっきりと認められる。外骨格は丈夫な方で、クモ類のように柔らかくない。背面などに棘を備えるものもある。
ザトウムシ目の体は、楕円形にまとまっていてノミに似た体形である。ごく小型のものもあるが、たいていは1~2cm程度の、中型のクモ類である。頭胸部と腹部は密着して、全体として楕円形にまとまるが、頭胸部と腹部の間、及び腹部の体節ははっきりと認められる。外骨格は丈夫な方で、クモ類のように柔らかくない。背面などに棘を備えるものもある。
42行目: 36行目:


体色は地味なものが多いが、地上性や樹上性のやや大型の種には、金属光沢をもつものや、鮮やかな朱色など、目立つ色彩のものも多い。雌雄で体の武装や色彩にはっきりと差があるものもある。なお、ザトウムシは、クモ綱のなかでは例外的に、真の[[交尾]]を行う。雌雄は向き合って、腹面を触れ合う形で交尾をする。
体色は地味なものが多いが、地上性や樹上性のやや大型の種には、金属光沢をもつものや、鮮やかな朱色など、目立つ色彩のものも多い。雌雄で体の武装や色彩にはっきりと差があるものもある。なお、ザトウムシは、クモ綱のなかでは例外的に、真の[[交尾]]を行う。雌雄は向き合って、腹面を触れ合う形で交尾をする。

=== 外部形態 ===
=== 外部形態 ===
[[Image:Arachnida Opiliones Nelima genufusca03.jpg|thumb|250px|本体の近接撮影]]
[[Image:Arachnida Opiliones Nelima genufusca03.jpg|thumb|250px|本体の近接撮影]]
92行目: 87行目:
== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[あしながおじさん]]
*[[あしながおじさん]]
*[[千と千尋の神隠し]] 劇中に登場する「釜爺(かまじい)」のモデルとなった。
*[[千と千尋の神隠し]] - 劇中に登場する「釜爺(かまじい)」のモデルとなった。
*[[新世紀エヴァンゲリオン]]の"使徒"「マトリエル」のモデルとなった。
*[[新世紀エヴァンゲリオン]] - “使徒「マトリエル」のモデルとなった。


[[Category:クモ形類|さとうむし]]
{{デフォルトソート:さとうむし}}
[[Category:クモ形類]]


[[az:Otbiçənlər]]
[[az:Otbiçənlər]]

2012年12月28日 (金) 04:14時点における版

ザトウムシ
ユミヒゲザトウムシの1種(Leiobunum sp.)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: ザトウムシ目 Opiliones
亜目
  • ダニザトウムシ亜目 Cyphophthalmi
  • アシブトザトウムシ亜目 Oncopodomorphi
  • アカザトウムシ亜目 Gonyleptomorphi
  • ヘイキザトウムシ亜目 Dyspnoi
  • カイキザトウムシ亜目 Eupnoi

ザトウムシ(座頭虫)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目に属する動物の総称である。非常に足の長いものがあり、豆に針金の足をつけたような独特の姿をしている。長い足で前を探りながら歩く様子から、座頭虫の名がある。

一瞥するとクモを連想させる外見ではあるが、長い歩脚を除く本体の構造はクモとは明らかに異なり系統的にもむしろサソリに近い。(ダニに近縁であるという報告も存在する。) 最古の化石記録は4億1千万年前(デボン期に相当)のものが知られている。

英語圏、特に米国では“あしながおじさん(Daddy Longlegs)”の愛称がある。

特徴

ユミヒゲザトウムシの1種の交尾
黄色いのが雄

ザトウムシ目の体は、楕円形にまとまっていてノミに似た体形である。ごく小型のものもあるが、たいていは1~2cm程度の、中型のクモ類である。頭胸部と腹部は密着して、全体として楕円形にまとまるが、頭胸部と腹部の間、及び腹部の体節ははっきりと認められる。外骨格は丈夫な方で、クモ類のように柔らかくない。背面などに棘を備えるものもある。

頭胸部の真ん中には、上に突き出した突起があり、その側面には左右1つずつの目がある(この意味では名前の語源になっている座頭、及びメクラグモという俗称は正しくない)。

口のそばには短い鋏状の鋏角があり、普通は小さくて目立たないが、サスマタアゴザトウムシでは、鋏脚が強大に発達し、捕獲器となる。触肢は多くのものでは短い歩脚状だが、アカザトウムシなど、捕食性のものでは、鎌のような捕獲装置になっている。歩脚は4対、ただし第2対は他のものより長く、触角のように使う。

ザトウムシ類は足の長さでほぼ3つの型に分けられる。足の短いものは、ダニザトウムシなど、ごく小型で、一見ダニのような姿である。中位の足の長さのものは、丸い体のクモのような感じの虫で、アカザトウムシやオオヒラタザトウムシなどがある。足の長いものは、非常に細い脚で、長いものでは10cmを越えるものがある。日本産のナミザトウムシでは、雄の第二対が180mmに達する例があり、これはこの類で最も長いものである。長い足を伸ばし、豆粒のような体を中空に支え、その体を揺らしながら歩く様は、まるで宇宙生物でも見るような気持ちになる。

体色は地味なものが多いが、地上性や樹上性のやや大型の種には、金属光沢をもつものや、鮮やかな朱色など、目立つ色彩のものも多い。雌雄で体の武装や色彩にはっきりと差があるものもある。なお、ザトウムシは、クモ綱のなかでは例外的に、真の交尾を行う。雌雄は向き合って、腹面を触れ合う形で交尾をする。

外部形態

本体の近接撮影

体は頭胸部と腹部からなるが、両者は互いに幅広く接続して、クモ類のような腹柄はない。

頭胸部の背面はキチン質の丈夫な背板に覆われる。カイキザトウムシ類では、頭胸部と腹部の背板は分かれているが、他の類では、腹部前方の体節の背板が、頭胸部に融合している。ダニザトウムシ類では、頭胸部の背板は腹部前方の背板と融合して、大きな盾甲を形成する。腹面には中央に腹板があるが、触肢や歩脚の基部に圧迫されて、ごく小さい。したがって、腹面はほとんど付属肢の基部に覆われる。

ほとんどのものでは、頭胸部の中央近くに、一対の単眼がある。ダニザトウムシ類ではこれを欠くが、それ以外の類では、退化消失した例はほとんど知られていない。眼は、背甲中央の小さな盛り上がり(眼丘)の両側面にあるのが普通で、一部の種では眼丘が幅広く、あるいはほとんど認められずに背甲の上に眼が並んだ状態で存在する。また、背板には臭腺が開く。その位置は群によって異なるが、防御および情報伝達に用いられるらしい。

腹部背面にはキチン板が並ぶが、前述のように、いくつかの群ではその前方のものが背甲と融合する。腹面にもキチン板が並び、腹板という。腹面では、その前端が胸部に食い込む形になるものが多い。

付属肢は六対あり、すべて頭胸部についている。

体の前端には一対の鋏角がある。口はその間の腹面側に開く。鋏角は3節からなり、先の2節が鋏を構成する。これは餌をつかみ、引き裂くのに用いられ、また、他の歩脚を清掃するのにも使う。その形には、往々に性的二形が見られる。なお、鋏角に発音器と思われる構造が知られているものがある。

触肢は、口の横に位置し、6節からなる。基部の節は顎葉を形成する。この節が決して融合しないのは、この類の特徴の一つとされる。触肢は、ほぼ歩脚型のものが多い。その場合、形態的には歩脚に近いが、はるかに短くて細く、歩脚とははっきりと区別できることが多い。これらは獲物をつかみ、鋏角に渡すのに役立つ。アカザトウムシ類では、触肢はカマキリの鎌のように、捕獲器として独特の発達を遂げている。先端の節は鋭い爪となり、他の節にも棘などを備える。触肢にも、しばしば明らかな性的二形が見られる。

それ以降の四対は歩脚である。いずれも比較的単純な形をしている。長さについては様々で、ダニザトウムシ類などでは長いものでも体長の2倍を超えない。それ以外のものでは体長の数倍以上、ナミザトウムシでは最も長い足が体長の30倍にも達する。ダニザトウムシ類では第一脚が最も長いが、それ以外の類では第二脚が特に長く、これを触角のように前に伸ばし、探るように使う。歩行にはそれ以外の三対を用いる。アカザトウムシ類では第四脚が最も強く発達するが、長さは第二脚が勝る。

内部形態

生活

多くのものが森林に住み、小型のものは土壌動物として生活する。足の長いものは、低木や草の上、岩陰などで生活する。乾燥地帯に生息するものもあり、日本では海岸の岩陰に住むものがある。

足の長い型のものは、樹上や地上を活発に歩き回ることができる。体を大きく揺らせながら歩く姿は、SF的ですらある。この型のものは、時に体を大きく揺するように動くことがあり、おそらく大型動物の目をくらませる効果があると考えられる。足をつかむと自切することがある。足の長さが中程度のものには、たとえばオオヒラタザトウムシなど、地面や岩の上にはいつくばって、つついても動かないようなものもある。

主として肉食で、虫などを食べるが、死んだ虫を食べるものもある。雑食性で、キノコなどを食べるものもある。

分類

オオナミザトウムシの一種

世界で約4000種ほどが知られる。

ザトウムシ目 Phalangida Opiliones

  • ダニザトウムシ亜目 Cyphophthalmi:小型でダニ状、、頭胸部と腹部は見かけ上融合。1科60種。
  • アシブトザトウムシ亜目 Oncopodomorphi:頭胸部と腹部が見かけ上融合、足は長く太い。1科20種。
  • アカザトウムシ亜目 Gonyleptomorphi:触肢は捕獲用に武装される。約2300種。
    • アカザトウムシ科 Phalangodidae:ニホンアカザトウムシなど
    • タテヅメザトウムシ科 Travuniidae
  • ヘイキザトウムシ亜目 Dyspnoi:触肢は歩脚状。約1200種。
    • エボシザトウムシ科 Trogulidae:カブトザトウムシ
    • アゴザトウムシ科 Ischyropsalidae:サスマタアゴザトウムシ
  • カイキザトウムシ亜目 Eupnoi
    • マザトウムシ科 Phalangiidae:マメザトウムシ・ゴホントゲザトウムシ
    • スベザトウムシ科 Leiobunidae:モエギザトウムシ・ユミヒゲザトウムシ・ナミザトウムシ・オオヒラタザトウムシ・ヒトハリザトウムシ・アカサビザトウムシ

参考文献

  • 内田亨監修 『動物系統分類学』第7巻(中A)「真正蜘蛛類」、(1966)、中山書店。

関連項目