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[[バージェス動物群]]に見られる[[アノマロカリス]]や[[オパビニア]]などの大型捕食動物の出現とともに、[[カンブリア爆発]]の際には堅い[[外骨格]]をまとった動物が多く見られるようになった。エディアカラ生物群は、新たに出現した[[捕食]]動物に食い尽くされて絶滅したとも言われている<ref>{{Cite web|url=http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/multicell_animals/appearance.html|title=多細胞動物の出現|work=理科総合B 生命と地球環境|publisher=[[岐阜大学]]教育学部 理科教育講座地学教室|accessdate=2012-04-07|archiveurl=http://web.archive.org/web/20090516062109/http://chigaku.ed.gifu-u.ac.jp/chigakuhp/rika-b/htmls/multicell_animals/appearance.html|archivedate=2009-05-16}}</ref>。 |
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*大森昌衛、『進化の大爆発―動物のルーツを探る』、新日本出版社、2000 |
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2012年12月19日 (水) 12:44時点における版
エディアカラ生物群(エディアカラせいぶつぐん)またはエディアカラ動物群(エディアカラどうぶつぐん)、エディアカラ化石群(エディアカラかせきぐん)は、オーストラリア、アデレードの北方にあるエディアカラの丘陵で大量に発見される生物の化石群を指す。1946年にオーストラリアの地質学者レッグ・スプリッグにより発見された。肉眼的に確認できる生物化石が多量に出るものとしてはもっとも古い時代のものであり、先カンブリア時代[1]の生物相を示すものとして数少ないものである。
概説
エディアカラ生物群は、約6億 - 5億5千万年前の先カンブリア時代の生物の化石と推定されている。同様の化石はカナダのニューファンドランド島やロシアの白海沿岸などでも発見されている。多くの動物とされる生物化石が出るが、いずれも殻や骨格がなく、柔組織だけで出来ている。
本来、硬い骨格をもたない生物は、化石として保存されることが稀であるが、エディアカラ生物群ではこのような生物が数多く見られる。これは泥流などによって、海底に生息していた生物が一瞬にして土砂中に封じ込められたためと考えられている。また、柔らかなマット状になった微生物の集合体の上を大きな生物が移動した痕跡らしきものも確認されている。
この生物群には、クラゲ状の「ネミアナ」、楕円形をしたパンケーキ状の「ディッキンソニア」をはじめ、直径数十cmにもおよぶ多種多様な軟体性の生物が見られ、地球最古の多細胞生物ではないかと考えられている。多様なものが見られるが、一つの特徴はそれらがかなり大きいことで、カンブリア紀の化石群であるバージェス動物群や澄江動物群の構成種の多くが数cm程度であるのに比べて、全体に大きい。また、そのいずれもがごく薄い体をしていたらしい。
歴史
上記のように、この生物群の発見はスプリッグによるが、それまで全く知られなかったわけではない。この地域にはアデレード累層群といわれる先カンブリア時代からカンブリア紀にわたる地層があり、アデレード大学を中心とする研究が行われていた。1922年には同大学のエッジウォース・デービッドがこれに類する化石を発見した。彼は同大学のティラードと共同で調査を行い、さらに多くの化石を発見した。しかし彼らはそれらをカンブリア紀のものと判断していた。これらの発見は、当時同大学の学生であったスプリッグ(Reginald C. Sprigg)は興味をよび、1946年、彼は友人とともにアデレートの北約300キロメートル付近、エディアカラ丘陵(Ediacara Hill)へ化石採集に出かけ、いくつかの化石(軟体動物とみられる生物の印象)を発見した[2]。このとき、彼は自分の発見した化石の地層が、古杯類(古生代の示準化石)の出る地層の下であると判断し、それらの化石が先カンブリア時代後期のものであり、「最古の化石」との信念を持った。
ただし当初は周囲や指導側の理解がなく、彼の判断は認められなかったが、彼の信念は変わらず、卒業後も地質調査の仕事の傍らでこの化石群の研究を続け、1947年に最初の論文を公表、これを機にこの化石産出地は保護区に指定された。1959年にはこれを先カンブリア時代のものとする論文が国際誌で認められ、広く注目を得ることとなった。[3]
後に同時期の類似の化石は世界のあちこちで発見されるようになり、現在では20カ所以上が知られている[4]。中にはアフリカのナミビアのように、それ以前に発見されていたことが判明した例もある。[5]
分類上の位置づけについて
これらの生物が、現在の生物の分類に対してどのような位置付けにあるのかは良く分かっていない。発見者であるスプリッグを含むオーストラリアの研究者は、それらを現在見られる動物群の最も古い祖先と見なして分類した。他方で進化の形成過程の中で途絶えてしまった側枝であり、それ以降の生物とは全く関係が無いかもしれないという見方もある。その極端な例では、アドルフ・ザイラッハー は、動物界や植物界などとは独立した「ヴェンド生物界」という分類階級をエディアカラ生物群に与えることを提唱した。後にザイラッハー自身が「ヴェンド生物界」は取り下げた。
2000年代後半にはエディアカラ生物群に属するいくつかの生物は、従来カンブリア紀に入ってから突然出現したと考えられていた動物群の直接の祖先であるとされるようになってきている。
エディアカラ生物群は、地球全体が氷に覆われていた時期(スノーボールアース)の直後に出現し、その大部分がカンブリア紀の始まる前に絶滅した。
バージェス動物群に見られるアノマロカリスやオパビニアなどの大型捕食動物の出現とともに、カンブリア爆発の際には堅い外骨格をまとった動物が多く見られるようになった。エディアカラ生物群は、新たに出現した捕食動物に食い尽くされて絶滅したとも言われている[6]。
脚注
- ^ 原生代の末期にあたり、ヴェンド紀またはエディアカラ紀とも呼ばれる。
- ^ それらのほとんどは円盤形のもので、彼はクラゲ型生物と呼び、他のものはミミズ型虫や節足動物に似ており、分類不能のものもあった。(鎮西清高訳『世界の化石遺産 -化石生態系の進化-』 朝倉書店 2009年 11ページ)
- ^ ここまでこの項は大森(2000)、p.110 - 114
- ^ ロシアの白海沿岸、ニューファウンドランド、カナダ北西部、ノースカロライナ、ウクライナ、中国など、どこでもおよそ6億7000万年前から最前期カンブリア紀(5億4000万年前)までに現れる。
- ^ 白山編、(2000)、p.53
- ^ “多細胞動物の出現”. 理科総合B 生命と地球環境. 岐阜大学教育学部 理科教育講座地学教室. 2009年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月7日閲覧。
参考文献
- スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ - バージェス頁岩と生物進化の物語』渡辺政隆訳、早川書房、1993年、ISBN 4-15-203556-0。
- サイモン・コンウェイ・モリス『カンブリア紀の怪物たち - 進化はなぜ大爆発したか』講談社〈講談社現代新書〉、1997年、ISBN 4-06-149343-4。
- 丸山茂徳、磯崎行雄『生命と地球の歴史』岩波書店〈岩波新書〉1998年、ISBN 4-00-430543-8。
- リチャード・フォーティ『生命40億年全史』渡辺政隆訳、草思社、2003年、ISBN 4-7942-1189-9。
- 白山義久編『無脊椎動物の多様性と系統 - 節足動物を除く』岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ〉、2000年、ISBN 4-7853-5828-9。
- 宇佐美義之『カンブリア爆発の謎』技術評論社、2008年、ISBN 978-4-7741-3417-8。
- 大森昌衛、『進化の大爆発―動物のルーツを探る』、新日本出版社、2000