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元来は農耕や戦争、統治のための学問として成立した。現在は大きく[[系統地理学]]、[[地誌学]]、[[地図学]]、[[地理学説史]]の4つに分類され、系統地理学はさらに[[自然地理学]]・[[人文地理学]]に分けられ、それぞれがまた細かく分類される。ただし、自然地理学の諸分野は[[地球科学]]の影響を受け、その中でも時に[[生態学]]や[[気象学]]、[[地質学]]などと連携されることが多い。人文地理学は[[歴史学]]・[[社会学]]などの近隣分野の影響を受けているケースが多く、[[経済地理学]]は[[経済学]]の影響を受けている。いずれにせよ、地理学という範囲にこだわらず、広く近隣学問分野の知識が要求されるケースが多い学際的な学問である。また、自然・人文ともにフィールドワークを実施し、実地調査に基づく研究成果を重視する傾向があるのが特徴である。 |
元来は農耕や戦争、統治のための学問として成立した。現在は大きく[[系統地理学]]、[[地誌学]]、[[地図学]]、[[地理学説史]]の4つに分類され、系統地理学はさらに[[自然地理学]]・[[人文地理学]]に分けられ、それぞれがまた細かく分類される。ただし、自然地理学の諸分野は[[地球科学]]の影響を受け、その中でも時に[[生態学]]や[[気象学]]、[[地質学]]などと連携されることが多い。人文地理学は[[歴史学]]・[[社会学]]などの近隣分野の影響を受けているケースが多く、[[経済地理学]]は[[経済学]]の影響を受けている。いずれにせよ、地理学という範囲にこだわらず、広く近隣学問分野の知識が要求されるケースが多い学際的な学問である。また、自然・人文ともにフィールドワークを実施し、実地調査に基づく研究成果を重視する傾向があるのが特徴である。 |
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==地理学の諸分野== |
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本節では地理学のうち[[系統地理学]](自然地理学・人文地理学)及び[[地誌学]]の諸分野について述べる。 |
本節では地理学のうち[[系統地理学]](自然地理学・人文地理学)及び[[地誌学]]の諸分野について述べる。 |
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[[自然地理学]] に該当するもの。詳細は、各項目を参照されたい。ほとんどの場合、これらの学問成果をあげるには、現地調査([[フィールドワーク]])が要求される。いずれの場合も、学問上で厳格な線引きは存在せず、例えば気候地形学のような自然地理学の中でも分野のまたがった研究も往々にされている。 |
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;[[気候学]]:主に気候と人々との関係を考察する。都市気候、[[ヒートアイランド現象]]、[[エルニーニョ現象]]などもこの分野で扱う。 |
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;[[水文学]]:湖沼や河川、地下水を主な研究対象とする。現在では、'''陸水学'''という表現が主流になりつつある。 |
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;[[地形学]]:あらゆる地形の成因、変遷などを考察。対象は火山、平野、地層など。 |
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;[[第四紀学]]:主に[[第四紀]]の間に起きた地層、地形の変遷、氷期/間氷期([[氷河期]])の問題などを取り扱う。現在見られる地形の直接的な要因を探究する。地形学と連携を密にする。 |
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;[[海洋地理学]]:海に関係する地理学。自然では海岸線、海流、海底地形など。また人文では、海洋資源や境界線なども扱い、しばしば政治問題にも触れる。 |
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;[[植生地理学]]:植生分布に関する地理学。フィールドワークによる場合と、花粉分析法を用い、泥層などから採取した花粉の年代測定をし、解明していく方法がある。 |
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;[[動物地理学]]:動物の生態・分布に関する地理学。[[生態学]]と密にしている場合が多い。植生地理学などと共にしばしば[[生物地理学]]と総称されることも。 |
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;[[土壌地理学]]:土壌に関する地理学。[[第四紀学]]などと連携を密にすることが多い。 |
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[[人文地理学]]に該当するもの。詳細は、各項目を参照されたい。これらもほとんどの場合、学問成果をあげるには、現地調査([[フィールドワーク]])が要求される。いずれの場合も、学問上で完全に独立しているわけではなく、例えば都市地理学と経済地理学の複合分野を研究対象にするということも可能であるばかりか、むしろそのようなケースのほうが多いのである。 |
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;[[経済地理学]]:経済にかんする地理学。各種産業に注目した[[産業地理学]](農業を扱う農業地理学、工業を扱う工業地理学、商業を扱う商業地理学などがある。)消費者行動に注目した[[消費地理学]]、産業等の立地展開に注目した[[経済立地論]]などが主要なテーマ。これらは、人文地理学の中でも議論されることが多い分野である。そのほかの分野として、近年、英国の地理学者を中心に小売業の立地的側面、金融的側面、消費者行動的側面など小売業を多面的に扱った新しい[[小売地理学]]が現れているが、日本ではこの分野の研究者は少なく、発展途上の段階にある。 |
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;[[社会地理学]]:[[社会階層]]や[[社会構造]]など[[社会学]]に関するテーマに対する地理学。具体的には、民族問題や過疎・過密、女性問題やコミュニティの問題などを扱う。 |
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;[[政治地理学]]:政治に関する地理学。過去には、軍事侵略や植民地に関するテーマを扱っていた。現在は、学区域の問題や国政や地方行政や国際関係と地理との関係を主流にする。最近では、地理学で政治を扱うと、学問の性質上、地方自治にスポットがあてられることが多いので、この分野を敢えて[[行政地理学]]という表現をすることもある。 |
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;[[都市地理学]]:都市特有の現象を扱う地理学。交通網・移動、犯罪・非行や、都心・郊外に関するテーマなどを扱う。経済地理学・社会地理学と連携を密にすることが多い。また、都市計画学、都市工学、都市社会学などの分野ともしばしば連携される。 |
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;[[歴史地理学]]:地理学では、通常時間軸は現在であるが、歴史地理学は過去である。歴史的な現象・事柄の文献学的な意義のみならず、地理学的な意義を求める分野である。歴史学の一分野としても扱われるが、通常は地理学の分野である。民俗学と連携をとることも。 |
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;[[文化地理学]]:文化や風俗を扱った地理学。宗教施設や、祭りなどを考察対象とする。民俗学・文化人類学・社会学などとの連携をとることもある。 |
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;[[人口地理学]]:人口問題・人口移動・人口政策などを扱った地理学。単独ではなく、社会地理学や経済地理学の一分野にされることもある。 |
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;[[病理地理学]]:伝染病・風土病などの疾病の地理的な分布・伝播を扱った地理学。医学の専門的な知識を求められるため、地理学の一部門でありながら、人文地理学で論じられることは稀である |
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===地誌学=== |
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==地域研究== |
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国については[[国の一覧]]も参照のこと。 |
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==日本の地理教育の問題点== |
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しかし、これらの事は、地理学に対するニーズが低下しているということではない。地誌のような知識の部分と、大学で学ぶ専門的な理論の部分をしっかりと修得すれば、実社会においても十分に評価される学問分野といえる。大学サイドも、環境問題やコンピューターを使った講義を取り入れるなど、近年になって実社会との兼ね合いを重視するカリキュラムが組むようになってきており、かつての地理学のカリキュラムとは、様相を異にしてきた事も事実である。 |
しかし、これらの事は、地理学に対するニーズが低下しているということではない。地誌のような知識の部分と、大学で学ぶ専門的な理論の部分をしっかりと修得すれば、実社会においても十分に評価される学問分野といえる。大学サイドも、環境問題やコンピューターを使った講義を取り入れるなど、近年になって実社会との兼ね合いを重視するカリキュラムが組むようになってきており、かつての地理学のカリキュラムとは、様相を異にしてきた事も事実である。 |
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==用語== |
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*[[地形]] |
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*[[陸地]] - [[平野]] - [[台地]] - [[山]] - [[火山]] - [[山地]] - [[山脈]] - [[丘陵]] - [[盆地]] - [[高原]] |
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*[[海]] - [[湾]] - [[海峡]] |
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*[[湖]] |
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*[[河川]] |
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*[[大陸]] - [[亜大陸]] |
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*[[半島]] - [[岬]] |
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*[[島]] - [[諸島]] - [[列島]] - [[群島]] |
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*[[海嶺]] |
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*[[海溝]] |
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*[[海盆]] |
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*[[海台]] |
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*[[海山]] |
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*[[気候]] - [[ケッペンの気候区分]](ただし、植生の区分による気候区分なので、現在気候学上のテーマとしてあがることは少ない) |
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*[[グローバル・ポジショニング・システム]](GPS) |
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*[[地理情報システム]] (GIS) |
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*[[区間 (地理)|区間]] |
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==関連項目== |
==関連項目== |
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*[[地政学]] |
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*[[地図]] - [[地図の一覧]] |
*[[地図]] - [[地図の一覧]] |
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*[[国の一覧]] |
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*[[国土地理院]] |
*[[国土地理院]] |
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*[[伝説上の大陸]] |
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*[[日本の地理]] |
*[[日本の地理]] |
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*[[地球科学]] |
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*[[ESRI]] |
*[[ESRI]] |
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*[[ディルレ事件]] |
*[[ディルレ事件]] |
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==参考資料== |
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*[[Wikipedia:パブリックドメインの資源#地球科学|パブリックドメイン資料(地球科学)]] |
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*[[Wikipedia:パブリックドメインの資源#地理|パブリックドメイン資料(地理)]] |
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==関連プロジェクト== |
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*[[Wikipedia:ウィキプロジェクト 日本の市町村|日本の市町村]] |
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*[[Wikipedia:ウィキプロジェクト 地図|地図プロジェクト]] - [[Wikipedia:ウィキプロジェクト 地図/世界地図|各国地図の日本語化]] |
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<!-- 現在、地理学的考察が未成熟につき加えるべきか? |
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*[[Wikipedia:ウィキプロジェクト 道路|道路]] |
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*[[Wikipedia:ウィキプロジェクト 鉄道|鉄道]] --> |
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2006年2月8日 (水) 09:29時点における版
地理学(ちりがく)は地理を対象とする学問の分野。医学・哲学とともに人類最古の学問の分野といわれている。
元来は農耕や戦争、統治のための学問として成立した。現在は大きく系統地理学、地誌学、地図学、地理学説史の4つに分類され、系統地理学はさらに自然地理学・人文地理学に分けられ、それぞれがまた細かく分類される。ただし、自然地理学の諸分野は地球科学の影響を受け、その中でも時に生態学や気象学、地質学などと連携されることが多い。人文地理学は歴史学・社会学などの近隣分野の影響を受けているケースが多く、経済地理学は経済学の影響を受けている。いずれにせよ、地理学という範囲にこだわらず、広く近隣学問分野の知識が要求されるケースが多い学際的な学問である。また、自然・人文ともにフィールドワークを実施し、実地調査に基づく研究成果を重視する傾向があるのが特徴である。
地理学の諸分野
本節では地理学のうち系統地理学(自然地理学・人文地理学)及び地誌学の諸分野について述べる。
これらの分野は時代・諸外国の事情や大学の方針などにより異なり、流動的であることも留意されたい。
自然地理学
自然地理学 に該当するもの。詳細は、各項目を参照されたい。ほとんどの場合、これらの学問成果をあげるには、現地調査(フィールドワーク)が要求される。いずれの場合も、学問上で厳格な線引きは存在せず、例えば気候地形学のような自然地理学の中でも分野のまたがった研究も往々にされている。
- 気候学
- 主に気候と人々との関係を考察する。都市気候、ヒートアイランド現象、エルニーニョ現象などもこの分野で扱う。
- 水文学
- 湖沼や河川、地下水を主な研究対象とする。現在では、陸水学という表現が主流になりつつある。
- 地形学
- あらゆる地形の成因、変遷などを考察。対象は火山、平野、地層など。
- 第四紀学
- 主に第四紀の間に起きた地層、地形の変遷、氷期/間氷期(氷河期)の問題などを取り扱う。現在見られる地形の直接的な要因を探究する。地形学と連携を密にする。
- 海洋地理学
- 海に関係する地理学。自然では海岸線、海流、海底地形など。また人文では、海洋資源や境界線なども扱い、しばしば政治問題にも触れる。
- 植生地理学
- 植生分布に関する地理学。フィールドワークによる場合と、花粉分析法を用い、泥層などから採取した花粉の年代測定をし、解明していく方法がある。
- 動物地理学
- 動物の生態・分布に関する地理学。生態学と密にしている場合が多い。植生地理学などと共にしばしば生物地理学と総称されることも。
- 土壌地理学
- 土壌に関する地理学。第四紀学などと連携を密にすることが多い。
人文地理学
人文地理学に該当するもの。詳細は、各項目を参照されたい。これらもほとんどの場合、学問成果をあげるには、現地調査(フィールドワーク)が要求される。いずれの場合も、学問上で完全に独立しているわけではなく、例えば都市地理学と経済地理学の複合分野を研究対象にするということも可能であるばかりか、むしろそのようなケースのほうが多いのである。
- 経済地理学
- 経済にかんする地理学。各種産業に注目した産業地理学(農業を扱う農業地理学、工業を扱う工業地理学、商業を扱う商業地理学などがある。)消費者行動に注目した消費地理学、産業等の立地展開に注目した経済立地論などが主要なテーマ。これらは、人文地理学の中でも議論されることが多い分野である。そのほかの分野として、近年、英国の地理学者を中心に小売業の立地的側面、金融的側面、消費者行動的側面など小売業を多面的に扱った新しい小売地理学が現れているが、日本ではこの分野の研究者は少なく、発展途上の段階にある。
- 社会地理学
- 社会階層や社会構造など社会学に関するテーマに対する地理学。具体的には、民族問題や過疎・過密、女性問題やコミュニティの問題などを扱う。
- 政治地理学
- 政治に関する地理学。過去には、軍事侵略や植民地に関するテーマを扱っていた。現在は、学区域の問題や国政や地方行政や国際関係と地理との関係を主流にする。最近では、地理学で政治を扱うと、学問の性質上、地方自治にスポットがあてられることが多いので、この分野を敢えて行政地理学という表現をすることもある。
- 都市地理学
- 都市特有の現象を扱う地理学。交通網・移動、犯罪・非行や、都心・郊外に関するテーマなどを扱う。経済地理学・社会地理学と連携を密にすることが多い。また、都市計画学、都市工学、都市社会学などの分野ともしばしば連携される。
- 歴史地理学
- 地理学では、通常時間軸は現在であるが、歴史地理学は過去である。歴史的な現象・事柄の文献学的な意義のみならず、地理学的な意義を求める分野である。歴史学の一分野としても扱われるが、通常は地理学の分野である。民俗学と連携をとることも。
- 文化地理学
- 文化や風俗を扱った地理学。宗教施設や、祭りなどを考察対象とする。民俗学・文化人類学・社会学などとの連携をとることもある。
- 人口地理学
- 人口問題・人口移動・人口政策などを扱った地理学。単独ではなく、社会地理学や経済地理学の一分野にされることもある。
- 病理地理学
- 伝染病・風土病などの疾病の地理的な分布・伝播を扱った地理学。医学の専門的な知識を求められるため、地理学の一部門でありながら、人文地理学で論じられることは稀である
地誌学
地誌学(地域地理学)は、ある特定された地域内における地理学的事象を自然・人文両方の見地から研究する学問である。自然・人文に関わらず、実際に研究する際は、具体的な地域を選定しなくてはならないため、ひとつの専門分野というよりは地理学の共通基礎部分になっている。
地域研究
日本の地理教育の問題点
書店や図書館へ行けば分かるように、地理教育の本や教科書は少なく、観光の本や特定地域の著者の個人的な思い入れの本が目立つ。これは、日本の初等・中等教育において、地理学が産業地理や地誌に大きな比重を置いていること、一般においても観光と地理との分別があまり行われていないことによる。このため、「地理学は他分野の2次資料の寄せ集めで、理論・体系や記載内容の客観的基準も存在していない」との誤解も多い。従って初等・中等教育における地理と大学の地理学の専門課程との格差を感じる者も少なくない。
現在の日本の高校においては、世界史の必修の影響もあり、地理学を履修する学生が減少し、それにより地理で受験できる大学も減少している。
しかし、これらの事は、地理学に対するニーズが低下しているということではない。地誌のような知識の部分と、大学で学ぶ専門的な理論の部分をしっかりと修得すれば、実社会においても十分に評価される学問分野といえる。大学サイドも、環境問題やコンピューターを使った講義を取り入れるなど、近年になって実社会との兼ね合いを重視するカリキュラムが組むようになってきており、かつての地理学のカリキュラムとは、様相を異にしてきた事も事実である。