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2012年5月12日 (土) 18:44時点における版

エルサルバドルにおいて使用されているマチェーテ

マチェーテ(machete)は中南米の現地人が使う山刀のスペイン語による呼称である。マチェットマシェットは、同様の刃物に対する英語による呼称である。

この種の刃物は広く世界的に分布し、その呼び名もまちまちであるが、本項においては広く世に知られている「マチェーテ」、「マシェット」として説明をする。

概要

主として農業や林業で用いられる刃物で、代表的なものとして、

  1. カリブ海や中南米、東南アジア等熱帯雨林でブッシュ(藪)を刈り払いながら進む為に長く薄く作られたタイプ
  2. サトウキビ畑やバナナ園、ヤシ園等に於いて、農作物の収穫に用いる道具として刀身が短く作られたタイプ
  3. 密林地帯等を戦場として派遣される兵士に支給される官給品

等があり、それぞれの用途に応じて刃長・ハンドル素材・形状などには多くのバリエーションがある。

構造

マチェーテの刀身は柄部分(刃元)よりも先頭部分(刃先)の幅が広く、重心が刃先に移るように作られていて、柳葉刀中国刀)やグルカの民が用いるククリなどと同様に、その重量を利用して対象物を叩き切る用途に適している。

ブッシュを切り払う為に作られる物は薄く長く製造されており、突き刺す性能は余り必要ではないので切っ先は丸くなっている。長さ・先端形状から細かい作業がしづらく、料理などには適さないと考えられる。一方、短く作られたものは副次的に包丁としても使えるだけの特性を備えている物もある。

草などを数多くなぎ払う作業に主眼を置いて特化した刃物であり、刀身は厚みが3mm前後と薄い物が多く、使用者が肉体的に疲労しにくいよう軽量に作られているため、折損・破壊の観点から相応の強度と重量を要する薪割りや伐採など重作業への使用には耐えない。

マチェーテの刀身は通常の刃物より粘り強くなるように焼き戻し熱処理が強めに施されており、小型のナイフ等に比べて刀身が柔らかく、折れにくいように作られている。そのため振り回した際、木に食い込んだり、石などを誤って打撃した場合などにも欠けたり折れたりする事は少ないと考えられる。

また、高価な鑑賞用のマチェーテも少数ながら存在するが、大半は過酷な作業に使うための実用品であり消耗品であるため、対象物を切断する性能(いわゆる切れ味)に対するユーザーの要求(非ステンレス鋼は防錆性以外の諸特性が良い)[要出典]と販売価格とのバランスであるコストパフォーマンスの問題から、用いられる鋼材は炭素鋼が大半を占め、高価なステンレス鋼の製品を実際の作業に使用する事は少ないと考えるのが妥当であろう。

軍用の官給品として納入実績のあるONTARIO社製のマチェーテも炭素鋼で作られた製品であるが、防錆性と戦闘時の被視認性の観点からエッジ(刃体)以外は艶消しで黒くコーティングされており、必要に応じてOD(オリーブドラブ)色や各種迷彩色に塗り替えられて使用される事もある。

ロシアの特殊部隊スペツナズにおいても独特の形状のものが「ロシアンマチェテ」として兵士に支給されている。

日本におけるマチェーテ

日本でも林業従事者やマタギに限らず、山に入る場合にマチェーテを使う場合はあるが、日本の鉈や狩猟刀のほうが小型で刀身が厚く、かつての日本刀鍛錬技術にも通じる技術を駆使して素材の吟味と鍛錬が施されているため概して切れ味が良い反面、鍛造職人刀鍛冶の手による物が大半で高価であり、また日頃の管理を怠ると錆の発生を招きやすいなど、消耗品として扱うには不向きな為、植生・用途によって使い分けるのが一般的かつ合理的である。

また、それぞれの使用法については、杉の枝打ちを例にとると、その長さと足場の悪い高所での作業であるが故にマチェーテは適さないが、国内のサトウキビ畑でマチェーテを使用している様子がテレビで放映されたこともある等、全く出番のない「異国の刃物」でもない。しかしながら銃刀法に拠って刃物類の規制が徹底している日本に於いて、その特異な外観から実際に購入して使用するには法的(銃刀法)問題点や周囲の目など、多くの制約が存在する。

日本国内で市販されているマチェーテは、その特徴とも言える長大な刃渡りから銃刀法に抵触しないように刃付けが施されていないか、本格的な研ぎ作業の工程を経ずに流通している為、購入者がその用途や必要に応じて研ぐ必要も出てくる。例えばサトウキビの収穫や川辺の刈り、藪漕ぎや開墾・山林整備の際の下草刈り、その他の野外活動に於いて相応の切れ味を必要とする場合等である。海外の事情を紹介するテレビなどの番組で、ヤシの実を切り落としたり割ったりしている刀にはこのマチェーテを研いで刃をつけた物も多い。

また、メーカー出荷直後の状態では、出荷先法規の勘案に基づいて企画・製造・出荷されているため、購入者が期待するほどの切れ味を得られない場合もある。

日本で流通している主なマチェーテ

写真の2本の長さのものが一般的で、各社とも長めのものと短めのものがある。

  • PRECISION_Machete はサヤが布製の短刀タイプ。 形状はスタンダードなものである。ONTARIOよりも刀身が厚いので撓まない。グリップは木製なので、自分の手に馴染むように加工しやすい。
  • ONTARIO_US_Machete は米軍も使用しているジャングルマチェテで、写真は全長59cmのもの。グリップは樹脂製で滑り易く、実用を重視するユーザーはグリップにラケットの滑り止めテープを巻く等のテーピングを施す事が多い。また、樹脂製の鞘の場合はパラシュート・コードなどを巻いておき、毒蛇等に噛まれた場合の止血帯代わりや、軍用ポンチョを用いての簡易テント設営などに利用する。刃の峰(背)に鋸歯状の加工が施されている物と、そうでない物があるが、すぐに目詰まりするなど鋸歯の能力は本来のノコギリと比較した場合、概して低いものが多い。

関連項目

参考文献

  • 『SAS サバイバル・ハンドブック』 ジョン・ワイズマン 並木書房 ISBN 4890630260
  • 『フィールドナイフの使い方』 平山隆一 並木書房 ISBN 4890630694
  • 『アウトドア・ナイフの使い方」 柘植久慶 並木書房 ISBN 4890630104